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経営のリアルタイム化に向け、SAP S/4HANAに移行 インフラ基盤にCUVICmc2を採用

  • CUVICmc2

「商いの次世代化」と、「働き方改革」の推進による持続的成長を目指す伊藤忠商事株式会社は、2001年度から稼動していたSAP ERPを、日本の総合商社で初めてSAP S/4HANAに移行した。インフラ基盤は、基幹系システム特化型のクラウドサービス「CUVICmc2」を採用。高性能なストレージは、システムのパフォーマンスにも寄与し、夜間バッチ処理の短縮などが実現した。合わせてCUVICmc2のサービスをフルに活用し、周辺システムを含めた統合的なDR環境を実現した。

導入事例インタビューデータ

会社名
伊藤忠商事株式会社
所在地
東京都港区北青山2-5-1
設立
1949年12月1日
URL
https://www.itochu.co.jp/新しいウィンドウで開く
  • 伊藤忠商事株式会社 IT企画部 全社システム室長 浦上 善一郎氏

    伊藤忠商事株式会社

    IT企画部
    全社システム室長

    浦上 善一郎氏

  • 伊藤忠商事株式会社 IT企画部 全社システム室 前原 基芳氏

    伊藤忠商事株式会社

    IT企画部
    全社システム室

    前原 基芳氏

次世代ビジネスに向けてシステムのコンセプトを見直し

の創業以来、160年以上にわたり成長を続けてきた伊藤忠商事。現在は「繊維」「機械」「金属」「エネルギー・化学品」「食料」「住生活」「情報・金融」の7つのカンパニーで63カ国に約120の拠点を持つ総合商社としてビジネスを展開している。を開始年度とする中期経営計画では、「いざ次世代商人へ」をステートメントに掲げ、従来のビジネスの拡大・進化と同時に、次世代ビジネスを積極的に開拓することをテーマとしている。

同社のシステム活用は、に国内の経理・財務用途で基幹系システムをメインフレームで開発したことから始まった。にSAP R/3に移行し、にはSAP ERP(ECC6.0)にバージョンアップ。しかし、システムのコンセプトを大きく変えてこなかったことが、次世代経営のリスクになりかねない状況を生んでいた。例えばデータは夜間バッチで処理していたため、リアルタイムでの損益の把握が難しい。基幹系システムと各カンパニーの営業システムをつなぐインターフェースはCOBOLベースで開発してきたもので、維持保守や機能追加によってコストが増加する恐れがあった。運用面でもシステム保守作業の属人化という課題に直面していた。

連結経営のさらなる進化に向けSAP S/4HANAへの移行を決断

のSAP ERPの保守サポート終了も見越して、伊藤忠商事はSAP S/4HANAへの移行を決断。この機を捉えて、同社の商売の基本である「か(稼ぐ)・け(削る)・ふ(防ぐ)」の徹底、働き方改革の推進、連結経営のさらなる深化を見据えた機能の拡充に乗り出した。具体的には、損益のリアルタイム把握、多様なワークスタイルを意識した現場視点のシステム最適化、中長期的視野でのIT人材育成、システムの拡張性・柔軟性を備えた長期安定利用の4点だ。

当時、SAP S/4HANAの導入は国内の総合商社として初めてだったが、新たな技術にチャレンジする社風と、事前の実行可能性調査で十分な手応えが得られたことが決断を後押しした。SAP R/3の導入以来保守・運用を行ってきたCTCがプライムベンダとしてプロジェクトをリード。プロジェクトはにスタートし、要件定義、設計、構築、テスト、受け入れテスト(UAT)などを実施。の連休中に9日間のダウンタイムで切り替えた。

短期導入とシステムパフォーマンスの強化にCUVICmc2が貢献

SAP S/4HANAへの移行にあたり、当初は自社のオンプレミスの利用も考えていたが、インフラ基盤にはCTCが提供する基幹系システムに最適されたクラウドサービス「CUVICmc2」を採用した。
CUVICmc2はSAP S/4HANAの導入プロジェクトにおいて、(1)SAP S/4HANAの性能強化、(2)インフラリソースの柔軟な払い出し、(3)DR環境の実装の3点でメリットをもたらしている。

(1)SAP S/4HANAの性能強化

性能強化には、CUVICmc2のストレージIOの性能が貢献している。インメモリーデータベースを採用しているSAP S/4HANAに、ストレージ性能は無関係と誤解されがちだが、更新系の処理の実行後はストレージにデータが書き込まれるため、アプリケーションの処理はストレージ性能に左右される。実際に同社が性能テストを実施したところ、オンプレミス環境と比べて1ケタ以上、他社の基幹系特化型クラウドサービスと比較しても2倍以上の処理スピードを得ることができた。本番の稼動環境では、アプリケーションとストレージの高速化などにより、夜間のバッチ処理時間が従来の3分の2に短縮している。

ストレージ性能の向上は、ディスク上のデータを複製するバックアップ処理にも効果があり、特殊な構成を取らなくても標準コマンドだけで高速バックアップが実現する。リソースを複数で共有するクラウドは、ネットワークやストレージIOがボトルネックとなるが、CUVICmc2ならストレージのボトルネックを考えることなく設計ができるのもメリットだ。

