DEJIMA

イノベーションを起こすためのDEJIMAとの付き合い方とは

DEJIMAは、オープンイノベーション・プロジェクト共創を実現するスペースです。組織の枠を超えて垣根なく集え、まずは動いてみる、失敗を恐れない、そんなチャレンジができる場として運営されています。

そんなDEJIMAでは、イノベーション創出のために様々な仕掛け作りを企画しています。そのうちの1つである「デジマ式plus」に参加された方に、外から見たDEJIMAの活用方法について伺います。

今回は、長崎を舞台にオープンイノベーション型新規事業創出支援を積極的に行っている鍬先 晃生氏(十八親和銀行 地域振興部/スタートアップ交流拠点 CO-DEJIMAコーディネータ)にお話を聞きました。

地方発のイノベーション創出を目指す!

長崎オープンイノベーション創出支援とはどのような取り組みでしょうか。

鍬先:地方や地方地場企業等が持つ課題と、都市部企業等が持つリソース・ソリューションを掛け合わせ、新規事業を共創していくモデルをオープンイノベーションと定義しており、支援チームとして、広域自治体・基礎自治体・メディア・金融等が横断的に連携しています。
また、支援機能として以下の4つを 掲げています。

支援者として持つべき4つの機能

  1. 長崎における地域課題抽出支援
  2. プロジェクト実証フィールドの調整支援
  3. 長崎地場企業等のネットワーク提供支援
  4. プロジェクトの伴走支援

この支援機能をもって、初期の実証事業構築までをサポートできればと思っています。
ゴール感としては地方発のイノベーション創出です。

オープンイノベーション型新規事業創出における支援機能について

地場企業等が持つ課題と、都市圏企業等がもつリソース(ヒト、カネ等)、ソリューションを掛け合わせ、新規事業を共創していく動きを広域自治体・基礎自治体・メディア・金融等が横断的に連携し、支援行うことで、長崎発のイノベーションを目指していく。(この共創モデルをオープンイノベーションと呼ぶ)

そのためにも、前述の4つの支援機能を明確化し、内外に発信することが必要。

概念図

長崎でこういったオープンイノベーションが必要になってきた背景をお聞かせください。

鍬先:長崎は基幹産業の造船業が苦境にあります。また、全国で唯一上場企業がゼロの県です。そこで、新産業の育成が急務となり、地域としてイノベーションやスタートアップ等の創出、デジタル化などに取り組んでいるのですが、山積する課題に対してリソース・ソリューションが圧倒的に不足しており、具体的施策に乏しい印象でした。

一方、都市部の大企業においても、イノベーションの波に乗り遅れまいと新規事業創出がトレンド化していますが、リソース・ソリューションはあるものの、ビジネスを作り出すシードとなる“課題”に飢えている印象を持っていました。

こういった長崎、都市部双方の足りないものを補完しあう形を構築できれば、案件が具体的に進んでいくのではないかと思ったのです。

支援内容について長崎ならではの施策や特徴はありますか。

鍬先:長崎には「いい景色」や「おいしいもの」など魅力はたくさんあるのですが、「人」で他地域と差別化したいと考えています。

前段でもご説明しましたが、「広域自治体・基礎自治体・メディア・金融等が横断的に連携した支援チームの存在」「支援チームが持つ、上述の4つの機能 」。この2点は差別化ポイントだと思っています。「横断的」と「主体性」がキーワードです。

具体的に進めているプロジェクトでご紹介可能なものはありますか。

鍬先:都市部での新規事業創出のトレンド化や、コロナ禍による都市部一極集中の逆流が進んでいる影響から、長崎に関わってくれる都市部ステークホルダーは着実に増えていると思います。

オープンイノベーションのプロジェクトも複数立ち上がり、その中の1つが「水揚げ魚種が豊富」という長崎の強みを活かし、冷凍加工した複数魚種の切り身等をサブスクリプションで首都圏向けに販売する「おさかなサブスク」です。

