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EBPMの実践に取り組む板橋区
画像認識AIソリューション「IVAR」を活用し
詳細な人流データを取得・分析

  • 画像認識AIソリューション「IVAR」

板橋区は、2022年10月に開催された「板橋区民まつり」内のイベント会場「絵本のまちひろば」において、伊藤忠テクノソリューションズ(略称:CTC)の協力のもとAIカメラを用いた人流データの取得・分析の実証実験を実施した。近年、政府は「EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング:証拠に基づく政策立案)」の取り組みを推進しており、府省のみならず地方自治体においても重要な取り組みとなっている。板橋区も職員向けにデータ利活用に関する研修を実施するなど、データを活用した政策立案の能力向上に努めてきたが、実証を伴う具体的な取り組みは思うように進んでいなかった。また、これまでは実施した事業について、定量的な振り返りを十分に行うことができず、実施した取り組みを次の企画に十分反映できないという課題があった。

板橋区は、今回の実証実験から得られた人流データの取得・分析に関する知見やノウハウを活用し、より効果的・効率的な政策運営を目指してEBPMの実践に取り組む意向だ。

課題と効果

課題
  • 実施した事業について、定量的な振り返りを十分に行うことができず、実施した取り組みを次の企画に十分反映できていなかった
効果
  • 実態に基づく詳細な人流データを容易に取得・分析できるようになった
  • 実測データを基に分析を行うことで、実施した事業について定量的な効果測定と改善案の検討が可能になり、取り組みを次の企画に反映できるようになった

導入事例インタビューデータ

自治体名
東京都板橋区
所在地(区役所)
東京都板橋区板橋二丁目66番1号
URL
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/新しいウィンドウで開く
  • 板橋区 政策経営部 IT推進課 DX戦略係 猪股 謙斗氏

    板橋区

    政策経営部 IT推進課
    DX戦略係

    猪股 謙斗氏

  • 板橋区 都市整備部 都市計画課 調整・都市基盤DX係 藤江 孝行氏

    板橋区

    都市整備部 都市計画課
    調整・都市基盤DX係

    藤江 孝行氏

  • 板橋区 産業経済部 くらしと観光課 事業推進係 小宮山 洋平氏

    板橋区

    産業経済部 くらしと観光課
    事業推進係

    小宮山 洋平氏

  • 板橋区 政策経営部 広聴広報課 プロモーション係 石原 梨菜氏

    板橋区

    政策経営部 広聴広報課
    プロモーション係

    石原 梨菜氏

DX推進に向けた取り組みの一環として画像認識AIソリューションを利用した人流データ取得・分析を実施

板橋区では、Society5.0の実現を目指すべく、スマートシティやデジタルツインをはじめとする都市基盤のDXを推進しており、さらなる都市基盤のDXを推進するために「サウンディング型市場調査」を実施し広く提案を募った。10社近くから提案があった中で、CTCが提案したのが、画像認識AIソリューションを活用した人流データの取得・分析である。この提案に対し、都市計画課の藤江氏は、「センサーやAIカメラなどのIoT機器を用いた人流データの採取・可視化は、今後まちづくりを考える上で必要となる要素だと思っています」と話す。また、くらしと観光課の小宮山氏は、「区内では多くの無料イベントなどが開催されていますが、データによる効果測定は十分にできていませんでした。今後、人流データを容易に計測できるようになれば、各種イベントの効果測定の有力なツールになると考えました」と振り返る。

今回、CTCが提案した画像認識AIソリューションは、Gorilla Technology社の「IVAR(アイバ―:Intelligent Video Analytics Recorder)」である。映像・画像をAIで解析し、人物検出、属性検出、顔認識、行動解析、車両検出などを高精度かつリアルタイムに分析できるのが特徴だ。例えば年齢は、0~10代前半、10代後半~20代前半、20代後半~30代前半、30代後半~50代前半、50代後半以降の5段階で識別し、対象を細かく分析できる。

