Vol.3

Hyper-V 2.0の登場

Windows Server 2008 R2の登場によって、Hyper-Vもバージョンがひとつあがり「2.0」としてリリースされる。
それに新規機能や機能改善が図られている。簡単にまとめると以下の項目が挙げられる。

Live Migration
仮想ディスクのホットプラグ対応
最新CPUとの組み合わせによる更なる省電力機能の実装
TCP/IP Offload Engines（TOE）とジャンボフレームのサポート

これにより、従来のHyper-Vよりも柔軟な仮想化基盤を作成することが可能になってくる。
さて今回は、Hyper-V 2.0でも注目を浴びている「Live Migration」機能を見てみる。

Live Migration

これまでのWindows Server 2008 Hyper-V では、フェールオーバークラスタ (MSFC)機能を利用し「Quick Migration」という機能が提供されており、物理サーバーがダウンした時の「仮想マシンのフェールオーバー」や、計画停止時の「仮想マシンの物理マシン間移動」に対応していた。しかしながら、この Quick Migration 環境は、MSFC が仮想マシンをフェールオーバーさせる為に。必ずメモリ上のデータを共有ディスクに書きだす必要があり、そのために仮想マシンは一旦保存状態となってしまい、数秒から数十秒のダウンタイムが発生していた。そのためどうしても可能な限り仮想マシンを無停止にしたいという要望には技術的にこたえられなかったのも事実である。
今回登場したLive Migrationで仮想マシンを停止させずに、物理ホスト間を移動できることになった。これにより物理ホストのメンテナンス時など仮想マシンを停止することなく移動できることになる。
Live Migrationを構成するのに必要なコンポーネントは以下の4つである

Hyper-V 2.0
MSFC
共有ストレージ
Cluster Shared Volume（CSV）

共有ストレージを除きWindows Server 2008 R2の機能ですべて実装できる。

Cluster Shared Volumeとは

（図1）赤い丸で囲んだところでCluster Shared Volumeを使用可能にする

Cluster Shared Volumeは実はフェールオーバークラスタの新機能である。Windows Server 2008 R2でMSFCを構成して、フェールオーバークラスターマネージャーで確認すると、「Enable Cluster Shared Volume」という設定箇所が表示される。（図1）

（図2） Cluster Shared Volumeが利用可能なるとこのように設定画面が表示されるようになる。

ここをクリックし、OKを選択することでCluster Shared Volumeが利用可能になる。（図2）

（図3）cドライブにClusterStorageというフォルダが作成されているのがわかる。

あとは、この画面から共有ディスク上のLUNをCluster Shared Volumeとして登録すればよいので、「Add Storage」から登録していく。登録されたストレージはとどのようにOSから見えるのだろうか？実際に確認してみるとクラスタを構成しているそのマシンからもCドライブ配下のフォルダとして参照されている。（図3）

これにより複数の物理マシンでフェールオーバークラスタ環境を作ったとしても、複数ノードが一斉にアクセス可能なボリュームを提供できる。Live Migrationを行う仮想マシンはすべてCluster Shared Volumeに配置する必要がある。

したがってQuick Migrationとの手順の違いは、仮想マシンの配置先が各LUNではなく、Cluster Shared Volume上というだけといっても過言ではない。これにより、仮想マシンがLUNに縛られることなく柔軟なストレージ設計が容易になったといっても過言ではない。

Live Migrationの感触

実際にLive Migrationを行うにはフェールオーバークラスタマネージャにて仮想マシンを選択し、「Live migrate this virtual machine to another node」という処理を実行するだけである。この間仮想マシンにリモートデスクトップ接続を行って作業していても特に違和感は無い。Pingコマンドで見ていると、瞬間的に1-2の通信断が発生していることが確認できたが、大半の作業においては問題にならないレベルではないだろうか。