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KDDI株式会社 様

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「Oracle SuperCluster T5-8」で認証基盤を12倍性能向上

  • Oracle SuperCluster T5-8

トラフィックの爆発的な増加に対応

スマートフォンの普及やLTEサービスにより、モバイル通信におけるトラフィックの爆発的増加が、加速の一途を辿っている。この動きに対応するため、KDDI株式会社(以下、KDDI)は通信インフラを継続的に増強してきた。その1つ、移動体のコアネットワークにおいて、同社はパケットサービスを利用するお客様の認証を行うシステムを、新しいプラットフォームへ移行することを決定した。40台のサーバで動かしていた認証システムの性能を、「Oracle SuperCluster T5-8」1台分へ集約。エンジニアド・システムズの特長を活かし、わずか40日間での導入が実現した。

導入事例インタビューデータ

会社名
KDDI株式会社
所在地
東京都新宿区西新宿2-3-2
創業
1984年
URL
http://www.kddi.com/新しいウィンドウで開く
  • KDDI株式会社 技術統括本部 ネットワーク技術本部 EPCネットワーク技術部長 博士(工学)加藤 利雄 氏

    KDDI株式会社

    技術統括本部
    ネットワーク技術本部
    EPCネットワーク技術部長
    博士(工学)

    加藤 利雄 氏

導入背景と課題

2年でモバイルトラフィックが3.8倍に増大

モバイル通信市場で「au」ブランドを展開するKDDIは、着実にその存在感を高めている。MNP(携帯電話番号ポータビリティー)の実績では、2013年9月に11万800件と同年で最も高いMNP転入数を記録※1。契約全体の純増数も順調に伸びている。その一方で、モバイルトラフィックは契約数を上回るペースで爆発的に増えている。KDDI株式会社 技術統括本部 ネットワーク技術本部 EPCネットワーク技術部長 加藤 利雄 氏は、「スマートフォンの登場以降、数多くのサービスが提供されるようになったことで、国内のモバイルトラフィックは過去2年間で3.8倍※2に増えました」と語る。

急増するトラフィックに対応するため、同社はネットワークやシステムの増強に努めてきた。その1つが、移動体コアネットワーク向け認証システム※3だ。段階的に同システムを拡張してきた結果、2010年に3G/LTE向けに稼動し始めたときには6台だったサーバは、40台になっていた。

この移動体コアネットワーク向け認証システムの構築や運用を、10年以上サポートしているのが伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)だ。

「モバイルサービスの拡張に伴い、年に数回、システムの機能追加が必要になります。サーバ台数の増加によって、システム構築や運用を依頼しているCTCの業務負荷も増大します。機能追加の作業には夜間の短い時間しか使えないため、全ての作業を完了するまでに数週間を要していました。3年間スケールアウトさせ続けてきましたが、限界に近づいていたため、スケールアップする決断をしました」(加藤氏)。

  • ※1 一般社団法人 電気通信事業者協会(TCA)発表
  • ※2 出典:総務省 我が国の移動通信トラヒックの現状(平成25年6月分)
  • ※3 加入者データベースと連携してスマートフォン・携帯電話利用者の加入者情報やその接続情報を管理する認証システム

40台の物理サーバの性能を1台の仮想化統合基盤に集約

新プラットフォームの選定が行われたのは、2013年5月末。既存のシステムはSPARC Enterprise M3000、およびOracle Solarisで構築されていることから、まず移行先のOSにはOracle Solarisが選ばれた。プラットフォームは複数の製品を検討した上で、最も高い集約率で仮想化基盤に統合できるOracle SuperCluster T5-8を選定。リリースされたばかりのエンジニアド・システムズ製品で、世界初の採用となった。

「複数のサーバとストレージの導入では、配線デザインやコンフィギュレーション、テストに相当の時間がかかります。エンジニアド・システムズ製品であるOracle SuperCluster T5-8を選んだ最大の理由は、そうした時間を短縮できるためです」と加藤氏は振り返る。

