ITの力で未来を創る そのために何ができるか

参加メンバー

IoT、AI、仮想現実、ロボットなど、技術革新が進むIT。CTCグループの企業理念「明日を変えるITの可能性に挑み、夢のある豊かな社会の実現に貢献する」ためには、どのような視点が必要なのか。ITで創りだす新たな未来を支えるために求められる人の力とは。

「豊かな社会=多様性を受け入れる社会」と考え、障がい者や高齢者への適切な向き合い方を伝えるユニバーサルマナーの専門家 岸田 ひろ実氏と当社副社長の松島が対談を行いました。

ミライロとCTC 社名の共通点

松島副社長(以下松島):当社伊藤忠テクノソリューションズの略称はCTCです。もともとは英文社名の略称だったのですが、「Challenging Tomorrow's Changes」というスローガンを掲げ、「明日を変えるITの可能性に挑み、夢のある豊かな社会の実現に貢献する」という企業理念を制定しました。御社のミライロという社名とも何か共通点があるように感じます。

岸田ひろ実氏

岸田ひろ実氏(以下岸田):ありがとうございます。ミライロは「未来の色」や「未来の路みち」という意味なんです。誰もが自由に自らの色を描いていける未来、誰もが自由に歩める未来の路を創造するという思いが込められています。

松島:我々が目指す「豊かな社会」が何かと言えば、一つには健常者、障がい者、高齢者もいる、いわゆる多様性を受け入れる社会ということではないでしょうか。そういう社会を理解するために、今回は東京で500人が受講するユニバーサルマナー講習会を企画しました。

岸田:ありがとうございます。ミライロの企業理念は「バリアバリュー」です。「バリア=障がい」は克服すべきものとして捉えられがちですがそうではなくて、「バリア=違いや個性」に「バリュー(価値)」を見いだそうと考えています。人にはそれぞれ障がいがあったり、あるいはコンプレックスがあったり、苦手なことがあると思います。違う個性があるからこそ見えてくるものや気付きを皆さんにお伝えすることが私たちのミッションだと思っています。

自分とは違う誰かを思いやり、行動する

松島:岸田さんは年間180回以上ユニバーサルマナーの講演をされていて、その講演に大勢の人が集まるようになったということは、日本も変化しているなと感じますがいかがですか。

岸田:「ユニバーサルマナー検定」は2013年にスタートしましたが、受検者は毎年、倍々で増えてきています。特にここ数年は加速度的です。そのきっかけはやはりオリンピック・パラリンピックの東京開催が決定したことだと思います。また、昨年には障害者差別解消法が施行されました。より身近に障がいのある方のことを感じるようになり、接し方を知りたいという意識が高まっていることを実感しています。

松島:バリアバリューの思想が浸透してきているということですね。違いや個性に価値を見出すことができるようになってきたことは本当にいいことだと思います。この流れに沿って、当社はもっとITでサポートできることを考え、実現していかなくてはならないですね。

岸田:もし日本の人口が100人だったらというデータを講習会でご提示しています。男女で分ければ、49人と51人ですが、高齢者は27人、子供は15人、LGBT(性的少数者)の方が8人、障がい者が7人、妊婦さんは1人です。男女の比率は半々ですから日常的に触れ合う機会も多く、お互いの違いは理解できると思います。しかし、接することが少ない高齢者や障がい者にはどう接していいかわからない。障がい者との接し方を含めて、「自分とは違う誰かのことを思いやり、行動する」、そういう姿勢を身に付けていただければというのがユニバーサルマナーの基本姿勢です。私は普通に生活していた頃の健常者の視点、今車椅子に乗っている視点、そして障がいのある息子を持つ母親の視点を持っています。講習ではこれら3つの視点から現状についてお伝えしています。道路の段差など、ハード面を変えることは簡単にはできないかもしれません。しかし、周りの人のハートが変われば、様々な障壁は低くなります。

日本の人口が100人だったら(ミライロ調べ 日本国内数値割合)

