事例

国立大学法人 東京農工大学 様

更新

全学教育用情報システムをハイブリッド・クラウドで刷新

CTCの提供する「A-Cloud Mail」とプライベートクラウドを連携

企業がお客様へのサービス品質を重視するように、大学は学生への教育品質の向上が求められるようになった。この品質を左右する1つがITシステムである。利用機会の増大、使いやすい操作性、優れたパフォーマンスなどが要求されるが、大学も企業と同様に、投資できるコストには限界がある。そこで東京農工大学が採用したのがクラウドであった。全学教育用情報システムをプライベートクラウド化するとともに、メールはCTCの提供する教育機関様向けパブリッククラウド「A-Cloud Mail」を採用。先進的なハイブリッド・クラウドで全学教育用情報システムを刷新した。

課題と効果

課題
  • 省エネルギーとITコストの削減
  • 運用負荷の軽減

全学教育用情報システムをクラウド化

効果
  • 安定したシステム基盤の実現
  • 管理コストの低減

導入事例インタビューデータ

学校名
国立大学法人 東京農工大学
所在地
府中(東京都府中市) 小金井(東京都小金井市)
創立
1874年
URL
http://www.tuat.ac.jp/新しいウィンドウで開く
  • 国立大学法人 東京農工大学 総合情報メディアセンター 教授辻澤 隆彦 氏

    国立大学法人 東京農工大学

    総合情報メディアセンター 教授

    辻澤 隆彦 氏

  • 国立大学法人 東京農工大学 総合情報メディアセンター 准教授辰己 丈夫 氏

    国立大学法人 東京農工大学

    総合情報メディアセンター 准教授

    辰己 丈夫 氏

導入背景

農学の時代をITの側面から支援

東京農工大学の設立は1874(明治7)年にさかのぼり、まもなく創基140年に及ぼうとしている。農学部と工学部の2学部からなり、農学部は東京都府中、工学部は小金井にキャンパスがある。

同大学は2011年4月に家畜の口蹄疫などを取り上げる「国際家畜感染症防疫研究教育センター」を設立して注目された。また、21世紀は農学の時代といわれ、高度な研究・分析能力を備えた人材を育成するため、国内農学系の6大学が「大学院連合農学研究科」を設立した。

この「大学院連合農学研究科」の遠隔講義システムにおいて、重要な役割を果たしているのが、同大学の総合情報メディアセンターである。「学内情報基盤の維持・運営を通して、各大学院研究科・学部・研究教育施設の研究・教育活動をサポートしています」と、同センター 教授 辻澤 隆彦 氏は説明する。

今回クラウドを採用した全学教育用情報システムは、教育システム、インターネット情報システム、統合管理運用システム、統合ストレージ、図書館用システムなど、多岐にわたるサブシステムから構成される基幹システムであり、インフラは5年に一度更新される。

その更新に向けて、検討が開始されたのは2009年の夏頃であった。仕様策定委員会が発足し、各科の教員に対しヒヤリングを開始した。

システム概要

サーバの仮想化・統合化

システム概要イメージ

仕様策定委員会で当初から念頭にあったのはサーバの仮想化・統合化であった。東京農工大学は、大学の基本理念を「使命志向型教育研究 - 美しい地球持続のための全学的努力」(MORE SENSE:Mission Oriented Research and Educationgiving Synergy in Endeavors toward a Sustainable Earth)としている。この考え方からも、サーバ台数を削減することで、電力消費を抑えるべきとの意見が多かった。各科の先生からもシステム規模拡大の要求が多く、それを実現するには仮想化・統合化によるコスト削減も不可欠であった。仮想化・統合化で、運用負荷も大幅に削減できる。

この仮想化・統合化を実現するためにCTCは、シスコのIAサーバ「Cisco Unified Computing System(以下Cisco UCS)」、EMCのユニファイド・ストレージ「Celerra NS-480」、VMwareの仮想化ソフト「VMware vSphere」を組み合わせたクラウド基盤を提案した。サーバ、ネットワーク、ストレージ等個別の最適化ではなく、ITインフラ環境全体を最適化することで運用効率の向上やコストやスペース削減に貢献できる仮想化環境に最適なコンピューティング・プラットフォームである。「大学としては入札が前提ですから、製品までは口を出せません。ただ、CTCの提案したクラウド基盤は、仕様、価格、構築期間、運用負荷削減の条件に合うソリューションでした」と、同センター 准教授 辰己 丈夫 氏は認める。

メールシステムに「A-Cloud Mail」を採用

利用部門から要求の多かったのが、メールシステムの改善であった。「それまで利用していたシステムはスパムメールの除去率が低く、利用者から度々不満があげられていました。しかしながら、新たなシステムを構築するにはコスト面で問題がありました」と、辻澤氏は語る。

