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コラム IT春夏秋冬

指揮者の仕事

年始の挨拶回りをしている間に2月も中旬になってしまい、「明けまして」というより「今年も残すところ10ヵ月余りになりまして」という方がふさわしいような時の流れの速さです。

とは言いながら、社長業を6年近くやった経験からすると、1月から6月までの方がまだ時間の流れは遅く、株主総会が終わったあたりから急に速くなるというのが実感です。イベントが詰まっている方が時間の密度が濃いということなのでしょう。

先日、このBest Engineの企画で、指揮者の西本智実さんとお会いしました。あり姿がなんとも魅力的な方です。何百年も前に作られた設計図(楽譜)を元に目に見えない建造物を造るのが指揮者の仕事、なのだそうです。

「鑑賞する人間の心を揺り動かすものを作り上げる人」が芸術家だとすれば、同じ芸術家でも、音楽家、特にクラシック音楽に携わるアーティストというのは、画家や作家とややあり方が異なっているように見えます。

絵画も小説も、画家や作家が生み出したものを、鑑賞者が直接目にして感じるものであるのに対して、例えば交響曲のようなクラシック音楽は、作曲者が生み出したものを指揮者が再定義する。そしてオーケストラが実際に音を出して、それを鑑賞者が聴く。複層的な構造です。

同じベートーベンでも、指揮者やオーケストラが違えば、聴く人の感じ方はずいぶん違うと言います。フルトヴェングラーだ、カラヤンだ。ベルリンフィルだ、ウィーンフィルだと。私は聴き比べを楽しめるほどではありませんが、一方で、生で良い演奏を聴くのが音楽の格別の楽しみ方だということは知っています。

さて、全く違う世界のことではありますが、私たちの仕事もこの音楽の営みに似ていると言えなくもありません。会社というオーケストラを経営者が指揮する。場面は常に生。とすると、設計図である楽譜に当たるのは、理念や経営計画ということなのでしょうか。そう言えば、その経営計画をまとめる季節がだんだん近づいてきました。

今年も皆様に、「何か発見」を提供することができればと願っています。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
代表取締役社長
菊地 哲

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