センサーやAIなどの技術を活用し介護サービス業務の自動化を目指す
～介護業界が抱える課題への打ち手となるICT・デジタル化構想を推進～

高齢化の進展に伴い、社会では要介護者数の増加、認知症高齢者の増加、それに伴う介護人材の不足、介護保険報酬の減少、介護保険給付額の増大など、介護に関する多くの課題が顕在化してきています。

そうした中で損害保険事業を中核とするSOMPOホールディングスグループに何ができるのか。現在、SOMPOケアメッセージおよびSOMPOケアネクストという2つのグループ会社を設立し、介護事業に参入。在宅から施設介護までフルラインアップの介護サービスを提供できる体制を整えています。

その一環としてSOMPOケアグループは、SOMPOデジタルラボと共同したICT・デジタルの先進的活用（IT化構想）を推進しています。介護サービスは2000年代の利用者本位のケアから2010年代の地域包括ケアへと進化しており、次のステージとして見据えているのがケアサイエンスです。確かなエビデンスとICTの高度活用によって個別ケアサービスを実現するもので、ビッグデータによる科学的検証、労働集約から脱却したシステム化、属人的業務から標準的業務への転換、介護の見える化を実現することを目指しています。具体的には「介護記録やセンサーなどによるデータ取得」→「サービスの見える化・見せる化」→「ビッグデータの蓄積・整理」→「因果関係の解析／仮説モデルの開発」→「現場での実証とモデルの修正」→「品質・労働負荷軽減・生産性をKPIとした従業員満足度および利用者満足度の向上」といったサイクルを繰り返し、地域に根差した介護のフルラインサービスの全体最適化を図っていくというのがケアサイエンスの基本戦略となります。

ICT・デジタル化の課題としては、介護サービスの利用者や介護施設入居者の安全性の確保、ケアプラン品質の向上、介護職員の負荷軽減などがありますが、特に私たちが注力しているのが生産性向上です。「三大介護」と呼ばれる排泄介助、入浴介助、食事介助の生産性を向上させることです。加えて介護実施記録や事故記録などの間接業務の生産性を向上させることも、そこでの中心テーマとなります。

SFA（利用者データベース、取引先データベース）、アセスメント＋個別ケアプラン作成、スケジューリング、ケア記録システムといったモジュールからなる営業活動～サービス実行・報告までの一貫システムを構築するとともに、各種センサー（排尿、浴室、居室、入退室）や音声入力、API、ルールエンジン、AIなどの技術を活用して、業務の標準化や自動化を実現します。例えばスケジューリングにおける介護スタッフの効率的かつ技量に応じた配置、対応可能な事業所抽出、訪問ルート（地理的な配慮、技量に応じた配置）の作成、あるいはケア記録における介護プランと実際の結果の乖離チェックなどに関して、実証実験を通じてすでに8万人を超える利用者の日々のケアデータを蓄積しています。これらのビッグデータをもとにした機械学習やシミュレーションにも取り組みたいと考えています。こうして実現する業務の標準化や自動化によって介護スタッフはケアに携わる時間を増やし、人にしかできないサービスに傾注することが可能となります。

一方、さまざまな機器を使用する介護事業者には各システムの特性を良く理解したうえで、利用者個々の状態を考慮し、最適な環境で使用できる気遣いとノウハウが求められます。実証実験を行った施設ではシステムの導入から定着まで完了し、成果も出すことができましたが、あらゆる施設で同様の活動を展開して成果を出すためには、介護現場で持つべきマインドを啓蒙できる体制（人材）の整備が今後必要となります。