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医薬品製品戦略におけるリアルワールドデータ活用の最前線セミナー~開発・市場導入・ライフサイクルへの応用~講演レポート

更新

「ビッグデータ概況と最新動向」と題して発表を行いました。

  • クラウド
  • IoT
  • BI/DWH
開催日
主催
CTCライフサイエンス株式会社

2014年11月28日 、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)の子会社であるCTCライフサイエンス株式会社(以下、CTCLS)主催の「医薬品製品戦略におけるリアルワールドデータ活用の最前線セミナー」に登壇しました。

URL:http://www.ctcls.co.jp/event/201411rwdseminar.html

昨今、製薬企業においてリアルワールドデータの活用が注目されています。本セミナーは、それらに対して、当該領域の有識者をお招きし、課題解決のためのヒントが得られる情報提供の場を目指し、開催されました。
本レポートでは、CTCとCTCパートナー企業Tableau Software(以下、Tableau社)が行った講演の模様をお伝えします。

ビッグデータ概況と最新動向

ビッグデータ・アナリティクス部の保木 富雄より、「ビッグデータ概況と最新動向」と題して発表を行いました。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 ITサービス事業グループ ソリューション事業推進本部 ビッグデータ・アナリティクス部 部長代行 保木 富雄

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
ITサービス事業グループ ソリューション事業推進本部
ビッグデータ・アナリティクス部
部長代行 保木 富雄

1. ビッグデータの現状

今年、CTCはビッグデータ・アナリティクス部という名称の組織を立ち上げましたが、実際には約3年前からビッグデータ・ビジネスについて取り組んでおります。昨今、各種メディアでビッグデータに関する情報が氾濫しています。例えば、Amazonで検索すると、ビッグデータに関する書籍は300件を超えています。

2014年、市場調査会社Gartner社の「先進テクノロジーのハイプサイクル」調査結果によれば、ビッグデータは2012~2013年に「期待のピーク時期」をむかえ、2014年現在は過度な期待がそぎ落ちて「幻滅期」に差し掛かっています。しかし、これでビッグデータが終わるということではなく、地道な啓蒙活動が必要とされ安定的な導入が始まるサイクルに突入しており、CTCはより一層この分野においてビジネスに注力すべき時期と捉えています。

近年、ビッグデータ活用が行われるようになった背景には様々な要因があります。デジタルデータ増加にIT技術の進歩が相まってビッグデータ活用が可能になりました。また、企業からは経済活動の効率化や競争優位性を目的としたニーズの浮上や、消費者自身が進化することでソーシャルメディアの利用においてなど、ビッグデータ活用の需要が急速に増しています。

CTCが定義するビッグデータ・ビジネスには以下の4つの要素があります。

CTCのビッグデータ・ビジネス定義(4つの要素)

1. Data

あらゆる企業・個人・公共の活動において、多種多様なデジタルデータが、毎日のように、大量に生成されています。POSデータ、ポイントカード履歴、電子カルテ/健診履歴、ソーシャルデータ/SMS、監視カメラなどその多くは個人の行動・感情・記録が分析対象データになっています。

2. Technology

ビッグデータビジネスにおいて、大量のデータ(Volume)を、高速・リアルタイムな処理・伝送ができ(Velocity)、多様なデータに対応可能(Variety)であることが求められます。ビッグデータの処理に求められる技術的な要素として、仮想化技術、クラウドコンピューティング、並列処理、分散処理技術 (Hadoop/NoSQL)、ファイルシステムなどが挙げられます。このようにビッグデータビジネスの実現に必要なITの要素は多岐にわたります。

3. Knowledge

データから価値を生み出すためには、分析的マインド・スキルとビジネスセンスを兼ね備えた人材が必要ですが、いわゆるデータサイエンティストの不足が課題となっています。「統計学が最強の学問である」という書籍がヒットしていますが、これには、世間の注目度の高さが表れています。また2013年5月に発足したデータサイエンティスト協会(http://www.datascientist.or.jp/)では各企業のデータ分析実務担当者が多数参加しており、注目されているようです。

4. Business

企業活動で、マーケティングや生産管理など企業活動のほとんどの業務でビッグデータの活用が必要とされてきています。製薬などライフサイエンス分野では、以下スライドのような活用場面が考えられます。

4つの要素… 4.Business:

中でも、最近は膨大な遺伝子情報を蓄積し、分析ビジネスへの参入が相次いでおり、ポテンシャルを感じている企業が多いようです。

2. ビッグデータに関する素朴な疑問にお答えします

普段ビッグデータのビジネスを展開する中で、良く受ける質問について紹介します。

BI(ビジネス・インテリジェンス)とビッグデータは何が違うのか?

