コラム

大量データ時代を勝ち抜く、大容量アーカイブストレージ選択の決め手

更新

データは「溜める」から
「使うことを前提にした管理」の時代へ

単にデータを溜めるだけでなく、いかに活用しやすい状態で格納しておくか。IoT時代を視野に、これまでのストレージでは想定していなかった規模と用途への対応が求められている。ペタバイトクラスのデータ管理の最適解として注目を集める大規模・大容量型SDS(Software Defined Storage)。その全貌に迫る特別鼎談をお届けする。

大容量データの管理が企業成長の鍵を握る

データの活用は企業の成長に欠かせない。その一方で、多くの企業では爆発的に増加するデータの管理が重要な経営課題となっている。単にデータを溜めるだけでなく、活用しやすい状態でどう格納しておくか。IoT時代も視野に、これまでのストレージでは想定していなかった規模と用途への対応が求められている。

大量データを管理するニーズが高まる中、大容量アーカイブストレージという選択肢が注目を集めている。なかでも大規模・大容量型SDS(Software Defined Storage)はペタバイトクラスのデータ管理の最適解としてグローバルで導入が進んでおり、国内でも導入や検討を行う企業が増えている。しかし日本国内ではまだまだ認知度が低いというのが現状だ。

日本を代表するシステムインテグレーターの伊藤忠テクノソリューションズ、グローバルで活躍する総合ITベンダーのヒューレット・パッカード・エンタープライズ、SDSのリーディングメーカーであるスキャリティ・ジャパンの3社は、パートナーシップを組んで大規模・大容量型SDSの日本市場の活性化に乗り出した。

企業が抱えるストレージ課題に最適な解決策を

写真左から、高野 勝氏、小林 均、仁戸 潤一郎氏

写真左から、
日本ヒューレット・パッカード株式会社 高野 勝氏
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 小林 均
スキャリティ・ジャパン株式会社 仁戸 潤一郎氏

なぜ大規模・大容量型SDSなのか?伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)製品・保守サービス本部 ITインフラビジネス推進第2部 データプラットフォームビジネス推進課 小林 均、日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、HPE) データセンター・ハイブリッドクラウド事業統括 DCHC製品統括本部 エバンジェリスト 高野 勝氏、スキャリティ・ジャパン株式会社(以下、スキャリティ) セールスエンジニア 仁戸 潤一郎氏の3者による特別鼎談をお届けする。

「IoT時代では企業にとってデータを削除すること自体がリスクとなる」
「航空機1フライトで200テラバイト、自動運転の自動車1日あたり83テラバイトのデータが溜まる」
「ペタバイトクラスの大容量データを格納できて、既存のデータと同じように使えるアーカイブシスステムの必要性が高まっている」
「ストレージ増強のたびに発生する膨大なデータの移行作業から情報システム部門を解放する」
「データを溜めるところと、使うところは分けて考えることが重要」

鼎談では示唆に富んだキーワードが飛び交った。まず次項では、大量データ時代を勝ち抜く企業を支える大規模・大容量型SDSの全貌に迫る。

企業のデータ戦略は活用を前提とした管理の時代へ

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 製品・保守サービス本部 ITインフラビジネス推進第2部 データプラットフォームビジネス推進課 小林 均

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
製品・保守サービス本部
ITインフラビジネス推進第2部
データプラットフォームビジネス推進課
小林 均

小林:日々お客様に接していると、これまでのストレージと方向性の異なる大容量ストレージが求められていると感じています。構造化データ、非構造化データに関わらず「どんどんデータを溜めていく、なおかつ活用しやすい状態で格納する」大容量アーカイブストレージのニーズが高まっています。例えば、設計データの長期保存、4K・8Kの高精細動画像データのストリーミングや蓄積、法規制への対応などの用途があります。今後、商談として増えてくるのが、IoT(Internet of Things)のデータをいかに格納し管理するか。あらゆるデバイスから膨大なデータが自動生成されるIoT時代に既存のストレージで対応するのは現実的ではありません。

CTCの考えるストレージの用途別分類

CTCの考えるストレージの用途別分類

時代の変化に伴い、これまでと方向性が異なる大容量ストレージが求められている。

仁戸:分析基盤や分析方法の発達により、今日は「意味がない」データでも、明日には分析に必要な「意味のある」データになるかもしれません。IoT時代では企業にとってデータを削除すること自体がリスクとなります。そうしたリスクをおかすよりは、大容量データに対応したアーカイブストレージにデータを蓄積し将来的なデータ活用に備える。企業のデータ戦略の考え方も蓄積から活用を前提とした管理へとシフトしてきています。

高野:仁戸さんがおっしゃられた同じことを社内のアナリストからもいわれています。IoT関連のデータは、気象条件など複雑な要因のもとに発生しているため二度と同じデータを再現できない。だから絶対消してはいけないと。IoT関連のデータは溜め続けるしかないわけです。社内のアナリストのレポートを読むと、航空機1フライトで200テラバイト、自動運転の自動車1日あたり83テラバイトのデータが溜まるとの記載がありました。数日でペタバイトのデータが蓄積される用途において、小林さんのお話にもあったように従来型ストレージは、現実解とはなりえません。