優れた操作性や高精度なスパム除去率を望むと、限られた予算内でカバーできない。しかしながら、利用部門からはシステムの改善が求められる。大学側はいくつかのベンダーに相談したが、コスト面で折り合いが付かなかった。無料で利用できるクラウド・サービスも候補となったが、海外のサーバに機密性の高い情報を置くのは不安があると、反対する委員もいた。

そこで、セキュリティに関する懸念事項がないメールシステムが仕様として要求された。CTCが提案・提供したメールシステム「A-Cloud Mail」は、その仕様に合致するものであった。

VMware Viewで仮想デスクトップ環境を構築

運用負荷削減の一環として、クライアント端末のシンクライアント化も議題にあがった。それまで同大学ではMacintoshを教育用クライアントとして利用していたが、学内利用者からの要望でこれをWindows OSにすることに決定。同時に、消費電力を最小限に抑えることのできるシンクライアント端末の検討も開始された。

「当初からVDI(Virtual Desktop Infrastructure)に決めており、消費電力は8ワット以下を求めました」(辻澤氏)。そして、この条件に適合したのが、「VMware View」とワイズシンクライアントを組み合わせた仮想デスクトップ環境であった。ワイズテクノロジーは世界的なシンクライアント専門ベンダーであり、その端末は極めてコンパクトなことと省電力設計で定評がある。「VMware View」と組み合わせることで、これまで困難であった3次元CADや技術解析ソフトウェアの仮想環境上での利用が、530台ある全てのクライアントから可能となった。

今後、仮想デスクトップ環境は、事務系の端末にも導入していくことを検討する。

導入効果

計画停電で「A-Cloud Mail」が評価される

8月に入札が行われ、9月の開札でCTCの受注が確定した。これにより、プライベートクラウドと「A-Cloud Mail」によるパブリッククラウドの採用が決まり、先進的なハイブリッド・クラウドによる教育用情報システムの構築が開始された。

10月から学内の詳細な意見をとりまとめ、システム構築を経て、2011年2月に稼働した。それまで60数台あったサーバをシスコのUCSブレードサーバ30台に統合させた。

「メールの切り替えが大変でした。先生と学生のコミュニケーションを一刻も閉ざすわけにはいきませんから」と、辰己氏は振り返る。苦労しただけあって、新たなメールシステムの評価は高い。課題であったスパム除去率も高く、「特に印象的だったのは、3.11の震災による計画停電の影響を受けなかったことです。学外にサーバを置くということが、可用性の維持にどれほど効果があるかを利用者全員が認識しました」と、辰己氏は述べた。「A-Cloud Mail」の導入を疑問視していた教官もいたが、その不安を一掃できた。

また、シンクライアントを導入したことにより、端末故障への対応負荷が軽減された。CADを授業に取り入れている教員からも、パフォーマンスへの苦情もないという。

今後の展望

ラーニング・コモンズへの期待

認証基盤の切り替えについても、「かなり想定外のトラブルがあると予想しましたが、不思議なほどありませんでした。認証に問題があると、メールも含め全システムに影響します。これでCTCの技術力に安心しました。大変満足しています」と、辻澤氏も認める。

今回のインフラ更新において、辻澤氏と辰己氏が構想していたものに「ラーニング・コモンズ」があった。学習するために集う共有スペースのことで、新しい図書館のコンセプトとして注目されている。「予算の都合で限界がありましたが、一部その試験的な場所を用意しました」と、辻澤氏は語る。今後その実現に向けて、ITインフラが重要視され、CTCからの提案が期待されている。

今後CTCは、最新のソリューションとサービスで東京農工大学の教育研究システムの拡充と品質向上をサポート。その一方で、本構築で蓄積されたノウハウを、今後のVblock提案の展開につなげていく。

用語解説

Cisco UCS
ネットワーク機器メーカーであるシスコの提供するサーバ製品。仮想化コンピューティング環境の実現に特化しており、世界的にユーザーが増加している。

A-Cloud
CTCが教育機関向けに提供するクラウド・サービス。A-Cloud Mailは、メール基本機能に加え、セキュリティ機能を標準提供、新入生・卒業生が重複する年度初めのアカウント増について最大3ヵ月間無料、電話・メール受付のサポートセンターの設置、契約満了時のデータ返却等、教育機関の運用に合わせた様々なサービスを提供する。

VDI
Virtual Desktop Infrastructureの略。デスクトップOS環境を、サーバの仮想マシン上に実装・集約するシンクライアントの仕組み。

Vblock
シスコ、EMCジャパン、VMwareの3社が、Cisco UCSとEMCのユニファイド・ストレージ、VMwareのVMware vSphereを組み合わせてパッケージ化した統合型のクラウド基盤パッケージ。

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