日本の人口が100人だったら(ミライロ調べ 日本国内数値割合)

ハートとハードで障壁を低くする

松島:ハートを変えるとはどういうことでしょうか。

岸田:日本人は声のかけ方がわからなくて無視してしまうか、過剰になってしまうか、どちらかが多いのが現状です。どちらも思いやりの心からでる行動なのです。「大丈夫ですか?」と聞かれれば、大抵は「大丈夫です」と答えてしまいがちです。

松島:確かにそうですね。では、どのように接したらよいのでしょうか。

岸田:例えば私は5cm程度の段差であれば一人で移動が可能です。しかし10cmとなるとそうはいきません。障がいがあっても人それぞれできること、考えていることは違います。そんな時、「何かお手伝いしましょうか?」という一言はとても嬉しいものです。

松島:May I help you?の精神ですね。当社でもCSR(企業の社会的責任)を大切にしています。CSRの一つである社会貢献活動では、様々なボランティア活動を行っていますが、それはハートへの関わりかもしれません。当社はITの技術革新で何ができるのか、いわばハード面でのサポートも目指さなくてはならないと考えています。それには、私たちの身長の高さの目線もあれば、車椅子からの110センチの目線もある。お子さんや高齢者なら違った位置でしょう。高さだけでなく、気持ちの目線も含めて幅広く社会を見つめる必要性を感じています。

個性が発揮できる場をつくる

松島:CTCではCSRのマテリアリティ(重要課題)の一つに「ダイバーシティ推進と働き方変革」を掲げています。多様性を尊重し、性別、年齢、国籍、障がいの有無にかかわらず、様々な人材が能力を発揮できる環境づくりに注力するとともに、多彩な個性が多様な働き方で力を合わせ、新しいことに挑戦していける職場の実現を目指しています。

岸田:どのようなことに取り組まれているのでしょうか。

松島:今、日本では、少子高齢化が進み労働人口も減るという、大きなパラダイムシフトが起きつつあります。CTCでも様々な取り組みを進めており、その一つが女性の活躍推進です。CTCの女性比率は約15%ですが、女性が日々の仕事の中で輝き、安心して働き続けられるようキャリア支援施策の拡充や女性社員同士の交流機会創出につながる活動を行っています。多様な考え方の中で男性社員の意識も変わり、いい相乗効果が生まれています。また、LGBTに関してもまずは採用、健康支援、キャリア相談、育成担当者などを対象に研修を実施しています。このような取り組みに加え、障がいのある方々にも働き手になって活躍していただくことが必要と考えています。

岸田:私も「歩いている方と同じような仕事をしてください」と言われても難しいことがたくさんあります。ですから、活躍できる場所というのは限られてしまいます。しかし私は、今私にできること、私にしかできないことは何だろう、というところに目線を移すチャンスをもらい、今の仕事に至りました。障がいがあっても、企業にとって戦力になることはたくさんあると思います。ただし、障がいがある方を仕事に合わせるという発想ではなく、障がいや個性、特性、得意なことに合わせた仕事やシステムを新たに創出することも必要です。それができれば、大きな戦力に変わると思っています。御社のような企業が増えることは心強い限りです。

ユニバーサルマナー講習会の風景

ユニバーサルマナー講習会の風景

ITで広がる働き方

松島:私どものグループ会社で「ひなり」という特例子会社があります。そこでは、障がいのある社員が働いており、農家との連携も推進しています。浜松に事業所をおき、地元の農家が水耕栽培をしている青梗菜や、ブルーベリー、メロンの収穫など、農作業支援をしています。繁忙期の農家は人手が足りません。作業内容を見える化して、ひなりの社員ができる作業を必要な分だけ請負うことで農家の方々に大変喜んでいただいています。作業内容の見える化には、システム会社としてのプロジェクト管理手法を用いています。経営規模を拡大する農家もあり、地域農家の経営改善に役立っています。

