コラム

SEのためのストレージ講座

第1回 ストレージ仮想化の現実~ストレージ仮想化の利点~

更新

IT基盤のストレージの役割や課題から仮想化・統合化まで、CTCのエンジニアが解説します

著:クロスファンクショングループ プロダクトマーケティング室
インフラソリューション推進部 菅 博

ストレージの分野にも仮想化というキーワードが氾濫していますが、ストレージで仮想化という場合には複数のストレージ筐体をサーバからひとつに見せることを意味します。ストレージの仮想化はサーバの仮想化と比較すると、受け入れられるのにもう少し時間がかかりそうですが、ここでは仮想化の利点を整理したうえで、現状の問題点や限界にも言及しておきます。

ストレージ仮想化の利点

コンピューティング・システムにおける仮想化とは、リソースの抽象化を意味しています。つまり、コンピューティング・リソースの物理構造を利用する側から隠蔽して、より使いやすい形態で提供することです。複数のものをひとつに見せたり、逆にひとつのものを分割して複数に見せたりすることで利便性を高めることを目的としています。具体的な例としては、RAIDの技術は複数のHDDをサーバからはひとつのHDDに見せていますし、VMwareのようなミドルウェアはOSとH/Wを分離するだけでなく、単一のサーバを複数のサーバに論理分割することが可能です。

ストレージを仮想化(複数のストレージ筐体をひとつに見せる)するメリットは、大きく次の5つに集約されます。

  • 大容量プール
  • ヘテロジニアス環境の統合
  • リソースの最適化
  • 管理性の向上
  • パフォーマンスの向上

後の章で、現実はどうなのかということにも触れますが、とりあえずここではストレージ仮想化によって可能になること(メリット)について、一般的に言われている事柄を整理しておきます。

大容量プールを構成

図1

仮想化されたストレージはサーバからはひとつのストレージに見えるので、容量としては配下のストレージの容量が合計された大容量のディスクプールがサーバから利用可能になります。

ストレージを仮想化しない場合では、サーバは個々のストレージから個別にボリュームを割り当ててもらう必要があります。物理的にバラバラな複数のボリュームをアプリケーションや人間が管理するのは大変であり、個々のストレージの容量の制限から全体の拡張性にも制限があったりします。

ストレージを仮想化して単一に見せる、つまりサーバからはひとつの大容量プールが使えるようにすることで、物理的な制約が一気に取り除かれるためにサーバからの使い勝手が格段に向上します。

ヘテロジニアス環境の統合

図2

ベンダーが異なるか、同一ベンダーでも型式が異なるストレージ間の場合でも、サーバからはひとつのストレージ筐体として認識させる(というよりも、複数の筐体であることを意識させない)ことが可能になります。ストレージのOSはベンダーが独自で実装するために、同一ベンダーであってもレンジに応じて複数のOSを持っているのが普通であり、異なるOSのストレージ間で連携することは不可能でしたが、ストレージの仮想化はそうしたOSやレンジの違いを隠蔽してヘテロジニアスな統合環境を提供します。

これによって、既存ストレージの流用により投資を抑えることが可能になり、新しいストレージを購入する場合に用途に応じて既存ストレージと異なるものを購入したとしても、サーバからは統合環境下で違和感なく使うことができます。

リソースの最適化

図3

ストレージを仮想化すると、容量の平準化が図れます。ある特定のストレージだけが使用率が高く、あるストレージが全く使われていないなどの状況を回避することができます。また、全体容量としては単一筐体での制限をはるかに越えた容量を持つことができます。

また、仮想化することでパフォーマンスも適切に制御できます。あるストレージにアクセスが集中してパフォーマンスが劣化する場合には、アクセス頻度の多いデータを他のストレージに分散することによって、安定したパフォーマンスを確保することが可能です。

さらに、ストレージの性能や保全性とデータの参照度や重要度に応じて、ストレージとデータの組み合わせを適切にコントロールすることも出来るようになります。

管理性の向上

前述したリソースの最適化とも関係しますが、各ストレージが管理しているボリューム間でデータをオンラインでコピーしたり、あるボリュームのクローン・ボリュームを別のストレージに持たせたりすることが可能になります。単一筐体で行っていた時にはそもそも容量不足が問題で不可能だったことや、オフラインでの処理しか出来なかったことが、ストレージを仮想化することで簡単に実現できるようになります。

パフォーマンスの向上

グリッド型でストレージ仮想化を行うなら、単一筐体では頭打ちとなってしまうパフォーマンスを、複数の筐体を並列に動かすことでより高いパフォーマンスを引き出すことができます。サーバ分野におけるグリッド・コンピューティングと同様、複数のストレージ筐体が多数のクライアントからの要求を分散処理することで、システム全体のパフォーマンスを向上させます。

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