イベント・レポート

CTC Forum 2016 ユーザー講演

De-Carbonization(脱炭素化)社会に向けた
スマートグリッド実現への取り組み

更新

国の実証事業を通じてIoTを活用した予測技術を開発

  • クラウド
  • IoT
  • 開発
  • 公共/公益
開催日
主催
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
講演
東京電力ホールディングス株式会社
東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所 副所長 兼 技術開発部長 蘆立 修一氏

東京電力ホールディングス株式会社
経営技術戦略研究所 副所長 兼 技術開発部長
蘆立 修一氏

わが国の電力システムは、電力小売りの全面自由化や再生エネルギー導入の拡大、需要の能動化、スマートコミュニティによる分散化と広域化が進展しています。ただ事業の観点からは、省エネルギー化の進展により、電力需要は当面減少していく傾向にあります。特に人口減少に伴う減収は大きく、経年整備が増加するなかで値上げの必要性もあり、今後は、ある種のデス・スパイラルに陥る恐れがあると考えています。

またFIT(再生可能エネルギーの固定価格買い取り)制度の導入後、太陽光発電の認可量が急激に増加しました。これにより複数の電力会社では、系統容量の不足から太陽光発電の接続ができない状況にあります。加えて系統電力の安定化のため、太陽光発電の出力制御をせざるを得ない状況になりつつあります。

しかし、電力事業は衰退していくばかりではありません。2050年のわが国におけるエネルギーバランスを考慮すると、運輸部門や産業熱需要(ボイラーなど)、家庭・業務用の給湯・厨房需要など需要側の電力化を最大限に進めると、CO2排出量を4分の1程度まで削減できるという試算をしています。こうした「De-Carbonization(脱炭素化)」の流れにうまく乗ることで、再び電力需要を拡大することは十分に可能と考えています。

そのためにも再生可能エネルギー大量導入に伴う予備力/調整力の不足、需給/系統運用複雑化、余剰電力の発生、電圧逸脱、送電線容量不足といった課題に対し、広域連系・広域運用容量メカニズムの確立、再生エネルギー出力の予測・推定精度の向上、送配電の監視制御の高度化、再生エネルギーの遠隔監視・制御の実現、デマンドレスポンス・蓄エネルギー制御・送配電設備の増強といった対応策を進めていくことが必要です。

そうしたなかで加速しているのが、スマートグリッド実現に向けた取り組みです。

国が進めている「次世代型双方向通信出力制御技術実証事業(双方向通信)」「太陽光発電出力予測技術開発実証事業(PV予測)」「次世代送配電系統最適制御技術実証事業(スマパワ)」などの実証プロジェクトを通じて、現在は太陽光発電の出力制御の装置・システム開発、技術の確立を行い、余剰電力に対する準備が整ってきたところです。

そして、この取り組みをさらに推進していくのが「電力系統出力変動対応技術研究開発事業」です。東京電力は東京大学、電力中央研究所、東光高岳、CTCとともに系統シミュレーター・実証グループに所属、風力発電の出力予測技術、ランプ予測情報を活用した蓄エネルギーシステムの制御技術などの開発にあたっています。これらの予測技術の高度化のためには風力発電や気象データの収集が非常に重要であり、「E-PLSM(エプリズム)」というIoTデータ活用基盤を構築、東日本エリアにおける4万項目以上の時系列データを収集し、予測に活用しています。

また将来に備えて、アグリゲータによる需給コントロール手法、インターネットを活用した双方向通信機能を具備した太陽光発電の出力制御に取り組むほか、自律分散制御が可能なスマートインバーターの研究にも着手しました。

今後は、こうして確立されていくさまざまな技術を海外事業にも展開していくことで、産業競争力の強化や国際貢献につなげていくことが求められます。必然的に国内外の多様な業界のステークホルダーとのアライアンスが必要になり、当社もその一翼を担うべく貢献していきたいと考えています。
運輸部門や産業熱需要、家庭・業務用の給湯・厨房需要など需要側の電動化を進めることで、CO2排出量を約4分の1まで削減可能

運輸部門や産業熱需要、家庭・業務用の給湯・厨房需要など需要側の電動化を進めることで、CO2排出量を約4分の1まで削減可能

他講演レポート

2016年10月28日開催「CTC Forum 2016」の他講演レポートは、下記のリンクからご覧ください。

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