岸田:システム会社の手法が農家の役に立つというのは面白いですね。

松島:ITを利用して障がいを持っていても不便なく働ける職場環境というのも考えなければいけませんね。AIの進歩は著しく、視覚や聴覚の障がいの助けになる技術はもっと進むでしょうし、自動運転機能の付いた車椅子も開発されるかもれません。

岸田:障がい者の移動を円滑にしたり、働き方を広げたりすることについて、ITはなくてはならない重要なものだというのは私も同じ考えです。ミライロでは、ユニバーサルマナーのような教育や研修も業務の一つですが、ユニバーサルデザインを取り入れた製品開発も行っています。例えば、Bmaps(ビーマップ)というアプリの企画開発も行いました。お店のバリアフリー情報をみんなで共有するアプリで、車椅子に乗る私でも行きたい場所に行きやすくなりました。アプリの開発には、障害があって自宅で療養をしている社員も中心メンバーとして携わっています。

松島:それは素晴らしいですね。当社でも多様な働き方ということで、在宅勤務も導入しています。育児中や、介護の必要のある家族がいる社員など、様々な人が活用しています。モバイルワークも含めて、ITによる「働き方変革」の広がりの一例です。

システムをつくるのも使うのも人

岸田:社会課題はまだまだ多くあると思います。今後どのようなテーマに取り組まれていこうと考えられていますか。

松島:ITが多様な人をサポートするということは社会にとって不可欠です。より生活に密着したITの開発も視野に入れて動き出しています。例えばエンパワメント福祉※をコンセプトに、視覚障がい者向け外出支援サービスの実証実験や、排尿ケア支援システムの介護施設への導入など様々なことに取り組んでいます。AIの活用やIoT化など技術は日々進歩しています。未来に対応できる技術力を磨くため、エンジニアの技術力向上と先端技術の習得やノウハウの共有を目的とした当社の「先端技術LAB(ラボ)」を活用したりオープンイノベーションに取り組んだりしています。オープンイノベーションは積極的に異分野・異業種と連携することでイノベーションを創出しようとする市場の流れですが、この4月には最新技術を活用して新規事業の立ち上げを担う「未来技術研究所」を新設しました。新たな発想で本業を通じて社会課題の解決に取り組んでいきたいと考えています。

岸田:ITを使うのも人であって、ITという技術だけが充実していればいいわけではありません。ITを使ってシステムを開発される方やそれを利用する方にも、障がいのある人や自分とは違う人との向き合い方をしっかりと身に付けていただけたらと願っています。ユニバーサルマナー講座の講師の育成も私の重要な仕事です。色々な個性を持った講師を育てるため、私も頑張りたいと思います。

松島:今回、お話をさせていただいて、岸田さんには「レジリエンス」つまり、困難な状況にも屈せず、それを跳ね返す力をお持ちであることを強く感じました。その力は、バリアを障がいではなく、違いや個性と捉え、そこに価値を見出す正に「バリアバリュー」から得られたものではないでしょうか。
このバリアバリューの考え方は、ITによる新たな価値創造を目指す当社にとって大きな力になると同時に「アイデアとITを反応させろ」と言う当社の新たな取り組みにつながることを確信しました。本日は、貴重なお時間をありがとうございました。

  • エンパワメント福祉:自身の生活や環境をコントロールできるようにする支援。その人自身の潜在的な能力を引き出す働きかけのこと。
対談の様子

対談者紹介

岸田 ひろ実

日本ユニバーサルマナー協会 理事/株式会社ミライロ 講師

1968年大阪生まれ。知的障がいのある長男の出産、若くして夫との死別を経験した後、2008年に自身も大動脈解離で倒れる。手術を乗り越え一命を取り留めるも、その後遺症により、下半身麻痺に。その後困難を乗り越え、2011年、長女が創業メンバーの株式会社ミライロに入社。ユニバーサルマナーの指導など、年間180回以上の講演を行っている。2017年、ユニバーサルマナーの普及・啓発に関する活動が評価され、国際ソロプチミスト神戸東・クローバー賞を受賞。著書に「ママ、死にたいなら死んでもいいよ」(致知出版社)。

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