先述したビッグデータ定義の4つの要素で比較すると、例えば従来のBI活用において構造化データ中心だったのが、ビッグデータ分析では画像など非構造データまで対象が広がっています。解析にはコンピュータリソースも必要ですが、以前は全体からサンプリングして表面的の解析が行われていたのに対し、ビッグデータ分析ではリアルタイムに、全数分析をやるなど方法も変わってきました。

ビッグデータの活用で、企業の業績は向上するのか?

2010年に実施された、MIT Sloan management Review と IBM Institute for Business Valueの共同調査によれば、業績下位企業の2倍以上の業績上位企業が、日常業務と将来の戦略の指針を得るためにビッグデータ活用・分析を使用していることを示しています。類似した調査結果は多く存在し、ビッグデータ分析が業績向上に有意に貢献すると認識されています。

オープンデータ活用はどこまで進んでいるのか?

日本国内でも、総務省や経産省など政府団体や地方自治体が旗を振り、公共データ・公益に値するデータを公開し、民間などが再利用できる施策・仕組みが整いつつあります。しかし、まだまだ発展途上段階であり、今後に期待したいと思います。

ビッグデータは(実際のところ)どういう状況なのか?

Gartner社の調査結果によれば、ビッグデータ活用に未着手の企業が全体の3割ほどを占め、実施している企業が13%、情報収集中、戦略策定中など実施にむけた準備段階の企業が59%と最も多く、本格利用までにはまだ時間がかかるとみられるものの、ビッグデータ活用が少しずつ増えているといえます。

3. ビッグデータ技術 最新動向

ビッグデータ・プラットフォームに関連するソリューション全体像

1. クラウドコンピューティングの普及

クラウドは、ビッグデータに関わらず急速に利用シーンが増えています。ビッグデータの蓄積・分析においても、必要な時にいつでも解析が行えるといったオンデマンドリソースとしてクラウドは有用です。また、 クラウド上に実装された統計など分析エンジン/アプリケーション利用においても、クラウドに置いた方が利便性が高いと考えられます。また、企業や業界を越えて様々なデータを収集する動きが高まっており、そのうえでもクラウド基盤のニーズは高まっています。

2.データベース技術の進化

大量のデータを処理するための並列分散処理や非構造化データの格納・処理を実現するHadoop/NoSQLといった技術の採用が進んでおり、従来のRDBとの共存が進んでいくものと思われます。

3.ストレージ技術の進化

単価は下がった、より高精度なストレージが利用でき、ユーザーにとってはより大量なデータを溜めやすくなってきたといえます。一方で、ビッグデータには欠かせないフラッシュストレージやスケール・アウト型ストレージといった高速かつ大容量データにも対応した様々な技術も浸透しつつあります。これは、ビッグデータ活用に対する追い風になっています。

4. 可視化技術の多様化・高度化

以前と比べてBI・データマイニングツールは、より使いやすく、よりデータを直感的とらえられるビジュアライゼーションの技術が高度になってきました。また、それを安価に実現するためのソフトウェアも選択肢が増えており、市場として伸びております。

4. 最後に

医師William Osler氏(1849-1919)の「Medicine is a science of uncertainty, and an art of probability. (医学は不確実性のサイエンスであり、確率のアートである。)」に喩えられるよう、医学は複雑な人体を対象としているため、不確実性をマネージすることが重要です。我々も医療や製薬業界においては、データの活用や分析において精通すべきですが、現状は課題の多い分野です。そのような課題に対し、CTCはCTCLSと共に、ICTソリューションを活用した解決策により皆様のお手伝いをさせて頂ければと考えております。

招待講演② ビジュアライゼーションで実現する直観的なデータ活用とは

Tableau Japan株式会社(以下、Tableau社)パートナーマネージャーの黒井 慶様より、Tableau社のビュジュアライゼーションツールTableauに関する製品紹介が、デモンストレーションを交えて行われました。<

