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事例・レポート

事例

CO2と燃費を削減する運航支援システム「Sea-Navi®」

ユニバーサル造船株式会社 様

会社名
ユニバーサル造船株式会社
所在地
神奈川県川崎市幸区大宮町1310番地 ミューザ川崎セントラルタワー
資本金
250億円
従業員
3,900名(グループ会社を含む)
URL
http://www.u-zosen.co.jp/

海気象情報や船の性能データから最適な航路を計算

ユニバーサル造船株式会社 商船・海洋事業本部 基本計画部 性能計画室長 工学博士 松本 光一郎 氏

ユニバーサル造船株式会社 商船・海洋事業本部 基本計画部 性能計画室長 工学博士
松本 光一郎 氏

 環境問題が叫ばれる中、CO2削減はあらゆる企業の重要な課題であり、社会的責任となっている。そんな中、洋上の航路をナビゲーションする運航支援システム(以下Sea-Navi®)をユニバーサル造船が開発している。最適な航路を通ることで、燃料とCO2排出量を大幅に削減するシステムである。そのパートナーとしてCTCはシステム開発と海気象データの提供を担っている。(Sea-Navi®はユニバーサル造船株式会社の登録商標です。)

導入背景

燃料削減への挑戦

シップ・オブ・ザ・イヤー2001を受賞したM/V KOHYOHSAN

シップ・オブ・ザ・イヤー2001を受賞したM/V KOHYOHSAN

 造船業界は戦後ほどなく世界トップレベルに達し、依然としてその実力を保っている日本では数少ない業界の1つである。とりわけ、ユニバーサル造船は国内上位の竣工量を誇り、特に造船技術では極めて高い評価を得ている。
 同社は2002年に日立造船株式会社と日本鋼管株式会社の船舶・海洋部門が統合して発足。「主にタンカー、バルクキャリアーなどの大型一般商船、護衛艦、輸送艦などの各種艦艇、砕氷艦、巡視船などの官公庁船の建造を行っています」と、商船・海洋事業本部 基本計画部 性能計画室長 工学博士 松本 光一郎 氏は説明する。
 輸送需要は新興国の経済発展に伴い急増している反面、近年の原油価格の高騰が船会社の利益を圧迫している。また、地球温暖化防止のためのCO2削減も声高に叫ばれている。
 例えば、数千個積みの大型コンテナ船になると、年間の使用重油量は6万トン以上に達する。これをCO2に換算すると約20万トンにもなるし、燃費では年間数十億円。わずか1%の燃料削減でも莫大な量のCO2はもちろん、燃費削減になるのである。
 これもあってユニバーサル造船では、CO2削減が叫ばれる前から燃費削減のための技術開発に注力してきた。その成果の1つがAx-Bow(斧型船首)である。吃水線より上方の船首を鋭角にすることで、波による抵抗を20~30%程度減らすことができる。Ax-Bowを採用した第一船「M/V KOHYOHSAN」は、2001年のシップ・オブ・ザ・イヤーに輝いている。
 さらに吃水線上下の船首部の凹凸をなくし、全体を鋭角にするLEADGE-Bowへと進化し、これはAx-Bowよりも波の抵抗を10%削減している。「このほか、風による抵抗を低減する隅切り技術など、実海域性能向上のための技術開発を積極的に続けており、この方面では世界で最も進んでいると自負しています」(松本氏)。

ソフトによる燃費削減へ

 このような船型開発によるハード的な燃費削減への挑戦は今後も続けるものの、同社では5年ほど前からソフトによる燃料削減の仕組みも検討するようになった。その1つが運航支援システムである。「それまで船長の経験に頼っていた航路決定に科学的なシミュレーションを加えることによって、最適な航路を提案できる運航支援システムを開発できないだろうかと考えたわけです」と、松本氏は振り返る。
 陸上の道路を走る車載カーナビのようなものであり、燃費を最小限にできる「最適航路」を示すシステムだ。「最適航路」といわれても、海上なのだから始点と終点を結ぶ直線を走ればいいのではないかと、普通は思うかもしれない。だが、航路と燃費の関係はそれほど単純ではない。
 海には波もあるし風もある。潮流も関係するし、船体やエンジンの性能も影響を与える。例えば、行き先に台風が発生した場合にどの方角で迂回すればいいか、波が強い場合は進行方向に受けるか側面に受けるかで抵抗が異なる。抵抗が異なると当然燃費も異なるし、排出するCO2にも影響を与える。さらに、車もそうであるように、船にもエネルギー効率がある。エネルギー効率を最大にできるスピードで、どの方角から波や風を受けていくか、複雑な航路シミュレーションを短時間で計算するのである。