(2)インフラリソースの柔軟な払い出し

構築時は、クラウドならではの柔軟なリソースの払い出しをフルに活用した。テストフェーズでは、さまざまな環境を用意してテストするが、CUVICmc2ならプロジェクトの状況に合わせてリソースの追加や削除が可能だ。

本プロジェクトは大きく2つのフェーズに分けて推進している。特にフェーズ1では業務フローを大きく変えず、現環境を新環境のSAP S/4HANAに移行するテクニカルマイグレーションを選択した伊藤忠商事において効果的だったのが、現環境と新環境の比較テストだ。同社はCUVICmc2上に新環境と現環境の2つを構築し、約2年分の過去データを用いた現新比較テストを効率的に進めた。

SAP ERPをS-JISコードで利用していた同社は、移行に合わせてUnicode化を実施しているが、その際もCUVICmc2上に中間機を立ち上げ、リソースのスペックを選びながらチューニングを実施することで移行時間短縮を図っている。

インフラリソースを柔軟に払い出した結果、2019年3月末までに作成した仮想マシンの数は162VM(うちHANA 27VM)に達した。現在は、125VM(うちHANA 20VM)を利用中で、必要に応じてリソースを追加しながら安定稼動を続けている。

(3)クラウド機能を活用したDR

伊藤忠商事の場合、SAP S/4HANAの開発、検証、本番環境以外にも、全社統合データベース分析システムのHANABIや、7つのカンパニーの営業システムと全社基幹システムを結ぶデータ連携基盤などが存在し、これらのDR環境を構築する必要があった。SAP S/4HANAのDR機能では、SAP HANAのDR環境の構築に限られてしまうため、SAP HANAを利用する全システムのDR環境を実装するために、ストレージレプリケーション機能を活用したCUVICmc2のDRメニューを採用。その結果、伊藤忠商事のBCPの要件を満たす、統合的なDR環境を実現した。

CUVICmc2は新しいサービスで、機能が適宜追加されていく。伊藤忠商事のプロジェクトでは、CTCのSAP S/4HANAの導入部隊と、CUVICmc2のサービス提供部隊が密に情報連携を行い、ユーザーのリクエストにも柔軟に対応できる。このメリットがフルに発揮され、同社の要望に応じたインフラ環境を短時間で構築することができた。

CUVICmc2、SAP S/4HANAの導入後体系図

「次世代全社統合データ基盤」により営業現場に付加価値の高いレポートを提供

SAP S/4HANAのインメモリー技術によりパフォーマンスは大幅に向上。オンラインで帳票を表示するスピードも高速化し、現場の業務の効率化が進んでいる。年に2回、123時間をかけて出力していた全社の諸勘定元帳などの通年データ出力処理は、パフォーマンスのチューニングによって27分まで短縮された。

今回のプロジェクトでは、SAP S/4HANAへの移行と並行して、会計や営業取引に関わる「次世代全社統合データ基盤(データレイク)」をSAP HANA上に構築している。さらに、BIツール「SAP BusinessObjects」を導入し、全社統合データベース分析システム「HANABI」を整備。ユーザーからデータ活用・分析に関する相談を受け付ける専門組織「BICC(Business Intelligence Competency Center)」も新規で立ち上げ、ユーザーが欲しい時に、欲しいデータを欲しい形で活用できる体制を確立した。

従来はユーザーが会計、営業、売上仕入など、多くのサブシステムにそれぞれログインしてデータを取り出し、Excelで集計/加工してレポートを作成していたが、現在はデータレイク上から集計に必要なデータをHANABIに取り込み、ボタン1つで欲しいレポートが入手できる。その効果は大きく、金属カンパニーでは損益月次分析レポートの作成時間が従来の5~6時間から5分に短縮、機械カンパニーでも損益月次分析レポートの作成が従来の4時間から20分に短縮している。手作業が排除できたことで集計ミスや加工ミスもなくなり、ユーザーの負担も軽減された。現在HANABIユーザーは約2,000人に達しており、今後も状況に応じて利用者を拡大していく予定だ。

次世代商人を支える次世代基幹システムプロジェクトは今後も継続

今後はプロジェクトのフェーズ2として、データレイクとHANABIの活用レベルを高め、現場のデータ分析業務の効率化を徹底していく。さらに社内全体や経営層にも展開し、経営の高度化を推進していく。最終的にはデータ分析が経営の意思決定に必要不可欠な存在となり、データ基盤と活用支援が提供できている状態を目指すという。

財務・経理領域では、現在も夜間バッチで実施している計上処理のリアルタイム化に向けて、2020年5月末のリリースを目処に部門システム含めたシステム改修を進めている。そのほか、SAP S/4HANAで標準提供されるUI「SAP Fiori」を用いた汎用仕訳入力機能や資金管理機能も2019年度に順次リリースする。

また、海外でSAP ERPを導入している現地法人、支店、事業会社についてもSAP S/4HANA化に向けたアセスメントやPoCを終え、2019年度よりまずは北米の現地法人をターゲットに移行に着手した。今後も伊藤忠商事の次世代基幹システムは、次世代商人のイノベーションを支え、さらなる進化を遂げていく。

導入製品・ソリューション

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