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「500種類」― 流通している仮想通貨の種類

2016年のキーワードの1つになるとみられているのが「FinTech(フィンテック)」だ。金融とITの組み合わせによって、新たなサービスが生みだされる一方、FinTechの一翼を担う仮想通貨が及ぼす影響が、あらためて議論される可能性もありそうだ。

ジャーナリスト

大河原 克行

1965年、東京都出身。週刊BCN編集長を務め、2001年10月から独立し、フリーランスジャーナリストに。IT産業、白物・デジタル家電などを幅広く取材。近著に「究め極めた『省・小・精』が未来を拓く 技術で驚きと感動をつくるエプソンブランド40年のあゆみ」(ダイヤモンド社)がある。

金融サービスにITを活用する「FinTech」が注目を集めている。

FinTechは、Finance(金融)と、Technology(技術)を組み合わせた造語で、それが指す範囲は広い。モバイル端末に搭載できるリーダーを利用したカード決済処理や、企業での交通費精算や会計業務にクラウドを活用し、自動で決算書などを作成するサービスのほか、個人資産を管理するためのクラウド家計簿や、おサイフケータイなどの電子マネーサービスも、FinTechの中に含まれる。

金融とITの共通項は、すべての業種、産業において不可欠な要素であるという点。それを組み合わせたFinTechだけに、当然、その対象はすべての業種、産業となる。今後、FinTechを取り巻く市場が大きく拡大するとの見方は、IT業界では共通認識だ。

そのFinTechにおいて、注目を集めているものの1つに仮想通貨がある。

代表的な仮想通貨がビットコイン。仮想通貨市場の約9割を占めているといわれるが、これ以外に、500種類以上もの仮想通貨が存在するといわれている。

日本では、ビットコインの取引所であるMt.Gox(マウントゴックス)の破綻や、経営トップの逮捕など、ネガティブな事件が先行した。仮想通貨に悪い印象を持つ人が多いが、世界的な潮流をみると、その基礎を成す「ブロックチェーン・テクノロジー※2」が新しい分散型コンピューティングの形として注目を集めており、着実に広がりをみせている。米旅行予約サイト大手や米PCメーカーの直販サイトでの決済のほか、カフェでのコーヒー代の支払いなどにもビットコインが利用できるようになっている。

特に、個人の銀行口座を持たない人が多い新興国では、今後のインターネットとスマートフォンの普及にあわせて、仮想通貨の活用が広がるとみられている。

また、為替の影響を受けず、金融取引に関わる手数料がほとんどかからない仮想通貨を、国際間取引に利用するといった動きが増加するとの見方は国際社会では常識になっている。リスク懸念が先行している日本において、仮想通貨への対応が遅れることで、国際的取引からはみ出してしまう可能性を指摘する声もあがっている。

さらに、スマホを1台持っていれば、日本円に換金することなく、決済が可能になるという利便性が実現される仮想通貨は、2020年に訪日外国人観光客数を3,000万人へと上方修正した政府目標の実現においても避けては通れないものになりそうだ。

電子マネーが広く普及している日本国内では、仮想通貨を利用する価値はあまり感じられず、これを使わないことへの危機感がないのも正直なところだ。国際社会で仮想通貨が広がり始める中、日本が遅れを取らないよう、リスク面ばかりを捉えるだけでなく、前向きな活用に知恵を絞る必要がある。

  1. 出典 European Central Bank“Virtual Currency Schemes - A Further Analysis”2015年2月。
    2015年末では600種類を超えるとも言われている。
  2. 中央の管理サーバではなく、ネットワークの参加者全員が情報の正しさを担保するビットコインの取引記録の仕組み。事実上、改竄が不可能と言われている。
出典:Best Engine Vol.0

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