コラム

SEのためのストレージ講座

第2回 ストレージ仮想化の現実~ストレージの仮想化エンジン~

更新

IT基盤のストレージの役割や課題から仮想化・統合化まで、CTCのエンジニアが解説します

著:クロスファンクショングループ プロダクトマーケティング室
インフラソリューション推進部 菅 博

ストレージ仮想化を実現する手段はひとつではなく、ストレージを束ねて制御する仮想化エンジンがどこに実装されるかによっても、それぞれ長所と短所があります。ここでは仮想化エンジンのタイプをサーバ型、ネットワーク型、ストレージ型の3つに分類して説明します。

サーバ上に置かれた仮想化エンジン

物理的に異なる複数のストレージをサーバが認識している場合、サーバはそれぞれのストレージからSCSIデバイスとしてのボリュームを認識できます。このとき、サーバ上にインストールされたソフトウェアRAIDはサーバ上の仮想化エンジンとしての働きをします。例えば異なるストレージから提供されたボリュームに対してRAID10を適用して、筐体レベルでの耐障害性を確保することができます。

サーバから見えるボリュームレベルであればストレージ筐体の違いは全く無視することができるので、サーバ上を経由してのデータの移動などもかなり自由に行うことができますが、前にも述べたようにソフトウェアRAIDはサーバ自身のCPUをそのまま使用するため、仮想化エンジンとしてのソフトウェアRAIDに複雑な仕組みを持たせることはあまり勧められません。また、ボリューム管理がサーバ単位になってしまうために、サーバが複数で構成されているシステムでは一括管理という観点からは望ましくありません。

ネットワーク上に実装された仮想化エンジン

図1

図1

仮想化エンジンをサーバとストレージの間、つまりネットワーク部分に実装することでストレージ仮想化を実現する方式です。ネットワーク部分にはデータブロックしか流れないため、サーバやストレージから完全に独立して実装することが可能なので、基本的には全てのサーバ・ストレージ・OSをサポートできる自由度を持っています。

仮想化のイメージとしては、それぞれのストレージ筐体が提供するボリュームやファイルシステムを仮想化エンジンが制御することで、ファイルシステムを単一な階層に見せたり、ある筐体のボリュームと別の筐体のボリュームの間にクローンやミラーの関連づけを行うものです。

構成の自由度が高いので、既存ストレージやサーバを流用することも可能ですが、構成によっては「保守」や「パフォーマンス」の問題を考慮する必要があります。

ストレージ内に実装された仮想化エンジン

図2

図2

ストレージのOS内に仮想化エンジンを実装することで、複数の筐体を単一のストレージに見せる方式です。ストレージの階層で仮想化がなされているので、データ管理の面でもこれまでのストレージ固有の機能が無理なく適用できるために、管理のし易さでは最も優れていると思われます。

ただし、ストレージのOSに依存しているために、基本的には(例外もあります)それらのエンジンを持った同一モデルでのクラスタリングが前提となり、既存資産の流用が出来ません。

In-BandとOut-of-Band

ネットワーク上に仮想化エンジンを実装する場合に、データフローと制御フローをどこに通すかによってIn-Band方式とOut-of-Band方式の2つがあります。

In-Band方式
仮想化エンジンがサーバとストレージの中間に配置され、データフローと制御フローの双方が仮想化エンジンを経由する方式です。仮想化の制御フローに従ってデータフローを仮想化エンジンが処理するため、サーバ側には特別な仕組みは一切必要なく考え方としては非常にシンプルですが、全てのフローが常に仮想化エンジンを経由するために、ここがパフォーマンスのボトルネックになる可能性があります。
全てを集約していることがネックになる可能性があるとは言え、必要な情報は常にここを経由するために、仮想化されたボリュームに対してのアクセス制限や筐体間ミラーなどを実現するのは比較的容易なため、この方式を採っている仮想化エンジンは比較的多く見られます。

Out-of-Band方式
データフローと制御フローが分離され、制御フローは外だしにされたマッピングテーブルに従う方式をOut-of-Band方式と呼びます。この場合、各ボリュームに対するアクセス方式が確立されれば、あとは通常のI/Oと何ら変わらないために、データフロー部でのパフォーマンス劣化を気にする必要が無くなります。
ただし、各サーバがマッピングテーブルを参照してアクセス方式を決定するために、サーバ上に何らかのエージェントを置く必要があることや、ストレージ間での複雑なボリューム連携が難しいなどのデメリットがあります。

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