突撃取材レポート

絶対「エンドユーザ目線」主義!
Webサービスの性能モニタリングの未来

アルゴスサービスジャパン株式会社 代表取締役社長 佐藤 茂之 氏

アルゴスサービスジャパン株式会社
代表取締役社長 佐藤 茂之 氏

生活を取り巻く様々なオンラインサービス。それらのサービス満足度を決めるのは品揃えや操作性等以外にも、利用者が辿り着きたいゴールまでどれだけ早くアクセスできるか、スピードに着目したサービス性能が重要です。性能を見える化し投資のブラックボックスを解消する性能モニタリングとは?

今日、私たちの生活ではさまざまなオンラインサービスが活用されていますが、それらのサービス満足度とはどのように決まるのでしょうか。商品の品揃えや分かりやすいナビゲーション、検索機能の親切さも重要ですが、最も重要なのは利用者が辿り着きたいゴールまでどれだけ早くアクセスできるか、スピードに着目したサービス性能です。今回は、世界が認めたWebサイト性能モニタリングサービス「ARGOS」(アルゴス)の「第三者検証」、徹底した「実エンドユーザ環境(EUE)」、「エンドユーザ目線」へのこだわりについて、アルゴスサービスジャパン株式会社 代表取締役社長 佐藤茂之氏に話を聞きました。

目次

  1. ロボットが利用者の体感を数値化しサイト性能を見える化
  2. 単純な試験作業はARGOSのロボットに任せて作業の効率化
  3. UXの本質の半分は性能、不満の半分も性能の悪さに起因
  4. 「モバイルファースト」が浸透しないワケ
  5. 複数システムが連動するIoTのサービス品質管理は重要
  6. 投資のブラックボックスを解消するARGOS
ARGOS」(アルゴス)とは?
「実エンドユーザ環境(EUE)」においてWebサービスを常時モニタリングし測定するツールです。サービス性能とコンバージョン・売上げには深い関係があるため、企業は日々性能の最適化に時間と費用をかけています。ARGOSの第三者検証データにより、決定的な確証がないまま的外れな投資を続けることをやめ、効果的で適切な投資が行えます。

ロボットが利用者の体感を数値化しサイト性能を見える化

IT Spice編集部(以下、編集部):最初に、ARGOSのサービスを始めたきっかけや開発の背景について教えて下さい。

佐藤氏: 2010年にコミュニケーションアプリ「LINE」がまだ出始めの頃、親会社のNAVERの1事業部がLINE開発テスト時の品質管理ツールとして開発したソフトウェアがARGOSの前身でした。その後、2台の携帯端末間でメッセージ送信やスタンプ送信時におけるパフォーマンスを測定できるように機能をカスタマイズしたり、当時先発だったWhatsAppやKakao Talkといった競合アプリの挙動も監視して機能の充実とパフォーマンスの改善に利用したりしてきたことが、その後ARGOSの最大の武器となりました。
こうしたソーシャルサービスはタイム・トゥー・マーケットが勝負のため新しい機能を提供するスピードが速く、バージョンアップする度にサービス性能試験が間に合わないことが常態化しています。サービス性能試験は提供する全ての機能を人海戦術で評価していくものですが、時間とマンパワーに限りがある場合100%網羅することは事実上不可能です。そのため、どこまで妥協してサービス開始につなげるかが大きな決断となるのですが、近年は競合他社との競争が激化していることから、バグが残っていたとしてもまずはリリースし、その後オンライン経由でパッチ適用やアップグレードを行う手法が一般化しているのです。

それでもサービスベンダー側がバグを見つけて改修し続ける分にはいいのですが、もし利用者が先に見つけてしまったらどうなるでしょうか?

