Best Engine vol.5
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ヴァチカンで指揮を執った時に得られた発見西本智実さんは、芸術監督兼首席指揮者としてイルミナートフィルを率いて、クラシック芸術を通して様々な試みをなさっています。2017年11月には、5年連続招聘となりましたヴァチカンでの演奏を終え、ヴァチカンの音楽財団よりイルミナートフィルと合唱団に「名誉パートナー」の称号が授与されました。 西本 私が初めてヴァチカンから招聘されたのは、イルミナートを結成しました翌年、2013年の秋でした。ウィーンフィルが音楽祭のホストオーケストラとして毎年参加し、世界各国を代表するオケと合唱団が招聘されています。イルミナートは新生オケでしたから音源審査などを経て、ようやく参加が決定しました。以降、イルミナートは連続招聘され、昨年末にはウィーンフィルに続き、ヴァチカンの音楽財団より称号6が与えられ「名誉パートナーオーケストラ&合唱団」となりました。チーム全体として評価され、大変光栄です。菊地 素晴らしいですね。演奏は荘厳な聖堂でされるのですよね。西本 はい。国際音楽祭とローマ教皇代理ミサでの演奏です。前者はサン・パオロ大聖堂※1で、後者はカトリック教会の総本山であるサン・ピエトロ大聖堂で演奏しています。サン・パオロ大聖堂での演奏は、1万人以上収容できる大空間にヨーロッパ中から集まった約4,000人の方たちを前に、サン・ピエトロ大聖堂でのミサは、数百人の限定された方たちを前に演奏しています。菊地 大聖堂は、本来演奏のために作られた建物ではないですよね。となると、音の響き方などは普段演奏されるようなホールなどとはかなり違うように思います。西本 サン・ピエトロ大聖堂は、音の響きが返ってこないほどの大空間ですから、演奏する本人には残響音を感じら現在、イルミナート芸術監督兼首席指揮者、ロイヤルチェンバーオーケストラ音楽監督兼首席指揮者。岸和田市立浪切ホール芸術ディレクター。大阪音楽大学客員教授、松本歯科大学名誉博士。ヴァチカンの音楽財団より史上最年少で名誉賞を授与される。大阪国際文化大使、平戸名誉大使。世界約30ヵ国の歌劇場、オーケストラ、国際音楽祭から毎年招聘。れず、まるで野原で演奏しているような感覚です。少し離れて演奏を聴くと、音がとても響き合っていますし、ドームには残響が混じり合いとても神秘的です。計算外の現象に、これもキリストの奇跡を感じます。ベートーベンの第九、ヴェルディのレクイエム※2、モーツァルトのレクイエム、当時の作品はほとんどが宮殿か教会で演奏することが一般的でした。ヴァチカンで演奏を重ねることによって、教会の響きの中で生かされる音楽を作ってきた彼ら天才たちの独創的感覚が、間近に感じられる瞬間でもありました。音楽もITも実は“見えない建造物”を造る仕事菊地社長は、大学時代にコーラスで指揮をされていて、クラシックもお好きとか。菊地 大学に入る前、楽器をやっていたので音符は読めましたが、歌を歌ったことはありませんでした。ところが西本 智実

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