小林:企業で取り扱うデータの種類や規模が爆発的に増えている中で、今後IoTの本格的な普及も視野に、ペタバイトクラスの大容量データを格納できて、既存のデータと同じように使えるアーカイブシスステムの必要性が高まっている。鍵を握るのが大規模・大容量型SDSです。

3社のパートナーシップで日本の大規模・大容量型SDS市場を開拓

小林:CTCではストレージをカスタムオーダーできる「Custom Order Storage」というサービスを提供しています。同サービスは汎用IAサーバにソフトウェアとして導入されるストレージ製品SDSを活用しているのが特徴です。処理能力の高いサーバを揃えて性能に特化したり、安価なサーバを大量に用意して大容量型にしたりと、利用用途に応じて柔軟に構成しお客様にご提案しています。同サービスは性能追求型、仮想化環境特化型、大規模・大容量型の3つを柱としています。仮想化環境特化型の製品としてHPE StoreVirtual VSA、大規模・大容量型の製品としてオブジェクトストレージ対応SDS「Scality RING」を用意しています。

仁戸:オブジェクトストレージをSDSとして提供するScality RINGは、パフォーマンスと容量の拡張性が高く、かつデータの保護レベルをSLAに合わせて柔軟に設定できるといった特徴から、Web/クラウドサービスやアクティブアーカイブなどの用途に適しています。Scality RINGは1ペタバイトを超えたあたりから優位性が明確となります。現在、様々な業種・用途で135社以上の実績があり、数十ペタバイトのお客様もいらっしゃいます。

Scality RINGのシステム構成

Scality RINGのシステム構成

アクセス層とデータ格納層が、要件に応じてそれぞれ独立してスケールアウト可能。RINGストレージサーバは、容量要件に応じて適切な機種の性能と数量をサイジングできる。

小林:Custom Order Storageを進めていく中で、大容量アーカイブストレージのニーズが大きいことがわかりました。CTCではLTFS(Linear Tape File System)、光ディスク、大規模・大容量型SDSの3つの柱でストレージポートフォリオを整備し、アーカイブ製品を様々な観点で評価してお客様に最適な製品をご提案しています。CTCはここ数年、検証も含めてスキャリティさんとの連携を深めており、すでにScality RINGの導入実績があります。大規模・大容量型SDSにおいて、ランダムアクセスや高いスループット性能に加え、戦略的に非常に重要な製品としてScality RINGを位置付けています。スキャリティさんとHPEさんがグローバルでパートナーシップを強化している点も高く評価しています。

高野:既存のIAサーバで大規模・大容量型SDSを実現しようとするとラックの数が膨大なものとなります。HPE Apollo 4000シリーズのようにビッグデータやオブジェクトストレージに特化したIAサーバが必要です。HPEではソフトウェアベース分散ストレージに最適化したIAサーバを用意しています。オブジェクトストレージ対応の大規模・大容量型SDSの分野はスキャリティさんとがっちりタッグを組んでカバーしていきます。グローバルでスキャリティさん専用のチームがありますし、研究投資も行っています。スキャリティさんは日本市場に向けたサポート体制の強化を図っており、HPEとしてはとても頼もしく感じます。

ソフトウェアベース分散ストレージに最適化したHPE Apollo 4000シリーズ

ソフトウェアベース分散ストレージに最適化したHPE Apollo 4000シリーズ

圧倒的なストレージ密度をアプリケーション特性に応じて提供。Apollo 4510 Systemでは、1台で554TBのストレージ、1ラックで5.44PBものストレージを実装可能だ。

仁戸 潤一郎氏

スキャリティ・ジャパン株式会社
セールスエンジニア
仁戸 潤一郎氏

仁戸:日本法人スキャリティ・ジャバンは2015年3月に設立いたしました。日本でも大容量のオブジェクトストレージやSDSの需要が高まり始めたことを受けて、日本企業が求めるサービスレベルでScality RINGをお客様にお届けする、ということが我々のミッションです。そのため、営業展開だけでなく、日本語でのテクニカルサポートや保守サービスなど日本のお客様のご要望に迅速かつ確実なアフターフォローをご提供しています。すでに日本国内においても大手通信事業者やクラウド事業者などの導入実績がありお問い合わせも増えています。HPEさんとはグローバルでアライアンスを組ませていただき、OEM契約も結んでいます。HPE Apollo 4000シリーズは、Scality RINGの強みを最大限に引き出すことができる高集約・高密度ストレージサーバです。スキャリティの社内にもHPEさんの専任チームがつくられています。