編集部:利用者はそのサービスの質に疑問を抱き、顧客満足度がかなり低下してしまうかもしれません。

佐藤氏:そうですね。でも、それを避けるためにどうにかして利用者よりも先にバグを見つけなければなりません。そこで、ユーザー目線で、かつ利用者と同じ環境でサービスを使って利用者よりも先に不具合を見つける仕組みを作るため、ARGOSは“ソフトウェアロボット”として誕生しました。 ARGOSはEUE(End User Environment;実際の利用者環境)と全く同じ環境に設置された「ARGOSプローブ」と呼ばれる一種のソフトウェアロボットを活用して、サードパーティツールやCDN(Contents Delivery Network;ウェブコンテンツを配信するのに最適化されたネットワーク)などの挙動を含め、利用者の実際の体感性能を数値化してWebサイトの性能を見える化します。

図1

図1 ARGOSのデータを各フェーズで解析することにより、現状のWebサービスを構成する要素の課題を数値化して比較することが可能

編集部:ソフトウェアロボットですか……。具体的にはどのような動きをするのですか?

佐藤氏ARGOSロボットをスマホやPCなどにインストールしておき、試験開始の指示を与えると、そのロボットが自分でサービスを立ち上げ、一般ユーザーと同じ条件でリアルに操作し、各種の機能を網羅する形で動作させてアプリケーションの不具合を隈無く探します。例えば、あるリクエストがダウンロードされるまで通常は1秒かかるところ、機能更新後にサービスを再リリースしたところ1.2秒かかったとしたら問題としてアラートをあげ、その内容をARGOSのサーバーに上げることで、品質管理担当者が不具合を可視化できることになります。

図2

図2 ARGOSのソフトウェアロボット(ARGOSプローブ)による端末ごとの測定スキーム

LINEのようなソーシャルサービスは昔から“パーペチュアルベータ”(永遠のβ版)として常に改良を加え進化し続ける宿命にあります。ただそこには、更新がある度に不具合が含まれる可能性が高いというリスクを抱えた進化でもあり、それを効率良く発見していくことがARGOSの使命になります。

単純な試験作業はARGOSのロボットに任せて作業の効率化

編集部:では、ARGOSはどのような工程で活用されるのでしょうか?

佐藤氏ARGOSの使い道は主に3つに分かれます。1つは開発時。新しい機能が搭載されたアプリケーションやサービスが開発された時に、正しく動作するか否かを試験する際に活用されます。近年は、ありとあらゆるサービスがスマホを重要視して開発されていますが、スマホは機種も多様で、毎年数十機種が新製品としてリリースされる上に、使われるネットワーク環境も不安定で、試験の網羅度を上げることが非常に難しいのです。人がやるべきところは従来通り人間が行うのですが、人がやらなくてもいい単純な試験作業などはARGOSのロボットに任せることで作業が格段に効率化するとともに、人間が関わることによるケアレスミスも排除でき、高精度のテストが実施できるようになるのです。
2つ目はモニタリング時。例えばEC(電子商取引)では「ショッピングカートに入れる」とか「購入する」などの「課金」という機能モジュールがありますが、それがいつも完璧に機能するとは限りません。1000回のうち何回不具合が発生するかを正確に把握するために、従来は全て人間が根気よくテストしていたのですが、非常に大きな負担となっていました。それをARGOSに任せることで人間は神経を使う作業から解放されます。
また、申し込みページまでお客様を呼び込めても、最後の登録場面で重い遅延が発生したら申し込み(購入や登録含む)そのものをやめてしまうかもしれないし、二度とそのサイトを利用してもらえないかもしれません。そのため、サービスを客観的にモニタリングして現状を把握し、原因を可視化することで、どこを直せば離脱を回避できるのかを分析していくわけです。

UXの本質の半分は性能、不満の半分も性能の悪さに起因

佐藤氏:3つ目は品質向上のためのデータ取得。ARGOSが収集したデータを使って次にどの部分に投資をしていくかを判断します。Webサイトの構成要素はどれも全く同じで、遅延が発生する場所もフロントエンドか、バックエンドか、あるいはインフラかに限られます。仮にインフラが悪くないのにインフラが悪いと思い込み、コストをかけてサーバー増強やネットワーク帯域の拡張をしても改善しなければ投資がムダになります。実際のデータから要因を正しく把握することは非常に重要なのです。また、データがなければどれだけ販売機会損失を被ったのかも経営層は理解できません。