以下が発表内容の概要です。

Tableau Japan株式会社 パートナーマネージャー 黒井 慶 様

Tableau Japan株式会社
パートナーマネージャー 黒井 慶 様

Tableau概要

2003年、Tableau Software(以下、Tableau社)が創業しました。後にThe Walt Disney Companyが買収したPixar Animation Studiosで、3D描画レンダリングエンジンを開発していた者が、Tableau社の創業者です。元々ビジネスインテリジェンス(以下、BI)ではなく、コンピュータグラフィックス(以下、CG)の開発に携わっていましたが、その中で動画のような容量の重いデータをサクサク動かす技術を追求した結果、CGを用いてExcelなどのDBと対話し、見る人にとって理解しやすいものにしたいという情熱が、Tableauを製品として生み出しました。これには、3Dチャートのようなビジュアルのかっこよさは追求するというよりも、あくまでも簡単で分かりやすいものを作るとコンセプトを貫きました。

Tableauは、全世界で23000社、日本では450社に導入されており、金融、小売り、教育機関など幅広い業界で利用されています。国内の某大手ファミレスチェーン店はTableauを採用し、数十億のPOSデータのリアルタイム分析に利用しています。以前は2日間かかっていたところ、クラウド上に最新のPOSデータを格納することで最新の情報が得られるようになり、さらにTableauを用いることで数十秒で仮説検証ができるようになり、仮説検証の質とスピードの向上に繋がりました。

別の事例では、国内の某大手企業ではTableau導入前は経営会議や営業会議でプレゼンするなど経営数字データをExcelで説明をしていたところ、疑問点があった場合はソースのデータに辿る必要があり翌週の会議まで持ち越していました。そのような課題は、Tableauを用いることで、その場で見せることができ、飛躍的に分析、会議や意思決定の効率が向上しました。

某ホテルでは、売り上げが下がった日の原因分析したところ、雪が降っていたことがわかり彼らを対象とした新規サービス構築のヒントが得られたという声も聴いています。

医療分野では、国立がん研究所の石川先生にてTableauが利用されている。厚労省プロジェクトの一環である当サイト(https://public.tableausoftware.com/profile/kbishikawa#!/)には、石川先生がDPCのデータを見やすく加工したダッシュボードをアップロードしており誰でも使えるようにしている。このように、国家プロジェクトにも採用された実績があります。

歴史を振り返るとBIの領域ではTableauは比較的新しい部類に入ります。BIツールの殆どが1970~1980年代に開発されたものが多く、当時はウォーターフォール型の開発手法が主流であり、要件定義、設計、実装してテスト、運用という流れのため、開発後の後戻りができませんでした。 一方、Tableauはアジャイルソフトウェアで、追加要件に対して開発する手法をとっています。それは、BIツールは様々な業界に用いられることから、要件が汎用的なのでベストプラクティスパッケージは作らないという意向に基づいています。

従来の分析では、現場がIT部門へ依頼し、IT部門が分析し作成したレポートを現場に返していました。これは数週間以上かかることも少なくありませんでした。しかし、Tableauが目指すセルフサービス分析は、IT部門への問い合わせが不要で、現場の担当者自身で分析が行える点が優れています。DBとリアルタイムで対話してレポートが作れます。Excel以外にもリレーショナルDBのMySQL、HadoopのClouderaなど様々なデータベースに対応しており、場所を選びません。また、オフライン分析も可能です。

Tableauが目指す、セルフサービス分析とは?

製品の仕様はシンプルであり、サーバ型とデスクトップ型がありますが、全ての機能がデスクトップに装備されています。サーバ型は、他部門と共有したい、また部門ごとにセキュリティ設定を変えたい場合に対応が可能です。

デモンストレーション

Tableauは、ドラッグ・アンド・ドロップなどデ全てGUIで操作可能な、ユーザーフレンドリーなソフトウェアです。このような、グラフィカルなビジネスインテリジェンスツールは、パラメータの多い数値データが発生した時に、人間の目視だけで処理できない場合に、威力を発揮します。

デモンストレーションでは、アメリカの各週における事務用品の顧客別購入履歴の分析事例を紹介しました。

Tableau デモ画面

誰が、いつ、何を購入したかといったデータがあればあらゆるレポートが作成可能で、ドラッグ・アンド・ドロップでピボットテーブルを容易に作ることができます。BIツールを用いた分析が、単に分析を容易にするだけでなく、データに隠された裏の情報を見いだすといった効果も見込めます。

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