システム概要

システム構築の実績を評価してCTCに依頼

 2003年頃から松本氏は運航支援システムを本格的に構想し、研究所のスタッフと理論的な設計を進めていった。この検討を2年ほど続け、実現の可能性とシステムのアウトラインが見えた段階で、システム構築と海気象データを提供する2つのベンダーの選定に入った。
 システム構築するベンダーとして、当初から候補にあがっていたのがCTCであった。「CTCは当社で、船舶の構造計算システムなど多くを手がけています。その技術力には定評があり、まったく不安がありませんでした」(松本氏)。
 もっとも、当初はCTCが海気象情報配信システムを構築していることを知らず、別のベンダーを探していたという。CTCにこのノウハウのあることがわかって「まさに渡りに船でした。海気象データの提供と取り込み・解析を同じベンダーでやっていただけると、間違いがありません」と、松本氏は顔をほころばせる。

陸上システムと船上システムの連携

海気象データおよび推奨航路探索結果表示画面

海気象データおよび推奨航路探索結果表示画面

 新システムの名称は「Sea-Navi®」と決まり、CTCも含めたプロジェクトは2005年に発足した。2006年にはタンカーにSea-Navi®を搭載して、データのモニタリングと陸上との通信を中心とした事前検討試験を開始。約1年で一連の検討試験を終了している。
 システムは船舶運航会社に設置される陸上システムと船舶に搭載される船上システムに分かれ、双方は衛星通信回線でデータ交換する。海気象データは陸上システムで受け取り、衛星通信網を経て、船上システムに配信される。この海気象データと船舶の船体、エンジン特性に基づいて、最小燃費航路/最短時間航路/船長任意指定航路等の推奨航路を画面上に表示する。これら推奨航路を参考に、船長が最終的な判断を行って、運航コースを決定することになる。
 陸上システムでは、船舶のモニタリングも可能だ。「これまでは港を出てしまうと、その先の航路は船長まかせであり、陸上からの管理や制御は困難でした。しかし、Sea-Navi®は対象とする船舶がどの位置にいてどの方角へ向かおうとしているのか、どのような状況にあるのかを確実に把握することができます。陸上における船舶管理がSea-Navi®により可能となるのです」と、松本氏は指摘する。

導入効果

最小限の燃料で運航

 Sea-Navi®最大の効果は、最小限の燃料で目的地まで約束された荷物を運べることである。
 太平洋上を運航する場合、最小燃費航路では実際の航路よりも5~8%の燃費削減効果が得られることがシミュレーションからわかった。これは、コンテナ船の実航路結果データを得て、当時の気象データ等と船舶データからSea-Navi®でシミュレーションした結果を比較したものだ。シミュレーションではあるが、5~8%となると莫大なCO2と燃費の削減が可能となる。
 このほか、松本氏が語るように陸上から海上船舶のモニタリングが可能となる。衛星通信回線を通じて、船舶ではリアルタイムの海気象予報データを得ることもできる。
 また、ユーザーフレンドリーな操作性も大きな特長だ。Sea-Navi®を利用するのはITの専門家ではない。ましてや場所は公海上で、気軽にサポート担当者へ問い合わせることもできない。このため特別な教育なしに、直感的に操作できるわかりやすい画面構成にしている。

課題と効果

課題と効果

課題と効果

今後の展望

本格的な実証実験へ

 「大変画期的なシステムができあがりました。しかし、最大の難関はこれからです」と、松本氏は強調する。まず、本格的な実証実験を2009年から実施する。このために、財団法人 日本船舶技術研究協会(船技協)が主催する「船舶からの温室効果ガス排出削減に資する技術開発計画」の研究に参加し、支援を受ける予定であり、その予備審査はパスしている。
 「さらに、実際に船舶運航会社がこれを導入され、実際の船長判断に役立つかどうかです」(松本氏)。例え数%であってもCO2削減効果は大きく、船舶運航会社にとってはアピールポイントになるだろう。燃費の削減も極めて魅力的だ。加えてユーザーフレンドリーな操作性で、船長にも受け入れられると期待している。だが、単純に楽観してはいられない。
 「今後もCTCにはパートナーとして二人三脚のように一体となって走っていただきたい。技術開発に関してユニバーサル造船は先頭を走ってきた自負があります。これからも走り続けていくには、CTCの協力が不可欠です」と、松本氏はCTCに期待する。Sea-Navi®の実用化に向けて、ユニバーサル造船そしてCTCの努力は続けられている。

用語解説

吃水線
船舶が静水上に浮かんでいる時、船腹が水面に接する分界線。

隅切り技術
船の居住区や船体の角に隅切りを入れ(直角に切り取り)、風の抵抗を少なくする技術。

衛星通信回線
通信衛星を介した音声やデータ転送用の回線。極めて広範囲で災害に強い特長を持つが、高コスト。このため高度なデータ圧縮技術が必要となる。

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