さらに、UX(ユーザー体験)を論じる時、日本企業の多くはデザインの良さやコンテンツのつかいやすさなどを重視しがちですが、UXの本質の半分は性能です。ユーザーの不満の半分も性能の悪さに起因しています。デザインはいくら直しても好き嫌いが生じますが、性能は高めて不満を述べる人は少ないでしょう。ARGOSは性能をデータ化し、客観的に分析できるようにします。

大手Webサービス会社が発表した数値によると、100ms(1ms=1000分の1秒)の性能向上で1%の売上アップが見込めるという調査結果もあります。また、他の企業の調査では、500msの改善で20%のトラフィック増になったとか、1秒向上で7%売上げが増化したなどのデータもあります。ただし、企業の多くはLANでつながっている環境=ネットワークが安定しているPCでの利用を想定していますが、一般の人はモバイルの方がPCよりも速いと思い込んでいるため、モバイル環境の性能を手厚く引き出すことが今後必要になってくると思われます。

「モバイルファースト」が浸透しないワケ

編集部:多くの企業のWebサイトを測定されてきた貴社にお訪ねしますが、最近の企業Webサイトのコンテンツや技術におけるトレンドや課題はどのようなものとお考えでしょうか?

佐藤氏:近年、コンテンツはリッチになり、画像も高精細化している中で、ネットワーク環境の条件も向上していることから、コンテンツをてんこ盛りにしても大丈夫だというある種の甘えや間違った安心感があります。それがサービス品質のボトルネックになる可能性があります。
また、PC向けWebサイトよりもスマホ向けモバイルサイトを第一に考えてサービスをデザインしていくという「モバイルファースト」の発想も唱えられてきましたが、まだ浸透しているとは言いがたい状況です。その理由のひとつとしては、ARGOSのような測定システムがないため、モバイル向けに投資する根拠が得られていないことがあると思われます。モバイルファーストの実現に向けて、データを分析しモバイルを中心としたサービスを再デザインしていくことが必要です。
しかし、現状は、運用や開発が安いという理由から、PCのコンテンツをまるごとモバイルに送るための「レスポンシブデザイン」が氾濫してしまい、全く逆の状況になっています。スマホ向けにWebサイトを最適化するには投資が伴いますが、投資の根拠を経営層に見せることができないためにコストが安い提案に偏っているのでしょう。若い人たちの中にはPCを持っていない、使ったこともないという人も増えており、安直にレスポンシブデザインを進めることはさまざまな副作用やネガティブな側面もあると思います。

複数システムが連動するIoTのサービス品質管理は重要

編集部:そうした課題を解決するため、ARGOSは特に「エンドユーザ目線」を意識したサービスを展開されているのですね。

佐藤氏:その通りです。LINEアプリの開発においてLINEから示された要求仕様には2つの要件がありました。前述した通り、1つは利用者環境と同条件の測定と統計分析。もう1つが競合他社のサービスも全く同じように測定することでした。そのため、測定対象のサービスにエージェントソフトやタグ、コードなどは利用しません。そうしないと競合他社を同条件で測定できないからです。ARGOSは完全に独立したロボットとして存在しているので、LINEのほかWeChatやWhatsAppも全く同条件に環境測定できたのです。

WebサービスやWebアプリケーションを改めて見ると、仮想環境やサードパーティツールなど自分達で品質管理できないツールをいかに無防備に使っているかに気付きます。レコメンデーションツール、EFO(エントリーフォームの最適化)、ショッピングカート、検索エンジンなど、全て他社の技術であることが少なくありませんが、それらを包括的に監視・管理する場所は、もはや利用者環境しかありません。ARGOSは、リアルデバイス、リアルネットワーク、リアルユーザー環境で測定する世界でも数少ないサービスであり、ネイティブアプリを送信側と受信側の対抗、つまり2台のロボット同士が同期して測定できる技術を持っている世界で唯一の存在なのです。

編集部:ロボット・AI(人口知能)といった自動化運用に関するキーワードをよく耳にするようになりました。ARGOSもまさに自動化に該当すると考えますが、今後この自動化サービスをWeb以外の分野に展開することはお考えでしょうか? またその場合は、どのような展開を検討していますか?

