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|特集|量子コンピュータの可能性に挑む

量子コンピュータの
可能性に挑む 【特集】伊藤 公平 × 里見 英俊

量子時代に長期的視野で備えたい

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まさに今から、量子コンピュータの具体的な発展が始まるという印象を受けました。今後、どのような展開が予測されるのでしょうか。
伊藤
率直なところ、展開の中身も時間的なスパンもわかりません。その前提の上であえて言えば、まず、量子力学に則るミクロの分野における問題を解明できるようになるというのが最初だろうと考えています。里見さんが先ほどおっしゃった創薬の分野で量子コンピュータが生かせそうというのは、それが、量子力学の法則に沿った原子の世界を扱う分野であることが関係しています。その次の段階として、古典的な、つまり、我々が感覚的に理解できるマクロの世界のことを解明していけるものになっていけばと思っています。
里見
私たちIT企業も、量子コンピュータの時代に備える必要があると感じています。現在、IT業界ではAIやIoTについての検証や議論が盛んに行われています。社会的な課題の解決やビジネスでの効果も含めて各社が先行投資をしている段階です。今後は、量子コンピュータも先行投資の選択肢の一つになってくるでしょう。
伊藤
AIの発展は量子コンピュータと不可分です。今は、第3次AIブームと言われていて、AIの分野でどんどん新たな開発が進んでいますが、そのうちに現在のコンピュータの能力でできることはやり尽くされてしまいます。次のレベルに行くためには新しいパラダイムのコンピュータが必要になるはずで、それを量子コンピュータにしたい。そのためにも今、ハード面もソフト面も併せて発展させていく必要があります。
里見
企業が解決すべき課題はいつも身近にたくさんあり、私たちはそのために必要な手段を常に見つけていかなければなりません。その際、重要なのは、その手段が、何か1つの分野だけに通用するようなものではなく、様々な分野を横断して課題を解決できるようなものであることです。そう考えた時、数十年後、その中心に量子コンピュータがある可能性はとても高いと思います。私たちも、ITにおける最良のソリューションを見い出し続けていくために、将来を見据えて、いい意味での“遊び”を大切にしながら、新しい“量子の世界”に挑んでいきたいです。
握手をする伊藤氏と里見氏
出典:Best Engine Vol.6

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