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持続可能な社会の実現に向けて 未来に求められる「豊かさ」とは

持続可能な社会の実現に向けて 未来に求められる「豊かさ」とは

CTCグループは「明日を変えるITの可能性に挑み、夢のある豊かな社会の実現に貢献する」ことをミッション(使命)に掲げています。これは「持続可能な社会」の実現を目指すSDGsの考え方にも通じるもので、CTCグループが本業を通じて果たすべき重要な役割です。

時代が急速に変化し、「豊かさ」に対する価値観が多様化していく中で、先端技術を担う企業として求められることは何か。

仏教とテクノロジーの観点からそれぞれ有識者をお迎えしてダイアログを開催しました。

「豊かさ」とは

本日は、大阿闍梨(だいあじゃり)の称号をお持ちで企業や教育機関など国内外で広く講話活動を展開されている僧侶、塩沼 亮潤氏と、通信工学をはじめコンピュータサイエンスの分野でテクノロジーの発展に長く寄与されてこられた早稲田大学名誉教授、後藤 滋樹氏にお越しいただきました。

まずは、本日のテーマである「豊かさ」についてお話を伺っていきます。それぞれのお立場から「豊かさ」とはどういったものであるとお考えでしょうか。

塩沼 亮潤氏

仙台市・秋保 慈眼寺 住職
大峯千日回峰行大行満大阿闍梨
塩沼 亮潤氏

塩沼氏:人それぞれに価値観があり、お金や物が豊富にあることが必ずしも心の潤いにつながるものではありません。では本当に心が潤っているというのはどのような状態を指すのか。これは私が仏門に入るきっかけになったテーマでもあります。私たちは人との関わりの中で生きています。相手の体調やその時の自分の機嫌など、誰かと相対する場合には相手と自分のことを常に考えなければならない。そんな中で、心と心が通じ合っていることがお互いに分かると心の潤いを感じますよね。そういう相手がいるだけでも辛いときや苦しいときに頑張る力になります。
そういう意味では、目の前の人が今何を求めているのか、何をしたら喜んでもらえるのかを察して動く、というようなことが自然にできることも「豊かさ」と言えるのかもしれません。「一を聞いて十を知る」という言葉があります。私も小さいころに母親から厳しく言われて育ちました。感情や人格が整う年頃に身についたことはその人の言動の軸となり、人と心を通わせる基礎になります。相手のことや、相手の幸せを考えて行動することで、心が通じ合う体験をする。その積み重ねが心の潤い、豊かさに通じるのではないでしょうか。

後藤 滋樹氏

早稲田大学 名誉教授
一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)理事長
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)研究開発戦略専門調査会 会長
後藤 滋樹氏

後藤氏:人間が動物と大きく違うのは人と人とがつながって社会を構成している点です。そして、その間をつないでいるものが情報通信です。
科学技術の発展とともに情報通信の手段も高度化してきました。社会が本当の意味で豊かになったのかと言えばそうとも限りません。グローバル化が進んだことで国家や地域の経済が別の地域の影響を受け、どちらかが豊かになったらもう一方が貧しくなる、といった現象が起こり得るようになりました。情報通信も同じで良い面と悪い面が必ずあるということです。平和にも戦争にも使える技術をどうやって皆の豊かさのために活用できるか、それは塩沼先生がおっしゃるように人と人とが心を通わせることが重要なのではないかと思います。

テクノロジーで「豊かさ」を実現するために

技術の使い方が問われているとのお話をいただきました。「豊かさ」を実現するために、ITや情報通信の分野を担うCTCグループには何が求められているとお考えでしょうか。

里見:豊かな社会であるためには、安全・安心であることが前提です。常に警戒心を持たなければならない社会では豊かさは感じられません。CTCグループは情報通信に長年関わってきましたし、今後も社会を支える裏方として役割を果たしていくことになります。AIやサイバーセキュリティのように負の側面が指摘されている技術も取り扱っていますが、負の側面を前向きに改善する仕組みをきちんと提供できれば安全・安心な、豊かな社会に貢献することにつながります。
お客様やその先のエンドユーザーに弊社が提供した製品等を利用した際に喜んでいただける仕事をする、という考え方が大事だと思います。つまり、お互いが喜びを分かち合う、価値観を共有することが大切だということです。

松島 泰

取締役 兼 副社長執行役員
社長補佐 (兼) 経営管理グループ/
グローバルビジネス管掌役員
(兼) 経営管理グループ担当役員
(兼) CFO (兼) CCO
松島 泰

松島:私は企業経営の視点から、常に、ほかと「比べる」ことが身についています。他社と比べて利益はどうか、より働きがいのある会社にするにはどうすべきかと。しかし、「豊かさ」とか「幸せ」を他人と比べすぎるのはどうでしょう。お金などの物質的なものではなく、塩沼先生が言われたように心と心が通じ合っていること、そしてそれが分かることで心の潤いを感じる、即ち、人と人がつながることが豊かさにつながるのではないでしょうか。
ITシステムを裏方として支え、そして、人と人、心と心をつなぐ、これをしっかり続けていけば豊かな社会の実現に貢献していけると思います。このように「支える」こと、「つなぐ」ことにより「豊かさ」を実現していく、そんな会社を目指したいですね。