図3-1 左から リアルタイムダッシュボード、ウォーターフォールチャート、レスポンス分析 図3-2 左から アクセス分析、スクリーンショット、ドメイン分析 図3-3 左から プローブ別測定、ボトルネック分析、アラーム機能 図3-4 左から レポート機能、競合分析、コンサルティング

図3 ARGOSの基本機能群

佐藤氏

ARGOSデータを見せながらWebサービスの現状について熱心に語る佐藤氏

佐藤氏:AIやマシンラーニング(機械学習)には着目しています。現在、ARGOSのロボットにはシナリオ設定が必要です。シナリオを作るというのはやはり人間の作業が発生することになり、人の代わりに働くロボットとして不完全ではあるのです。それを将来的にはAIやマシンラーニングの技術などを活用して、ARGOSのロボットがWebサイトのサービスを見ただけで自らシナリオを設定し、自動的に性能測定を行えるような方向で開発を進めようとしています。それにより効率化が加速し、人間はよりクリエイティブな業務に注力できるようになるので、サービス品質のさらなる向上と大幅なコスト削減が実現できると思います。

その先に、当社が目指しているのがIoTへの対応であり、その世界でのサービス品質管理を実現したいと考えています。今、IoTはセンサーやコネクティビティなどのアプリケーションにばかり注目されていますが、品質管理やトラブルシューティングの側面はあまり考えられていません。しかし、それは地味ですが非常に重要な部分だと思うのです。複数のシステムが連動して動くIoTの世界では予想もしないことが起こるかもしれません。例えば冷蔵庫がセンサーと通信機能を持ってスーパーマーケットと連携し、不足の品を自動で発注する時代になったとします。ある日突然、牛乳が数十パックも届いたら、いったい誰にクレームをすればいいのでしょうか。スーパーの店長? 冷蔵庫メーカー? それとも物流業者でしょうか。複雑でプレーヤーが多いがゆえにIoTサービスの品質管理は重要で、サービス性能試験はより緻密で不可欠になると思うのです。

投資のブラックボックスを解消するARGOS

編集部ARGOSの今後の発展、およびアルゴスサービスジャパンさんの今後の活動予定について教えて下さい。

佐藤氏ARGOSは、ネットビジネスの品質管理を簡単にすること、つまり現場の担当者から経営者まで、立場やスキルの異なる全ての関係者が容易に理解できるツールを目指しています。
ある企業の経営者は、自社がITの知識が少ないことを認識しているためSIerや外注を活用してきましたが、常に“外注に騙され続けてきた”という認識を持ってきたといいます。それはとても不健全なことですが、それを感じている企業は少なくないでしょう。だからこそ、文系の経営層にも納得していただける見える化のツールを提供したいのです。ふさわしい投資によって本当に有効な仕組みを作っていくことができるのです。
管理者と技術者が現状を共有することによって改善点が明確になります。それにより、根拠の明確な投資が実現します。サービス事業者は適正コストに納得して予算を計上し、経営陣の判断も円滑になります。その鍵となるロボットを活用し、サービス品質管理を推し進めることによって投資のブラックボックスが解消され、健全な市場が発展し、業界全体が活性化します。それがARGOSのミッションだと信じています。

編集部:健全な投資のためのキーワードが可視化なわけですね。その実現に向け、販売協業をするCTCSP/CTCグループ対して、期待することがありましたらご意見をお聞かせ下さい。

佐藤氏:CTCSPとCTCグループが持っているお客様層の厚さと、そこに連綿と構築されてきた信頼の歴史を考えれば、この業界で考え得る最高のパートナーに出会えたと思っています。また、これまでのIT投資を可視化するという、ある意味ITプロバイダーとしてはセンシティブな部分でARGOSの販売を担っていこうという心意気は非常に勇気のある決断だったと思いますし、敬意を感じています。今後もその意思を貫いて、一緒にこのWebサイト性能モニタリングサービスの価値を日本に広めていっていただきたいと願っています。

編集部:今後、当社もARGOSのプロモーションなどに力を入れていく考えですので、IT業界の健全な発展のために、一層の協力関係を構築できたら嬉しく思います。本日はありがとうございました。

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