DEJIMA

日米デジタルトランスフォーメーション最新動向

日米デジタルトランスフォーメーション最新動向

2019年7月30日、米国で注目されている企業、Slalomが来日しました。デジタルトランスフォーメーション(以下DX)、米国の最新事情と、日本企業のDX加速に必要なメソッドについてレポートします。

大企業におけるDX推進に必要な要素とは?

保坂 隆太 氏(Client Service Lead,Slalom,LLC)

保坂 隆太 氏
(Client Service Lead,Slalom,LLC)

米国におけるDXの現状

現在、米国の大企業では、Agile/DevOpsを大規模に採用する流れになっています。しかし、既存の大企業でスタートアップが得意とするAgile/DevOpsを取り入れるには、企業内の文化改革などを意識して取り組む必要があります。

米国の大企業ではDXが進み、エンジニア含めてリソースは内製化されているという印象がありますが、世界的なテクノロジー関連の人材不足により、専任のエンジニアを企業内に抱えるのはとても難しい状況です。DXの推進に必要なスキルセットを持った人材がいない企業では、内製化がそれほど進んでいないのが現状です。

デジタルトランスフォーメーションを形にする、Slalom

Slalomは大手IT企業の本社が集結するテクノロジーの中心地、シアトルに本社を構えています。
創業は2001年、グローバルで事業を展開する、大企業の新規事業・新規サービス創出を支援してきました。Slalomは、具体的なビジネス&サービスを念頭に置いたアプリケーション開発を通じ「新規事業創出」「組織・文化改革」「デジタル人材獲得」 「新技術対応」といった大企業のDXを支援しています。

米国のマーケットが注目するSlalomの魅力とは?

Slalomのコンサルティングやエンジニアが、お客様のエンジニアチームに入って、一緒に事業を創りあげる、というビジネスモデルを提供します。
Slalomのビジョンは「Love your work and life」。
新しい考え方、新しい文化、新しい価値の提示を、顧客企業に向けて大規模に行っている点が米国内でも評価され続けています。
Slalomの特長に、以下3つが挙げられます。

Local Delivery Model(ローカルデリバリーモデル)

通常、大手コンサルティングファームは大都市に拠点があり、そこから出張ベースで各サービスを提供します。Slalomは、英国、カナダを含め30か所にオフィスを構えています。
「UX Design」「Agile/DevOps」「BigData/Analytics」等の技術を熟知するSlalomのコンサルティングやエンジニアと、顧客企業の社員からなるチームを、顧客の地域で編成します。

Culture(カルチャー)

Slalomはダイバーシティを重視する企業です。「働きやすい」「自分の能力を発揮できる」会社として、毎年複数のビジネス誌ランキングで高評価を得ています。多様性のある採用、考え方が、アメリカではますます重要視されていますが、Slalomではエンジニアやコンサルタントとして活躍する従業員の中でも女性が52%を占めています。多くの女性は、育児などのライフイベントで一度仕事を離れた女性です。

多様な働き方を提供し、眠っている人材を再び市場に呼び戻すことにより、ローカルで働ける優秀な人材を獲得しているのです。

Modern Technology(モダンテクノロジー)

世界有数のテック都市、シアトル。AI、マシーンラーニング、パブリッククラウドなどの言葉が共有されているだけでなく、その言葉自体がビジネスや企業を呼び寄せ、さらに都市が発展し、優秀なIT人材を引きつけているのです。

Slalomのビジネスは特定のアプリケーション開発の遂行が目的ではありません。顧客企業におけるDXの定着をゴールとします。Slalom社員と顧客企業が同じ空間で、共有されたタスクを実施していくことが、DX定着の加速につながります。

新しい価値の提供

最新のサービス作りをデリバリーする施設として、Build Centerというエンジニアリングセンターを、全米で7か所、英国とカナダにも1か所ずつ開設、顧客企業と一緒に仕事を進める場所として提供しています。テクノロジーはめまぐるしく変化し、開発に必要なツールセットも半年程度で変わるため、顧客に本番環境を体感してもらうのが早いのです。その環境がBuild Centerには全てそろっています。

Agile/DevOpsの本質は、顧客に質の高いものを作ること。グローバル企業はアメリカだけに価値があるサービスを提供するのではなく、世界を市場と見て価値の高いサービスを提供する必要があります。そのサービスを生み出すためには、多様な文化や考え方などの市場独特の背景を理解することも大切です。そういった観点で新しいサービス、考え方づくりをサポートできる多様な人材を得るために、会社として新しい文化を提供していきながら、顧客にも新しい文化、新しい価値の高いサービスを一緒に作っていくビジネスを行っています。

DXで新しいサービスを生み出すには、従来の「アプリケーション開発の発注と受託」という関係ではなく、顧客企業との新しいビジネス関係を築くことが、重要なのです。

新たなSIモデルでDXを加速

小岩井 裕(伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 クラウドインテグレーション部 部長)

小岩井 裕
(伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 クラウドインテグレーション部 部長)

Slalomの体験にあるように、DXを内製化して進めるためには「カルチャーチェンジ」「Use Case(UX/CX)」、「開発環境構築(CI/CD)」「チームビルディング」の4つが必要です。しかし、組織間を横断して連携することが難しいような日本の大企業において、これら4つを意識してDXを推進することは簡単ではありません。

Slalomはスタートアップのアプリケーション開発手法とカルチャーチェンジを、大企業に適用するビジネスモデルを米国中心に展開しています。新しいビジネスを創出する際に、カルチャーチェンジとオペレーション、リクルーティングという変化を、Slalom自ら実践して顧客に伝えるビジネスモデルは画期的です。

昨年参加した北米のDevOpsイベントで印象に残っているのが、エンタープライズにおけるAgile/DevOpsジャーニーは、内製化を進めるためのチームビルディングやシステム自動化に向けた設計などを緻密に計画し開発に進むと、実際に起動に乗るまで4~5年かかる、という話です。Agile/DevOps適用は製品やツールを導入すればすぐに適用できるものではなく、非技術的な要素が多く含まれます。CTCはSlalomとの協業により、彼らの経験値と実装力を獲得し、国内企業に提供する事で、この適用までの期間を0にする事はできませんが、1年~2年に短縮することができると考えています。

将来的には、DEJIMAをSlalomのビルドセンター、東京拠点として、ソフトウエア開発、Agile/DevOpsチーム、チームビルディング、内製化支援を提供していきます。 これからの我々のDX動向にぜひご注目ください。

お問い合わせ先

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
DX支援セミナー事務局
cbsd-seminar@ctc-g.co.jp