従来のプロジェクトでは、CTCがハードウェアを購入してユーザーに提供するというスタイルが一般的だったが、今回のプロジェクトでは日本オラクルがOracle SuperCluster T5-8を設置し、CTCがアプリケーションのインストールなどを行った。

プロジェクトを成功に導くため、KDDIとCTC、日本オラクルは“三位一体”の緊密な協力体制を組んだ。それを象徴するのが、事前の検証作業だ。今回のプロジェクトはOracle SuperCluster T5-8の出荷前にスタートしたため、実機での検証はできない。そこで、サーバ、ストレージ、InfiniBandスイッチなどのコンポーネントを組み合わせた“疑似Oracle SuperCluster”を作り、検証を行ったのである。

「一番の懸念は、40台のサーバからの移行に耐えうる性能が出るかということ。なかでもディスクI/Oについては注意を払っていました」と加藤氏。というのも、このシステムでは、認証のたびに“どのユーザーが、いつ、どんなサービスを利用したか”というログを残す必要があるためだ。

「サービスの利用履歴は必ずディスクに書き込まれます。これは連携している課金システムでも利用するデータですので、ディスクへ正しく書き込まれないと、誤請求につながりかねません。それだけに、ディスクI/Oはきわめて重要です」(加藤氏)。

十分なディスクI/Oを確保するために大きな役割を果たすのが、内部の構成要素をつなぐInfiniBandだ。既存システムのファイバーチャネルと比較し、理論上5倍の帯域を実現する。「念入りな事前準備の結果、十分な性能を備えていることを確認できました」(加藤氏)

導入効果

性能や設置スペース、電力消費で圧倒的な導入効果

40台のサーバで動いていたシステムを、本番機の3台と開発・検証機1台の、計4台のOracle SuperCluster T5-8で構成される環境へと統合。導入プロジェクトは約4ヶ月という短期間で行われ、2013年11月には稼動が開始された。通信インフラの根幹を支えるシステムだけに、冗長構成された3台の本番機は十分な距離をとった拠点に分散配置することで不測の事態に備えた。「自然災害によるケーブル切断などで2つの拠点が孤立したとしても、残り1拠点で全国のモバイル通信を維持できる容量設計をしています」(加藤氏)。

Oracle SuperCluster T5-8への移行による効果は大きい。システム全体での処理性能は、既存サーバ40台の合計と比較して12倍向上。設置スペースは83%削減され、電力消費は70%削減される※4。既存システムでは40台のサーバそれぞれに必要だったアプリケーションのライセンスフィーが圧縮できるため、コスト削減効果も大きい。

サーバ台数増に伴う運用負荷の増大を懸念していただけに、新システムを支えるエンジニアド・システムズ製品、Oracle SuperCluster T5-8には運用負荷軽減にも期待がかかる。加藤氏は「機能追加などの作業負荷だけでなく、サーバ台数が減ることでハードウェア障害への対応も負荷が減らせるでしょう。周辺システムと組み合わせた運用なので定量化は難しいのですが、一定の運用コスト削減効果もあると考えています」と話す。

  • ※4 KDDI調べ

今後の展望

トラフィックの増加に安定稼動を守りながら対応する

今回のプロジェクトが一段落した今、加藤氏は既に次のプラットフォーム拡張を考えている。トラフィックの増加は今後も続き、6分の1になった設置スペースでも数年で埋まってしまうと考えられるためだ。

「ユーザーやシステムに対する付加価値の前提になるのは安定稼動です。その安定性を維持しながら、新サービスや新技術にチャレンジしたいと考えています」(加藤氏)。社会においてきわめて重要度の高い通信インフラの、しかも基幹的なシステムを任されている立場だけに、安定性という言葉には格別の重みがある。その姿勢を守りながら、加藤氏は通信インフラの新しい姿、KDDIのICTの将来像を思い描いている。

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