塩沼氏:先ほど「一を聞いて十を知る」というお話をしましたがAIが進化する方向性はまさに「一を聞いて十を知る」ということなのだと思います。ただし、AIがそこに到達したとき人間は何もしなくてよくなるのかと言うと、それは違います。AIが進化するためには、開発し使う側の人間も進化していく必要があるのだと思います。

後藤氏:人間はAIを進化させるのに適した能力を持っていると思います。人間はほかの動物と違って生まれてから後天的に学習することが圧倒的に多いですよね。だからこそ成長の過程で「一を聞いて十を知る」ような感覚や、倫理観を身につけることができます。AIに倫理観を教えることができるかどうかは人間にかかっているのです。

塩沼氏:人間が人間として存在することに価値があるということはこれからも変わりません。AIはそれを補うものとして存在するのであり、我々人間が目的をはっきりと自覚しなければならないと思います。何のために開発し、何に使うのか。これは特定の人だけに決定権があるのではなく、宗教界も経済界も政治も、それぞれが声を上げていかなければならない。目的が手元で1ミリでもずれたら、100メートル先では大きく方向が違ってしまいます。人と技術が共存するその先の目的をずらしてはいけない。そうでないと、将来全く違った方向に進んでしまうと思います。

里見:倫理や目的を明確にすることなく技術を活用しようとすることには、私も反対です。例えばAIに感情認識の学習をさせる研究が進んでいますが、これはお年寄りが何を言っているのか聞き取れないときに、AIにその人の言葉の特性を分析して認識させるといった目的があるからです。こうした具体的な活用方法を想定せずやみくもにAIを導入しようとすれば、社会に混乱を招くことになります。基礎研究とそれを応用する、あるいは社会に適応する際には、それなりの十分な意味づけや、役割を明確にして利用する必要があります。

後藤氏:もう一つ指摘させていただきたい。今後は企業や研究機関が持つ情報をオープンに共有して集合知として活用することになると思うのですが、その際になるべくネガティブな情報を隠さずに出してほしい、ということです。例えば、サイバー攻撃を受けてしまった、といった情報は出したくないものです。しかし、そういった情報こそが学習のためには価値を持ちます。情報提供者の損になることなく、活用できるような仕組みを構築することも求められていると思います。これは目的を明確化することと同様に、テクノロジーを担う皆さんに考えていただきたいことです。そういうわけでやはり人と人とが心を通わせ合い、信頼し合う関係性が重要ということになるわけですね。

「夢のある豊かな社会」を担う企業として

企業には今後ますます自社の成長だけでなく、社会共通の目的や課題を念頭に置いた企業活動が求められます。テクノロジーを通じて「豊かさ」を実現しようとするCTCグループは、今後どうあるべきでしょうか。

塩沼氏:もちろん企業ですので利益を出さなければならないでしょう。しかし、他社との比較や前年度との比較ばかりを気にして急ぐのではなく、ゆっくり成長していくのが良いのではないでしょうか。「自利」と「利他」の両方が円満に回っていかなければなりません。皆さんの会社に限らず社会全体が、少しずつ緩やかに長く成長していくのが一番なのではないでしょうか。
ただ、向上心も忘れてはならないと思うのです。私は難しい修行を経験して大阿闍梨の称号を得ましたが、修行を終えてみて感じたことは、仏門を志した19歳のころの情熱のまま、常に謙虚で素直に人生最後の一息まで生きていたいということでした。自分が置かれている環境で常に成長し、新しいことに挑戦したい。皆さんにもそういったエネルギーを持ち続けてほしいと思います。

里見 英俊

フェロー 技術戦略室長 (兼) サービスデザイングループ担当役員補佐
里見 英俊

里見:企業が成長するためには人も成長しなければなりません。その成長の度合いはどの程度が適切なのか、という点については経営陣だけでなく社員とも合意形成していかなければならないと考えています。ビジネス面でも社会に貢献でき、適切あるいは最適になるような提案ができる仕組みについて、同様に社員の皆さんと一緒に考えていこうと思っています。

後藤氏:仕事というのはいくら頑張ってみても一人でできることには限界があるわけです。皆で分担して自分で担当したパートの結果を、ポジティブなものもネガティブなものも情報として集結させる。これは人間が担うからこそできることです。人と人が信頼し合う社会をITを使うことでより強固にすることができます。それに今までは難しかった、遠く離れた人とお互いに手応えを与え合うようなこともできます。信頼できる、信頼し合える社会を作るために皆さんの仕事が果たす役割は大きいと思います。

松島:CTCグループでは本業を通してSDGsに貢献することが重要だと考えています。SDGsを目的化するのではなく、自然体でビジネスを行う中で17あるゴールのどれかに該当する活動ができていることが理想です。SDGsは「豊かさ」につながる目標でもありますので、これを意識してビジネスを行うことは意義のあることだと思います。
伊藤忠グループのルーツである近江商人の心得に、「三方よし」があります。「会社」と「社会」は漢字からも分かるように密接に結びついていて、会社は常に社会のことを考え全てのステークホルダーの「豊かさ」実現に貢献できる経営をしなければなりません。これが企業にとっての倫理・理念なのだと思います。「夢のある豊かな社会」の実現に貢献し、当社が持続的な成長をするために、有識者の皆様からいただいたお話を心に刻み経営にあたりたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

  • 記事内のデータや組織名、役職などは、2019年8月時点のものです。
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