
セミナー風景

パネルディスカッション
2006年12月7日、ベルサール九段にて、CTCユーザー会主催「CUA TECHNOLOGY DAY 2006」が開催されました。今年で4回目となります本イベントでは、CTCのOSSへの取り組みをご紹介するとともに、今一躍脚光を浴びているWeb開発フレームワーク「Ruby on Rails」と「Ruby」をメインに、「Ruby」開発者のまつもとゆきひろ氏をお迎えしてシステム開発に巻き起こる新旋風についてご紹介いたしました。
また、「J2EE使いが語るRuby on Rails」をテーマに稚内北星学園大学 細川 氏、TIS株式会社 倉貫氏、メタデータ株式会社 大場氏、CTC 井澤の4名によりパネルディスカッションが行われ、Ruby on Railsのインパクトについて積極的な意見交換が行われました。中でも、実案件での適用にふさわしい局面、適用事例、J2EEとの使い分け、開発プロセス中での位置づけなどについてディスカッションされ、多くの参加者に高い関心を頂戴しました。
セミナー終了後は、懇親会も開催され技術者同士の懇親の場として、お役立ていただきました。
Beyond Java‐Ruby on Railsが与えたWeb開発の衝撃

CTC 執行役員 ITエンジニアリング室
室長 鈴木 誠治
技術力があれば、低コストで迅速な開発を可能にする
チープ革命
CTCのWeb開発への取り組みは、1996年にJavaグループの設立に始まり、1999年Java開発部の設立、2000年Webテクノロジーセンターの設立など積極的に行ってきました。その中で、近年ハードウェアの性能は向上し、値ごろ感が浸透、一方、必要なOSやミドルウェアはオープンソースで揃い、技術力さえあればビジネスを推進するソフトウェアの開発は低コストで行えるような環境が整ってきました。こうして昨今の開発現場では、「チープ革命」とも呼べる動向が顕著になっています。
また、開発環境の整備に伴い、今後は、XP(eXtreme Programming)に代表されるスパイラルな開発手法を用いた、アジャイル開発に大きな注目が集まっています。すべてにおいて完全に決定した上での開発をスタートするのではなく、細かい区切りで設計、実装を繰り返し、頻繁にリリースすることで手戻りのインパクトを最小限に抑えることが可能となります。2001年には、アジャイルアライアンスで「アジャイル宣言」が発表され、包括的なドキュメントよりも、動作するソフトウェアを重視し、計画に従うよりも、変化に柔軟に対応することが重要だと考えられます。
利用者参加型のサービスモデル
こうした開発手法の特徴としては、利用者参加型により、完全に完成していないサービスをベータとして公開し、フィードバックを得ながら改良を加えることで、利用者にも高い利便性を提供しようというモデルです。このような手法の代表例としては、Googleの諸サービスやHatena、FEEDBRINGERなど多数あります。いずれのサービスも利用者の囲い込みだけなく、早期サービスインによる先行者利益を享受することが大きな目的でもあります。
また、Web2.0時代の到来により、様々なWebサービスの提供が積極的に行われ、コンテンツをWebページだけでなくプログラミングで利用できるAPIとして提供する商用サイトも多数利用されています。
時代が求めた言語「Ruby」
Web2.0システムに求められること
このようにWeb2.0システムは、"より安く"、"より早く"、"より柔軟"でそしてより役立つものが求められています。これらを実現する手段として、注目を集めているものにRubyやPyhtonに代表される「軽量言語」があります。
軽量言語は、コンパイル不要なインタプリタ言語で、Web2.0に非常にマッチする特徴を持っています。
特に、Ruby On Railsの登場により、小規模なものを早く安く開発することが可能なRubyに高い関心が寄せられています。Rubyの場合、普通にプログラムを記述するだけで保守しやすいなど開発効率においては、従来の言語と比較にならないほどの生産性を誇ります。Javaではマッチしない、スクラップ&ビルドな開発にもRuby On Railsは適しています。
今後は、エンタープライズ領域でも着実に利用が進むことが考えられます。
Ruby On Railsトレーニング開催
昨今の開発に対するニーズは、再利用性、生産性、そして保守性へと大きく移りつつあり、まさにRubyに代表される軽量言語は技術者にとって、決して高い敷居ではありません。CTCでは、RubyCity MATSUEに賛同しRubyの普及に協力すると共に、Ruby On Railsのトレーニングコースを開設するなど技術者育成にも積極的に取り組んでいきます。
「Ruby」の作者「まつもとゆきひろ」氏を講師陣に迎え、「Ruby on Rails」の基本スキルを短期間で学ぶチャンスです。
「オープンソース会の有為な人材をいかに獲得するか」

