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|特集|CTCが新たな中期経営計画を策定 2020年を見据えたITサービスの姿とは

絶え間ない変革を断行し、事業拡大に挑む

桔梗原
CTCの中期経営計画「Opening New Horizons」における「外に出る」とは、端的に海外に出ていくという意味でしょうか。特に重視するエリアはあるのですか。
菊地
グローバル化に伴い、様々な日本企業が海外に進出しています。「外に出る」の重点項目の1つは「海外事業の強化と拠点の拡充」で、今後の成長に欠かせない要素です。また、新たなビジネス領域の開拓という意味で「オープンイノベーション型ビジネス開発への挑戦」も掲げています。
海外拠点の強化としては、高い市場成長率が見込まれるASEAN地域をグローバル展開の重要エリアとして位置付けています。既に現地企業や日系企業のお客様にインフラを中心としたSI事業、運用・保守サポートサービスなどを展開しています。2017年4月には新たにインドネシアに進出し、同年11月にタイにあった合弁会社も100%子会社化しました。マレーシアやシンガポールの拠点も含め、成長が期待できるASEAN地域を“面”でカバーしてサービス提供できる体制を整えたわけです。今後は、クラウドやセキュリティなどのサービス型ビジネスの提供に加え、インドネシアでのビジネス拡大にも注力していきます。
菊地
桔梗原
ASEAN地域に注力する一方で、北米地域でも投資を行っていますね。
菊地
はい。北米地域では、AI、IoT、セキュリティなどの先端技術調査や関連商材の発掘に加え、金融機関向けシステム開発や保守・運用、インターネット事業者向けの大規模インフラ基盤構築などを手掛けています。今年度に入り、米国のSI企業SYSCOM (USA)に出資し、北米の日系企業に対するITサポート体制を強化しました。また、英国のSI企業Newton Information Technologyと欧州でのITサービス事業について協業も開始しました。北米、欧州、ASEAN、日本が連携してグローバルレベルでお客様を支えていきます。
今後は、調査研究の機能も強化します。欧州ではドイツ、フランス、イギリスなどで新しい注目すべき技術やビジネスがあり、IoTやネットワーク関連でイノベーションが活発なロンドンにR&D拠点を設立します。最近盛り上がりを見せる中国・深センでもR&D体制を年内に整える予定です。こうしたグローバルなネットワークを活用して新しいお客様の開拓や、ビジネスの創出を積極的に推進するとともに、海外拠点間の連携強化や人材交流にも注力し、ワールドワイドな視野でビジネス拡大を進めていきます。

オープンイノベーションを積極的に支援

桔梗原
オープンイノベーション型ビジネスの強化では、どのような取り組みを推進していくのですか。
菊地
昨年、企業や組織の協業によるオープンイノベーションを促進する組織として「未来技術研究所」を新設しました。
未来技術研究所では、複数の企業や団体が協業によってビジネスを形にしていく際のオープンイノベーションのプラットフォーム「CTC Future Factory」を提供しています。具体的には、コミュニティ・イベント、業界連携・マッチング、プロトタイプ開発、イノベーションのためのスペースなどプログラムを備え、お客様を含めたオープンイノベーションにかかわる一連の取り組みをトータルにサポートするものです。
桔梗原
2017年10月に開設したイノベーションスペース「DEJIMA(デジマ)」は、お客様と未来のアイデアを創出するための専用スペースとして、クラウドサービスを活用した開発環境のほか、大型ディスプレーやミートアップにも対応した360°対応のプレゼン環境など、リーンスタートアップを用いたプロトタイプ開発が行える環境を整備しています。設立以来、約110件のミートアップやワークショップを実施しており、イベント以外でも約2000名の来場者がありました。今後は異業種とのコラボレーション体制を拡充し、さらに新しいビジネス領域に挑戦していきます。
また、オープンイノベーションによる新規事業創出のスピードアップを目的に、コーポレートベンチャーキャピタル「CTC Innovation Partners」も設立しました。資金の提供と事業への参画を行うことで、有望なスタートアップ企業の成長を支援するとともに、お客様との合弁事業を推進します。既に4件の投資を実施しており、今後もさらなる事業領域の拡大に挑みます。

