自然の驚異の一つとして、津波や地震などと同じく、最近注目を集めているものに竜巻があります。自然現象による飛来物の衝突解析技術はどんどん進化しており、ここではその最新現状と今後についてご紹介します。
2008年から気象庁が「竜巻注意情報」を発表し、日本で年間25個程度の発生が確認されている竜巻。最近では、千葉や神奈川での竜巻発生もあり、自然災害の脅威が見過ごせない状況となってきています。東日本大震災によって、あらゆる自然災害のリスクに備えようという意識が高まり、竜巻による飛来物解析の分野も注目を集めるようになりました。中でも私たちの暮らしを支えている発電施設などのインフラ施設はより堅牢なものを作るべき、という機運が高まっています。
CTCでは竜巻をはじめとする衝撃解析の分野でシミュレーションを長年手がけてきました。自然科学に精通したエキスパートたちが、「ANSYS® AUTODYN®」や「LS-DYNA」など業界のデファクトスタンダードである衝撃解析ソフトウェアを使い分け、詳細で高精度な解析を行っています。さらに、解析だけではなく、コンピュータ上でシミュレーションした結果と実際に事象が発生した時との差をさまざまな文献や論文などを照らし合わせて検証しており、その総合力が評価されています。
最近、国内の様々なインフラ施設でリスク対策を講じることが必要とされており、研究機関や、大学、企業などによる委員会が発足され、検討が行われています。CTCでは、飛来物がぶつかった時に発生する衝撃とそれによる建物の破壊などのリスクをより正確に予測するために協力をしています。
ニーズの高まってきた竜巻による衝突に関する解析。これは時速100km以上の速度で衝突する飛来物を対象としてきました。この技術は竜巻飛来物以外にも適用可能で、火山噴火、工場等の爆発事故による飛来物衝突などでも活用されています。
衝突解析の経験とノウハウは医療分野でも役立てられようとしています。例えば、血栓治療への応用です。血栓は止血の役割を果たし、人間の身体に欠かせないものですが、時には脳梗塞や心筋梗塞の原因になります。そこで、リスクのある血栓に対して衝撃波をあてて血の塊を安全に壊すなどの治療技術に対して、衝撃解析技術が将来的に役立てることができるということが分かってきました。まだまだ基礎研究の段階で、クリアしなければならない課題が多くありますが、医療と衝撃解析の技術、両輪で治療に取り組むことで、より安全な治療が期待されています。このように、今後もCTCは衝撃解析の技術を様々な分野で応用することを目指していきます。
科学・工学技術部阿部 淳