コラム

SEのためのストレージ講座

最終回 ストレージは難しい?

更新

IT基盤のストレージの役割や課題から仮想化・統合化まで、CTCのエンジニアが解説します

著:クロスファンクショングループ プロダクトマーケティング室
インフラソリューション推進部 菅 博

 ITが一般家庭にまで浸透しているにも拘わらず、IT企業に就職する人々でさえストレージの知識をほとんど持たない方が相当程度いるのが現状です(これまで掲載してきたコラムは、こうした状況を見かねて社内のストレージ教育用に作成した資料を元にしています)。今回は、どのような背景がこうした状況を作り出しているのかを考えてみます。

1. ストレージを実践する環境と機会がない

職場や家庭にPCがあったとしても、大容量のストレージは見たことさえない方が多いのではないでしょうか。個人環境ではそもそもそこまでは必要ではなく、企業内でもデータは情報システム部門によって管理されるために、TB単位のデータを取り扱ったことがある方はかなり少ないはずです。OSやデータベース、Web環境などは個人のPCでも構築できるので用語や機能の知識は自然に身につきますが、大容量ストレージを直接操作する機会に恵まれることは稀であるために、「よくわからない、ピンとこない」という事になりがちです。

大容量ストレージは個人環境では必要とされず、企業内のストレージも通常はごく限られた方々によって運用管理されている故に、ストレージがメジャーな存在になるには時間がかかったようです。

2. ストレージを学びたいという意欲がない

これはどこまで真実か自信がありませんが、ITの要素技術の中でもOSやデータベース、プログラミング言語などと比較すると、意欲的にストレージを学ぶ方は少ないように感じます。最初に述べたように、直接操作する環境も機会もないことが原因であることは間違いがないのですが、そもそも他の技術と比較しても「地味」な分野であることは間違いがありません。

データベースやアプリケーション開発などは利益に直結するところなので、それらの技術に精通していることは成果として評価されやすいことを意味します。ところが、ストレージが提供する機能は完全に裏方に徹しており、改竄防止・バックアップ・災害対策などはすべて保険の意味合いが強く、IT投資の中でも消極的な投資(投資に対する直接的な利益が期待出来ない)に属しています。

IT技術に対して「地味」「派手」という形容詞は不適切かもしれませんが、やはりストレージ技術は他のそれと比較して、やりがいのある分野とは見なされていないような気がします。データの重要性は誰もが認識しているのですから、このギャップは驚くべき事です。

3. ストレージを学ぶ教材がない

本屋さんに立ち寄って「コンピュータ関連」のコーナーに行くと、OS/Network/Database/Web/Java/....と様々な本が売られていますが、ストレージに関する本は極端に少ないのが現状です。せっかくストレージを学ぼうと思っても、情報量が限られているために独学で精通するのはかなり難しい状況が続いているのは寂しい限りです。

市販されている本の冊数は、間違いなく市場の規模(期待する読者数)を反映しています。実際、Windows関連の書籍は入門からコアな内容まで数え切れない品揃えがあるのではないでしょうか。前節でストレージを学ぶ人口が多くはないという意見を述べましたが、情報ソースも限られているという事実はそれを裏付けているのではないかと思います。つまり、出版する側もそれほど多くの読者層を期待している訳ではないのかもしれません。

4. 最後に

ストレージを学ぶ為の整理された情報がないことから、社内のストレージ教育用にと作成した資料を元にしてコラムを掲載してきましたが、連載は今回で一旦終了といたします。具体的な社名や製品名は意図的に控えたために、すでにある程度の知識を持っておられる方には物足りない内容だったかもしれません。ただ、ストレージをほとんど知らない方にとって、ストレージが何かという感覚を身につけて頂くのに少しでも参考になればと思っています。

時期は確約できませんが、コラムを再開するときには具体的な製品を使ったソリューションの紹介を開始したいと思っています。ストレージ技術は製品依存の度合いが強いために、何を使えば何が出来るかという情報が真偽不明のまま氾濫している状況にあります。すでにストレージをある程度知っている方々が常々疑問に思っている事に対して、明確なソリューションを紹介したいと思っておりますのでしばらくお待ち下さい。

今回で『SEのためのストレージ講座』は最終回となります。2008年9月から、約半年の期間にわたってコラムを執筆させて頂き、私自身よい勉強になりました。ご一読頂きました皆様に心より御礼申し上げます。

ストレージのご提案が必要な折は、ぜひCTCにお声掛けください。

本当にありがとうございました。

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