常に自らを見つめ直し、絶え間ない変革を

桔梗原
最後の「足元を固める」は、経営基盤の強化に向けた施策でしょうか。
菊地
その通りです。お客様のビジネスをしっかりと支え、私たち自身も成長していくためには、盤石な経営基盤を築くことが必要です。お客様のデジタルトランスフォーメーション、ビジネスイノベーションを支援する企業である以上、我々自身も常に自社を見つめ直し、絶え間ない変革を行っていかなければなりません。
「働き方変革」では、生活や人生の中に仕事を位置付けていくという「ワーク・イン・ライフ」という考え方のもと、社員の健康と働きがいに資する様々な取り組みを行っています。始業時刻を7時から10時の間で繰り上げ繰り下げを可能にするスライドワーク、在宅勤務やテレワーク、モバイルオフィスなど施策に加え、2014年度から本格的に展開してきた朝型勤務の推奨を含め、働き方の意識の変革が着実に成果を上げています。健康の点では、近年治療法の進展がみられる「がん」について、予防から早期発見、医療支援までをカバーし、がん治療と仕事の両立を支援するCTCグループ全社員向けの制度を設けました。
また、今まであまり意識してこなかった事柄にも工夫し、柔軟な発想力や表現力を養うための施策として、10月からはジーンズやスニーカーを含めた形に服装の枠組みも広げています。
お客様の声からサービスの改善につなげるCS向上の取り組みに尽力するなかで、従業員満足度の向上や、一人ひとりのモチベーションアップは重要なものと捉えています。
菊地

挑戦しながら成長し続けることが重要

CTCの2020年度の定量目標

CTCの2020年度の定量目標

「収益力強化」「注力ビジネスでの成長」「資本効率向上」それぞれで「3・6・12」という数値を掲げ、その達成に向けた様々な施策が動き出している

桔梗原
今回の中期経営計画では具体的な定量目標を掲げられています。このところCTCは過去最高業績を更新し続けていますが、新しい定量目標のポイントはどこにありますでしょうか。
菊地
定量目標の1つとしてROE 12%以上を掲げています。目標達成のためには、株主資本の増加をコントロールしながら、利益目標の300億円を確実に達成することが必要です。
資本効率の向上施策の1つとして株主還元があり、今回、配当性向の目安を従来の40%程度から45%程度に引き上げました。
桔梗原
2020年度以降、さらに長期ではどのような方向を目指していくお考えですか。
菊地
「Opening New Horizons」の実現に限らず、私たちが将来に向けて取り組むべきことは「挑戦しながら成長し続ける」ことだと考えています。CTCというコーポレートブランドの由来はスローガンである“Challenging Tomorrow's Changes”ですが、まさにそれこそが当社の原点なのです。
菊地
様々な挑戦においてCTCが担う使命は「明日を変えるITの可能性に挑み、夢のある豊かな社会の実現に貢献する」ことです。「豊かな社会の実現」は、国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)と通じるもので、お客様と共に歩みつつ、企業市民としての責任を果たして社会的な課題の解決に取り組んでいきます。

編集後記

ここ数年、情報サービス業界は旺盛なIT投資需要に支えられ、堅調に推移している。その中でもCTCの好業績ぶりは目立つ。菊地社長も「環境変化に向けて展開してきた、様々な施策や方向性が間違っていなかった」と自信を深める。だが、手放しで喜んでいないのは、大きな変革期に差しかかっていることを見通しているためだ。

クラウドやIoT、AIなどデジタル技術が進化し、デジタルトランスフォーメーションの潮流が本格化してきた。要件定義に従って納期通りにシステムを構築することがSI企業の価値だったが、ITを使って顧客と共にビジネスを創出していくことが求められるようになる。中期経営計画の中で「上に広げる」というスローガンを第一に掲げ、重点顧客とのデジタルビジネス共創に挑戦することを打ち出したのは菊地社長の危機感の表れだろう。ほかにも、リカーリングビジネスの拡大や海外事業の強化、オープンイノベーション型ビジネス開発の推進など、中期経営計画では意欲的な重点テーマが並ぶ。これらをしっかりと実現できたとき、CTCは「New Horizons(新しい景色)」を見ることができるとともに、デジタル時代のSI企業像を示せるのではないだろうか。顧客企業にとってはこれまで以上に頼もしいパートナーが誕生することを意味する。さらに今回、印象的だったのは菊地社長のスーツの襟にSDGsのバッジが輝いていたこと。持続可能な社会への貢献を目指すCTCの強い意志を感じた。菊地社長の今後の舵取りに注目したい。

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