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CTC

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

次世代の暮らしを守るために急速に進化する津波シミュレーション

東日本大震災で発生した津波のシミュレーション(YouTubeサイトで見る

東日本大震災で甚大な被害をもたらす原因となった津波。2011年3月11日の経験を踏まえて、急速な進化を遂げる津波シミュレーションの今とCTCの最新の取り組みをご紹介します。

東日本大震災で甚大な被害をもたらした津波。日本ではこれまでも地震や津波の大きな被害を受けていました。
1983年、マグニチュード7.7の日本海中部地震で死者104人、1993年マグニチュード7.8の北海道南西沖地震では死者・行方不明者が230人にのぼります。これらの被害を踏まえて対応はしていたものの、2011年3月11日、甚大な被害を受けたことを機に、津波や津波シミュレーションへの考え方がさらに進みました。

これまでの津波対策では、過去に発生した地震や津波のデータによる津波シミュレーションをもとに被害を想定し、対策を講じてきました。しかし東日本大震災は過去のデータを大きく上回るものだったため、大きな被害が発生するという悲しい結果になってしまいました。そこでシミュレーションによる津波予測では過去に実際に起こったもののうち最大の地震を対象にするのではなく、これまでに経験したことがなくても考え得る最大の地震を想定する考え方に変わりました。その結果、津波対策の際限がなくなってしまうという、新たな課題も出てきました。
例えば、震災後、内閣府では、津波の被害が大きくなると予想されている「南海トラフ地震」の想定死者数を32万人としており、震災前の試算と比べると約4倍にものぼる数値が想定されるようになりました。とはいえ、津波の防御壁を5mから30mにするなど対策を極端に変えるとすれば、費用が膨大に膨らむばかりか景観までが損なわれてしまいます。
地震は、規模が小さければ頻繁に発生し、反対に規模が大きなものは稀にしか発生しないという傾向があります。こうした性質に着目して、国立研究開発法人防災科学技術研究所(以下防災科研)では、地震や津波のハザードを確率論的に捉えようとするプロジェクトが進められており、CTCもこれに参加しています。このプロジェクトは、どれくらいの確率でどれくらいの津波が発生するのかを膨大なシミュレーションを通して予測するもので、CTCがエネルギープラントをはじめとする社会インフラの重要基盤の解析で培ってきたシミュレーションの経験やノウハウが生かされています。今後、どの程度の高さの津波までは防潮堤で食い止めたら良いのか、また、防潮堤を超えるような津波に対しては高台に避難する、という防災対策を策定する判断材料として役立つことが期待されます。

津波シミュレーションに用いた海底地形モデル
津波シミュレーションに用いた海底地形モデル
シミュレーションによる津波の伝播(スナップショット)
シミュレーションによる津波の伝播(スナップショット)

残念ながら“絶対に安全”という津波対策はありませんが、東日本大震災のデータを収集した結果、これまで以上に津波シミュレーションの信頼性が高まり、津波対策を打つための最善の提案ができるようになりました。
現在では、防災科研によって、日本海溝海底地震津波観測網「S-net」が海底に張り巡らされるようになりました。これは水深8,000mまで設置可能な地震計、津波計(水圧計)が入った観測装置を海底に設置し、地震と津波のリアルタイムな連続観測・監視に役立てられるシステムです。防災科研ではこのS-netを用いた津波早期探知システムの開発を行っており、CTCも協力しています。このように、私たちCTCは次世代の暮らしを守るため、引き続き津波シミュレーションを行っていきます。

秋山 伸一

科学システム企画・開発部秋山 伸一