JapanEnglish

事例・レポート

コラム

人事情報を“見える化”し競争力強化~クラウド活用で「効率化」と「透明化」を徹底~

人事は企業価値を高める戦略部門だが、多くの企業では定型業務に追われ、人事情報が属人的な管理にとどまっているため、社内の人材を生かし切れていない。しかし、グローバル競争時代を勝ち抜くには、給与計算などの定型業務を効率化すると同時に、人材を客観的に評価し、有効活用するためにもIT(情報技術)による可視化が不可欠だ。須田敏子・青山学院大学大学院教授と寺田育彦・伊藤忠テクノソリューションズ執行役員が、クラウドコンピューティングの普及を見据えつつ、人事戦略について語り合った。

目標管理や人材育成にもITを積極的に活用すべき

グローバル化対応に向けた人事部門でのIT活用

グローバル化対応に向けた人事部門でのIT活用

須田教授 : 年功序列、終身雇用、企業内組合をベースとする安定的な労使関係という日本型人事制度に転機が訪れています。その背景にあるのは、事業のグローバル化や国内の少子高齢化で、労働市場も急速に変化しています。また、人事部門のシステム化、情報化に消極的な日本企業の弱みも問題になっています。

寺田 : その通りですね。グローバル経営を進め、戦略を立案し、素早く実行するにはオープンイノベーションが重要なわけです。ところが、日本企業では、新規プロジェクトを立ち上げる場合なども、役員や部課長など担当者の人脈を基に構成メンバーを決める傾向が強い。例えば「A君は以前、似たようなプロジェクトに加わった経験があるから」といった属人的な情報で事が進められてきたわけです。

須田教授 : 従来の仕組みでは、どの部署にいたかはつかめても、どのような成果を上げたのかが見えないし、情報が共有化されていない。だから、入社年次や出身校で選ぶ形になってしまう。仕事の成果は、上司の頭の中にある“データベース”には入っていても、ほかの人はのぞくことも使うこともできないのです。

寺田 : そうした情報を蓄積し、グローバルで共有するのは、ITの得意とするところです。社員の経歴、保有スキル、目標の設定と評価などのデータベースを構築し、一元管理することにより、新規事業の立ち上げや海外工場の建設などに最適な人材をすぐにピックアップできる。つまり、属人的な「暗黙知」だったものを全社的な「形式知」にできる。私どもは「透明化」と呼んでいますが、人事情報を「可視化」することは、人事計画や能力開発といったキャリア形成の上でも役立ちます。
 もう1つ、人事部門の業務には給与計算や勤怠管理などの定型的なものもたくさんあります。ここでは「効率化」が課題で、既に多くの企業はIT化に取り組んでいますが、今後はさらに諸手当、各種税金、社会保険、年末調整などの処理をいかにシームレスにローコスト化を進めるかが重要な問題になっています。

グローバルな事業展開には経営戦略と人事戦略の一体化を

須田教授 : 本来、人事は戦略的な業務なのです。経営を担うのは人そのものなのですから、人事戦略と経営戦略は両輪でなければなりません。欧米の企業では最近、「エンプロイヤーブランド」への投資が増えています。これは、企業の雇用主としての評判、ブランド作りで、いかに働きやすい職場を提供しているかで、企業が評価されるようになったからです。人事部はこのブランドを作り、それが企業価値を高め、売り上げ増大にもつながるわけですから、もっと胸を張ってもいい。
 私は外国企業の人事マネジメントも研究しているのですが、海外では評価システムが標準化されているのに、日本ではなされていない一因に、人事部門の人間の流動性が挙げられます。欧米では、人事の専門家としてスカウトされることも多く、それが能力開発や評価の仕組みなど人事業務の標準化をもたらしています。その背景にあるのは、人事とは経営を支える人材を採用したり、組織を動かす仕組みを作ったりする創造的な仕事である、という理解ですね。

寺田 : 日本でも自動車や家電などの製造部門では、職種が明快に分かれており、評価の仕組みも確立されています。給与もそれに基づいて算出されるし、周囲の人々にも分かりやすい形になっている。その一方、本社の管理部門などのホワイトカラーとなると、職務範囲も曖昧で評価するのも極めて難しい。

須田教授 : しかし、その日本企業の方法はグローバルでは通用しません。グローバルで人材管理を行う場合は、採用にも昇進にも共通の指標が必要です。ところが、日本国内の基準をそのまま海外の現地法人に当てはめようとして失敗するケースが多い。人材の流動性の高さはもとより、本社採用と海外の現地法人採用ではロイヤルティーなどが全く違うのに、それらをきちんと理解していないことが原因です。今や日本と海外ばかりでなく、海外同士の人材交流も必要な時代なのです。日本の曖昧な評価の仕方を改めないと、海外で優秀な人材を採用し、引きつけておくのは難しいと思います。

ITも所有価値より利用価値初期投資を削減する月額課金制

寺田 : 先ほど、「経営は人が行うもの」という話が出ましたが、その基本は人事戦略です。そのために不可欠な情報の共有化、システム化には、クラウドコンピューティングを積極的に利用すればいい。これまで自社でシステムを構築する場合、3年とか時間がかかるうえ、多額の初期投資が必要でした。しかし、クラウドコンピューティングなら、月々の課金制で、すぐに最新のサービスを利用できます。しかも、IFRS(国際財務報告基準)のような制度、法令の変更にも即座に対応でき、陳腐化を心配することもありません。

須田教授 : 日本の企業が、従来の独自性にこだわった人事システムを取り続けるのか、見える化したシステムに切り替え、スピードとコストを追求するのか――グローバル競争時代にどちらを選択すべきかは明確ですね。人事部門は、クラウドコンピューティングを活用し、定型的な業務を効率化するとともに、競争力、優位性の獲得につながる創造的、戦略的な業務の充実に取り組んでほしいと思います。

対談者紹介

写真左:寺田 育彦/写真右:須田 敏子氏

写真左:寺田 育彦/写真右:須田 敏子氏

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
執行役員
エンタープライズシステム事業グループ
ソリューションビジネス推進本部 本部長
寺田 育彦

青山学院大学大学院
国際マネジメント研究科 教授
須田 敏子氏

※ 本記事は、日経ビジネス2010年7月19日号掲載広告からの転載コンテンツとなります。

お問い合せはこちらから

お問い合わせフォーム

記載内容は掲載当時のものであり、変更されている場合がございます。

トップに戻る