小林:日本において大規模・大容量型SDSはこれからの市場です。日本企業に対してメリットの訴求とともに安心感の醸成は重要となります。安心感の観点では、グローバルでアライアンスを組んで大規模・大容量型SDS分野を開拓していくHPEさんとスキャリティさんの強力なパートナーシップは大きなポイントとなります。そこにCTCとHPEさんとの間で長年にわたって築きあげてきた強固なパートナーシップが加わることで、お客様にもたらす安心感はより大きなものとなります。またメリット訴求の観点ではCTC総合検証センター(以下、TSC:Technical Solution Center)が重要な役割を果たします。

大規模・大容量型SDSは無停止で拡張、データ移行作業が不要

小林:TSCではHPEさんのIAサーバとScality RINGの検証環境を構築しています。パフォーマンス検証、障害検証、サーバ追加時のパフォーマンスアップ率などの検証を行っています。検証して実感したのは、無停止でスケールアウトができることのメリットの大きさです。システムを止めることはビジネスを止めること。コンシューマ向けサービスはもとよりIoT時代では無停止での拡張は必須要件といえます。

仁戸:ベルギーの通信事業者様は、2010年の導入から7年間で当初200テラバイト未満だったデータ量が3.8ペタバイトまでふくれあがりました。その間、容量拡張、サーバのリプレースなどもありましたが、無停止を現在も継続しています。24時間365日絶えずサービスを提供するコンシューマ向けビジネスを展開するお客様の信頼を支えています。

高野 勝氏

日本ヒューレット・パッカード株式会社
データセンター・ハイブリッドクラウド事業統括
DCHC製品統括本部
エバンジェリスト
高野 勝氏

高野:無停止に加えて、データ移行の観点でも大規模・大容量型SDSは大きなメリットがあります。データ量の増大に対応するためにストレージの増強は不可欠です。ファイルサーバの切り替えに伴うデータの移行作業を何とかしたいといった声はお客様からよくお聞きしますが、ペタバイトクラスのデータ移行となると、厳しい状況です。IoTで扱うデータはどこまで増えるのか、予測することも難しい。データの増大に合わせてサーバを追加することで拡張できる「HPE Apollo 4000シリーズ+ Scality RING」は膨大なデータの移行作業から情報システム部門を解放します。

仁戸:オブジェクトストレージ対応のSDS 製品Scality RINGにも適材適所の考え方は必要です。オブジェクトストレージはHTTPS上のREST APIを利用してアクセスします。APIでのやりとりは、ファイルシステムによるアクセスに比べるとオーバーヘッドの点では不利ですが、大容量、大多数のオブジェクトやファイルを管理するうえではファイルシステムベースのストレージよりも有利になります。その理由はAPIを通じてストレージを使うということはアプリケーションとストレージの間がより疎結合の関係になります。ペタバイトクラスの規模のデータを格納するストレージとなると、アプリケーションから独立性を維持した方がアプリケーションの観点からもストレージの観点からも運用面、管理面で高いSLAを実現できるからです。

高野:データを溜めるところと、使うところの要件は余りにも違うので分けて考えるという観点はとても重要です。一方で、運用面では統合的に管理することが望ましい。HPEはサーバからストレージ、ネットワークまでインフラを提供しています。そこにScality RINGをのせて大容量データを管理するニーズに対し、運用も含めてカバーしていくことを目指しています。溜めるところと使うところが別々の管理ツールでは運用負荷が高まります。サーバストレージ、データ管理が1つの管理画面でできるようにスキャリティさんと共同で取り組んでいます。

仁戸:ソフトウェアが十二分にその性能を発揮するためには、基盤としてのハードウェアの知識も必要となります。ハードウェアを知り尽くしたHPEさんと協業することで、Scality RINGをハードウェアからソフトウェアまでワンストップで最適化されたシステム提案ができると考えています。また大規模・大容量型SDSの日本市場を拡大していくうえで、お客様と近い立場にあるCTCさんとのパートナーシップは、お客様のストレージ要件や課題を正確に拾い上げるといった面でも大きな意義があります。

高野:CTCさんのマルチベンダーとしての提案力、HPE Apollo 4000シリーズや Scality RINGに対するノウハウに基づく構築力やサポート力は、3社のパートナーシップの要となるものです。

小林:日本において大規模・大容量型SDSに対するお客様の認知度はまだまだ低いです。ITの総合ベンダーとしてグローバルで活躍するHPE、オブジェクトストレージ分野をリードするスキャリティ、そして両社の製品を熟知しているCTCの3社で協力して大規模・大容量型SDS市場を活性化していきたいと考えています。TSCではデモンストレーションはもとよりワークショップやPOCも実施しています。ワークショップでは概要説明、技術解説などご導入を検討するうえで必要な情報や考慮ポイントなどをご提供します。まずはお客様ご自身で大規模・大容量型SDSの実力を体験いただければと思います。

TSCでは各種検証はもとよりワークショップ、POCも実施

ストレージ構成

CTCでは包括的な検証環境を提供。顧客にとって最適なストレージ構成を導き出す。

いかにデジタライゼーションの波に乗り、大量データを活用して競争力を高めていくか――。CTC、HPE、スキャリティの3社のパートナーシップで提供する大規模・大容量型SDSが日本企業のさらなる成長を支えていく。

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