ゴルフダイジェスト編集 心に勝つための実戦ゴルフ学
スポーツ経験や日常生活に上達のヒントがある
取材協力/チームセリザワゴルフアカデミー
いくら練習してもゴルフがなかなか上達せずに「才能がないのでは」と思っている人も多いのではないでしょうか。
ゴルフ上達には、練習はもちろん大切ですが、これまでのスポーツ経験を生かしたり、日常生活の中でスイングのフィーリングやリズムを身につけたりすることができるのです。
クラブを振る練習だけではない、上達のヒントについてお話ししましょう。

芹澤 信雄
1959年生まれ 57歳 日本プロマッチプレー優勝(1996年)をはじめツアー通算5勝、シニア入りしてから1勝をマーク。現在、主宰として藤田寛之プロ、宮本勝昌プロらとともに「チーム・セリザワ」を結成。大箱根CCにゴルフアカデミーを開校。わかりやすいレッスンで多くのファンを持つ。
再現できない「ひらめき」「開眼」は単なる偶然でしかない
アマチュアゴルファーの中には、一生懸命練習しているのに、スコア面ではずっと足踏みを続けているという人がたくさんいます。それどころか、もう何年もゴルフを続けているのに、初心者が打つような大スライスや、大ダフリが、いまだに出てしまうという人もいるでしょう。そのように上達スピードが遅い人は、どうしたら上手くなれるのでしょうか。
よく「ひらめき」とか、「開眼」ということが、ある日突然起こって、それから一気に上手くなったというような体験談を耳にすることがあります。しかし私自身の経験でいうと、そんな風に、ある時から急に何かが上手くできるようになったということは、一度もありません。例えば、アマチュアゴルファーが練習中に、ものすごく感触のいい打球が出て、「あ、これだ!」と思うことは、よくあると思います。もし、次の練習の時、あるいは、その後のラウンドで、同じ感触の打球を繰り返し再現できるとしたら、それは、本物の「ひらめき」だったのかもしれません。ところが、現実には、次の練習どころか、その日の練習が終わる頃にはもう、その感触が「消えて」しまうということがほとんどではないでしょうか。再現できない「ひらめき」というのは、厳しい言い方をすれば、単なる「偶然」にすぎません。偶然、何かが1度できたからといって、それで次からも上手くいくという保証はどこにもないのです。
どんなスポーツにもゴルフスイングのヒントはある

練習というのは、正しいやり方の積み重ねでなければ、絶対に上手くはなりません。自己流で非効率的なやり方であっても、膨大な量の練習を重ねれば、その動きを反復できるようにはなりますが、それだと合理的なやり方で、たくさん練習した人にはどうやってもかなわないわけです。頑張って練習しているのに、なかなか上達しないという人は、どういうスイングをすれば、効率的に真っすぐ、遠くに飛ばせるかということを、あまり考えずに練習しているのではないでしょうか。
あるいは、「こういう風に振りたい」という理想形が、頭の中にはあるけれども、実際に体を動かしてみると、それとは全然違う動きになってしまうということも多いかもしれません。そういう人の場合、ゴルフ以外のスポーツ経験があれば、そのスポーツのイメージを使うことで、即座に正しいスイングの動きができるようになることがあります。トーナメントのプロアマ戦等で、私自身、何度も経験しているのですが、野球経験者の場合、例えば、「左に引っ張る感覚で打ってみてください」と言うと、その途端にスライスが直ったりするわけです。あるいは、「『ライト打ち』がゴルフではいちばんよくないんですよ」と言うと、すぐに悪い動きの本質を理解して、自分でそれを修正できるようになる人も多いです。
フェース面のコントロールということでいうと、卓球やテニスの経験も、とても役に立つと思います。ゴルフはシャフトが長いので、「面」の感覚がつかみづらいのは確かですが、打ちたい方向に面を向けるという原理は、卓球やテニスと共通のものです。また、最近はサッカー経験者が増えていると思いますが、サッカーのイメージだって、ゴルフに生かせないことはないと思います。プレースキックで、ボールにカーブをかけたりするイメージは、まさにインテンショナルフックやスライスと同じですし、インフロントキック(トウを真っすぐに当てて蹴るキック)で、ボールを低く蹴ったり、高く蹴ったりするイメージも、ゴルフで高さをコントロールする感じに似ていますから。
総じて言うと、ゴルフ以外のスポーツ経験がたくさんある人のほうが、スイングの動きを理解して、それを体で表現する力は高いです。
バッティングセンターでボールを打つ、歩測を一定にしてリズムをつかむ
ゴルフだけしかスポーツをしたことがなくて、なかなか上達しなくて悩んでいるという人は、例えば、バッティングセンターに行って、動いているボールを打ってみるのもいいかもしれません。飛んでくるボールに、「反応して」動かなければいけないので、構えて、テークバックして、打つ、というリズムが身につくというのが、この方法のいいところです。ゴルフでミスが多い人は、ほぼ例外なくスイングのリズムが悪いですし、調子が良かったのに、急にミスが連発するという場合、大抵は、リズムが乱れて、早くなったり遅くなったりということが原因だったりします。
ラウンド中のリズムを一定に保つカギは、「歩くスピード」を一定にすることです。アマチュアの方のプレーを見ていると、ミスした直後に急に歩くのが速くなる人が多いようです。あるいは、ミスに落ち込んで、逆にものすごく歩くのが遅くなる人もいます。ミスの連鎖を引き起こさないという点でいうと、どちらもよくありません。歩くスピードを保つというのは、自分の意志でリズムを作っていくということでもあります。普段の生活でも、一定の速度で歩くということを意識していると、プレー中もリズムが崩れにくくなるはずです。
最後に、自宅でもできる、毎日やれば必ず上達する練習法をお教えします。それは、ゴムホースのような柔らかいものを、ゆらーん、ゆらーんと、リズム良く振ることです。バスタオルの先を縛って振るのでもいいでしょう。上体の脱力や、下半身からの始動といった、スイングの基礎中の基礎の部分が自然に身につきますので、ぜひ試してみてください。
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