IT推進課の猪股氏は、「IVARは性別や年代などの細かな識別ができ、単なる人数だけでなく来訪者の属性まで取得できる点を評価しました」と語っており、藤江氏は、「エッジ側で画像処理を行い、映像・画像を残さずに解析結果だけを出力することで、個人情報を取得しない点は利用しやすい」と評価する。

画像認識AIソリューションを用いて子育て世帯の参加状況を調査

実証実験は、都市計画課とIT推進課が企画し、「板橋区民まつり」を主催するくらしと観光課と、「絵本のまち板橋」を推進する広聴広報課を加えた4課が連携して検討を進めた結果、「板橋区民まつり」内のイベント会場「絵本のまちひろば」での実施を決定した。くらしと観光課の小宮山氏は、「実施場所の選定にあたっては、期間限定イベントである点と、ある程度データの数が集まることが予想され、実証実験の対象として手頃と考えられる点を考慮しました」と説明する。

「絵本のまちひろば」でのデータ採取は、絵本のまちの取り組みに関するニーズ、企画展の満足度、子育て世帯の参加状況を調査する目的で実施された。また、AIカメラによる人流データに加えて、来訪者へのアンケートや、通信事業者が提供するGPS統計データを用いて分析する方針とした。

「板橋区民まつり」は、2022年10月15日(土)、16日(日)の2日間に渡り開催された。開催期間中は、CTC立ち合いのもとで定期的にIVARの動作確認を実施した。CTCのサポートについて猪股氏は、「今回の会場には子供達が多く集まるため、CTCには事前に安全面を考慮した対応を依頼していました。CTCは安全面に十分配慮するとともに、会場の雰囲気を壊すことなくデータが確実に取得できるよう機器を設置してくれました。また、開催期間中も万が一の事態に備えた万全の体制を組んでくれました」と評価している。

これまでわからなかったイベント来訪者の傾向把握が可能に

実証実験で取得した人流データはCTCが分析し、後日その結果をレポートにまとめて板橋区に報告した。性別、年代ごとの時系列推移に加え、マスクや眼鏡の着用率についても併せて分析・評価を行った。カメラを設置したイベント会場の出入口付近に留まっていた人がカウントされるケースはあったものの、概ね正確な来訪者の傾向をつかむことができた。

広聴広報課の石原氏は、「これまで絵本のまち関連のイベントを数多く開催してきましたが、実際に狙い通りの人たちが来場してくれたかなど、実態を把握するためには現地に足を運ぶしかありませんでした。今回のイベントにおいて、ターゲットとした親子連れが比較的多く来てくれたことが計測したデータから確認できたことで、企画の方向性が間違っていなかったことを知ることができました」と語る。また、小宮山氏は、「区民まつりのような複数の会場で行うイベントは、その場にいた人しか雰囲気を知ることができないため、少なからず個人の主観が結果に反映されてしまいます。実態に基づき計測されたデータを用いることで客観的に結果を確認し、共有できるようになります」と語った。

次回以降はカメラの台数を増やし、展示エリア内での回遊状況などを把握するなどの改善も検討している。

得られた知見やノウハウをこれからのまちづくりやイベントの企画に活用

今回の実証実験で、板橋区はAIカメラを使ったデータ取得から分析までの運営の流れを理解し、ノウハウを蓄積できた。今後、他のセンサーから取得したデータやアンケート結果などとも組み合わせて、様々なデータ分析に取り組む予定だ。

今回のCTCの実証実験に対する提案から実装、分析などの一連の支援について猪股氏は、「製品の機能紹介だけでなく、具体的な活用シーンや実施の際に考慮すべき点など、実現に向けて適切なアドバイスや情報提供をしていただきました」と話す。さらに藤江氏は、「AIカメラを含めたデジタル技術は日進月歩で進化しています。できることがさらに増えてくると考えられるため、今後の展開を期待しています」と希望を語った。

集合写真

板橋区は「絵本のまち板橋」ブランドで絵本文化を展開・発信

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