イベント・レポート

CTC Forum 2016 ユーザー講演

東日本大震災の復旧・復興を支援
統合管理システムが情報の現場活用を実現

更新

システム統合と大量データ処理、さらに迅速な意思決定

  • クラウド
  • 製造
開催日
主催
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
講演
株式会社奥村組
株式会社奥村組 土木本部 土木統括部 環境技術室長 大塚 義一氏

株式会社奥村組
土木本部 土木統括部 環境技術室長
大塚 義一氏

奥村組は創業110年を迎える大阪の建設会社です。通天閣も当社の施工です。私自身は入社5年目までの設計業務を通じて解析やCAD、光ファイリングシステムなどに接してきました。さらに技術研究所ではロボットアームや3D CADを応用した研究開発に従事していたことから、IT技術にはその発展性と将来展望に期待していました。また最終処分場や不法投棄案件などの環境関連技術プロジェクトも担当した経緯から、東日本大震災の震災対応プロジェクトを担当しました。

本日は東日本大震災の復旧・復興支援において、大規模なシステム開発・運用を行った事例を紹介します。震災の本質は映像を見るだけではなかなか伝わりません。震災直後はさまざまな物が災害廃棄物として混合している状況でした。復旧作業はそれらを迅速かつ適切に処理するところから始まりました。処理量は1つの自治体単位で10~300万トンという規模で、可燃物と不燃物を選別しつつ、コンクリートや土砂を復興資材として有効活用できるような技術を適用しました。同時に被災地の活性化や地元雇用、関係機関との調整も大きな仕事でした。

東日本大震災のようなこれまでに経験したことのない事象に対応する業務を、安全・安心かつ迅速・円滑に実施するためには、IT技術が有効であることから、重量管理や運行管理など複数のシステムが適用されました。ただ、こうした個別システムをバラバラに管理していると、事業を確実・円滑に運営していくことは難しくなります。そこで必要になったのが、複数のシステムを統合して膨大な情報を迅速・効率的に現場で活用できるようにする統合管理システムです。

統合管理システムには大きく3つの特徴があります。「運行管理や物・場所・状態などの全数管理を行う複数システムを統合化すること」「大量に収集するデータを自動的に編集して加工できること」「リアルタイムで変化する業務要件の意思決定支援を行うこと」です。2011年から統合化に取り組み、4つのシステムを開発・運用してきました。まず災害廃棄物の破砕や選別、運搬および業務全般を管理する「災害廃棄物統合管理システム」では、クラウドを活用して情報の一元化を図りました。車両の運行をモニタリングすることに加え、さまざまな必要情報を一元管理することで、業務の進捗状況を管理・把握できるようにしています。また放射性物質の除染作業を管理する「除染統合管理システム」では、除染作業者の累積線量や出勤状況、除染状況や除染物の運搬推移などを可視化し、広大な範囲にわたる業務状況の管理・運営を行いました。さらに通常は発注者・コンサルタント・施工業者が分担して実施する事業を一体的に行ったCM方式の業務では、マネジメント業務の向上を目指し、進捗状況や文書を関係者間で共有してコミュニケーションを図るためのシステム「CMR統合化管理システム」を開発しました。

これらシステムの導入効果としては、提出文書などの自動作成機能による業務効率化で担当者の必要マンパワーを大幅に低減できたほか、伝票のペーパーレス化や事業の出来高検収のシステム化、事業関係者との迅速な情報共有も実現できました。

今後も、福島県などにおける放射性廃棄物を含む指定廃棄物や中間貯蔵施設でのさまざまな事業を安全・安心のもと迅速・円滑に対応する必要があります。そこでは大規模システムを開発・運用した実績が生きると考えています。さらに大規模災害やリニューアル工事などの事業にマッチする、さまざまな機能の統合化も目指します。震災からの復興は途上であり、さらなるオープンイノベーションを実現し、次のチャレンジに向け進んでいきます。

復旧・復興事業を円滑に進めるため、統合管理システムを構築。ポイントは「コミュニケーション向上」「業務効率化」「安心・安全」「省力化」

復旧・復興事業を円滑に進めるため、統合管理システムを構築。ポイントは「コミュニケーション向上」「業務効率化」「安心・安全」「省力化」

他講演レポート

2016年10月28日開催「CTC Forum 2016」の他講演レポートは、下記のリンクからご覧ください。

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