株式会社ネットワーク応用通信研究所
代表取締役 井上浩 氏
特別講演1では、オープンソース界の有為な人材をいかにして獲得するか ~NaClの事例から~」と題し、株式会社ネットワーク応用通信研究所 代表取締役 井上 浩氏にお話いただきました。
NaCl(ネットワーク応用通信研究所)は、Ruby開発者のまつもとゆきひろ氏をはじめ、多くのオープンソース人材を雇用していることで知られています。経営者の立場から、オープンソース・ビジネスを推進するための取り組みについてご紹介いただきました。特に、本社所在地でもある島根県など自治体との連携を積極的に行い、技術者の育成や情報交換の場を提供するなどオープンソースの特性を生かしながら広く優秀な人材を支援する環境の提供を目指しています。
また、デモンストレーションでは、井上氏が実際にRadRailsを使って行われました。名刺管理アプリケーションをわずか2分程度で作成し、Rubyの優れた開発効率を実際にご覧いただきました。
「Ruby 1.9への長い道のり」

株式会社ネットワーク応用通信研究所
特別研究員 まつもと ゆきひろ 氏
続く特別講演2では「Ruby1.9への長い道のり」と題し、Rubyの開発者であるまつもとゆきひろ氏にお話をいただきました。社会変化がもたらした言語への新たなニーズとそれに適合したRubyの開発に至る経緯などをご紹介いただきました。
時代の流れに適合
この10年でコンピュータは、『より早く』、『より大容量に』、『より普遍的』になり、利用者の数も桁違いに多くなりました。ソフトウェアへの要求も時代と共に変化しています。ソフトウェアがビジネスをドライブしてきましたが、ビジネス環境の変化はソフトウェアにも変更を余儀なくしています。そのため、変化に対応できず変更できないソフトウェアは、むしろ道具ではなく足かせになってしまっています。ソフトウェアの重要性が増す一方、ソフトウェアへの予算は増加しない企業がほとんどのため、必然的に安くて迅速な開発が求められているのです。つまりソフトウェアは、"うまい、安い、早い"の牛丼のようにコモディティ化したといっても過言ではありません。
念願の自前プログラミング言語の構想
高校時代にSmalltalkに関する小さな記事を読んだのがオブジェクト指向との出会いとなり、この頃から自分のプログラミング言語を作ってみたいという夢を持つようになりました。
もともと、言語に高い関心を持っており、コンピュータに限らず多くの言語の研究を通じいずれは、"できるだけ少ない規則で大きな範囲をカバーする"洗練された文法をもつことと、そしてそれは"思考の流れをさまたげない"できるだけ人間に近寄った言語を作りたいとの具体的な構想につながり、これがやがてRubyとして世の中に登場します。
オブジェクト指向スクリプト言語Rubyの誕生
最初は自分だけで使うつもりでしたが、使えるとの感触を得てフリーソフトウエアとして公開することにしました。準備を進め1995年12月にRuby0.95を日本国内のニュースグループにポストしました。これがいわゆるRubyの初めてのパブリック・バージョンとなります。
Rubyの第一の特徴は、完全にオブジェクト指向ベースで設計されているため理解しやすい点にあります。Ruby上すべての変数はオブジェクトとして扱われ、すべての手続きはメソッドとして表現されます。つまり、『お約束が少ない』、『宣言不要』、『豊富なライブラリ』の特徴を持ち、過去の資産を活用することで非常に高い生産性、スケーラビリティ、柔軟性を実現する言語と言えます。
しかし、Rubyが最も重要視しているのは、プログラミングを簡単で楽しくすることだと思っています。
次期バージョンのリリース
社会環境の変化は、Rubyを含む動的言語の適用範囲を広げています。今後は、エンタープライズ系のシステムでの実装も増加していくことが考えられます。Rubyの基本原則は、信頼関係にあります。少数精鋭のグループのチームプレーを最大限に生かすことができる言語だと思います。そのため、信頼できないグループや顔の見えない関係、コミュニケーションが不足するチームでの利用にはあまり向いていません。
プログラマーの皆さんが気持ちよく開発でき、ハッピーになれるよう、より自然で高速、高機能な言語を目指します。次期バージョン1.9.1もしくは2.0のリリースは2007年のクリスマス前後を予定していますので、ぜひご期待ください。