長崎は「漁獲高全国2位、魚種全国1位」の漁業県でもあるのですが、都市圏では「お魚が美味しい」という認知が今ひとつなされていません。そのような中、プロジェクトメンバーである伊藤忠インタラクティブの、「魚種が豊富という長崎の強みを活かした方がいい」といったアイデアがプロジェクトのきっかけになっています。

地方コミュニティだけではなかなか気付けなかった自らの強み、弱みを認識できるようになるのも、オープンイノベーションの魅力だと思います。

オープンイノベーションの活動を進める上で、ご苦労されている点はありますか。期待する解決の方向性もあれば教えてください。

鍬先:ビジョンはあったものの、取り組み自体になかなか前例もなく、実際には手探りで動いている感じです。
ただ、我々のようなオープンイノベーション支援が行えるチームが存在できるのも、前例がないことへのリソース投下を許容している組織の存在が大きいと思います。実際にプロジェクトの主体となっている企業様にも言えることかもしれませんが、「新規事業」とは読んで字のごとく「新しいこと」ですので、組織の説得が非常に難しいと思います。手探り状態でも始めてみれば、新たな気付きはいくらでも得られるでしょう。組織が「やるリスク」よりも「やらないリスク」を恐れ、「よくわからないこと」にも、よりリソースを投下するポートフォリオを組んでいくことが必要ではないでしょうか。

組織DX(Digital Transformation)が大事と言われていますが、個人的には組織DX(Decision Transformation)が大事だと思います。

DEJIMAについて

DEJIMAとの出会いのきっかけはなんだったのでしょう。

鍬先:2020年の3月まで、私が東京の新規事業創出系の企業に出向しておりまして、そこでDEJIMAの五十嵐さんと出会いました。東京では魅力的なソリューションを学ぶ機会や知る機会が多々あったのですが、それらが私の地元、長崎にローカライゼーションされていくイメージはいまひとつ持てませんでした。

そこで、地方発のイノベーション創出を考えるようになったのですが、五十嵐さんも、都市部企業リソースを活用して、地域課題ベースで新規事業創出ができないか、東京側で検討されていました。どうすれば地方に新規事業を創出していくプラットフォームが構築されるのか、議論を行ったのがDEJIMAとの出会いのきっかけですね。

2020年の2月には、長崎市さんがDEJIMAに「漁業者の所得アップ」という地域課題を持ち込み、「おさかなサブスク」につながっています。DEJIMAという場所を運営されているのに、実は本物の出島に来たことがなかった五十嵐さんを、しつこく長崎にお誘いしたのもいい想い出です(ちゃんとお越しになってくださいました)。

第3回 デジマ式 plusの様子
スライド表紙:観光客による長崎の魚の消費拡大 ~漁業者の所得アップのために~ 長崎市 水産農林政策課

DEJIMAに期待することはありますか。

鍬先:鍬先:長崎の出島は、鎖国時代の約200年間、日本で唯一、海外に開かれていた貿易の窓口で、様々な人々、プロダクトやカルチャー、アイデア等が流入し、混在した場所だったと思います。

そんな長崎には卓袱料理というおもてなしの料理が存在します。卓袱料理は身分の上下関係なく、円卓を囲んで食べるのが特徴で、最初のお吸い物以外は食べ方も決まりはなく、好きなように食べます。

様々なステークホルダーが長崎に流入し、長崎地場の人々も混ざって立場に関わらずフランクに意見を交わし、定石に捉われないやり方で新しいものが生まれていく、その土壌づくりのよきパートナーの1つとして、引き続きDEJIMAには期待させていただいております。

ずばり、DEJIMAの上手な活用方法とは?

鍬先:「DEJIMAに委ねる」ことではなく、「DEJIMAと一緒に考える」ことだと思います!

関連リンク

長崎スタートアップ交流拠点 CO-DEJIMA