Best Engine vol.5
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入学してすぐ、校内でコーラス部の学生30人くらいが歌っているのを見かけて、なんとなく「いいな」と思ったんです。それがきっかけで、自分も入部することになりました。でも2ヵ月後に、大きなコンサートでフォーレのレクイエムをやるから出ろと言われた時は、さすがに面食らいました。西本 そこで指揮者もされていらしたのですね。菊地 3年になった時、急に常任指揮者の先生から「サブコンダクター(副指揮者)をやってみろ」と言われたのを機にチャレンジすることになりました。その時は慌てて指揮法や楽典のにわか勉強をしましたが、ほとんどただ手を振っているだけ。指揮をするほどに、その難しさを感じるようになりました。コーラスではその後、モーツァルトのレクイエムなども一通り歌いました。いつか機会がありましたら、私も西本さんが指揮をするコーラスの端に加えていただきたいものです(笑)。西本 ぜひ(笑)。今年のヴァチカン国際伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 代表取締役社長。1976年に伊藤忠商事に入社後、エネルギー本部、ロンドン、オマーン駐在を経て、金属・エネルギー経営企画部長、業務部長、常務取締役、生活資材・化学品カンパニープレジデントなどを歴任。2012年より、現職。音楽祭はヴェルディのレクイエムですが、ぜひご参加ください!菊地 いや、さすがにヴァチカンはちょっと……(笑)。ところで別のインタビューを読ませていただいたところ、指揮者というのは楽譜という設計図をもとに「見えない建造物」を造る仕事だとおっしゃっていたのが印象に残っています。というのも実は私も、「ITの仕事ってなんですか?」と聞かれた際に「建設業のようなものです。ただできたものは目に見えません」と答えることがあります。西本 一見分野は異なりますが、根本は同じということでしょうか。菊地 CTCグループは、様々なシステムの構築を行っています。お客様の要求に従って設計図を作り、それに基づいてプログラムを組んでいくのですが、出来上がったものは目に見えません。音楽も似ていますよね。ただ違うのは、西本さんが生み出される音楽の場合、何百年前の人が作った楽譜という設計図をご自分で解釈して演奏するということではないかと思います。楽譜を見ながらご自分なりの新たなイメージを作り上げていくのでしょうか。西本 私はもともと作曲専攻だったので、まずは作曲学的な分析から行います。例えば、時計を解体していくような感じです。解体して、一つひとつの部品の材質を確認し、それらが互いにどう作用して秒針を動かしているのかを理解する。その上で、自分だけの組み立て方で組み直す。そのようなことを私は指揮する曲に対して行います。そうすることで自分の音楽にしていきます。一人ひとりと向き合うリーダーに西本さんは大阪音楽大学をご卒業後、ロシア国立サンクトペテルブルク音楽院オペラ・シンフォニー指揮科に留学され、キャリアを積まれました。菊地 ロシアをはじめとしたいくつもの楽団で指揮をつとめられ、現在は、7菊地 哲

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