イベント・レポート

CTC Forum 2015 Tokyo ユーザー講演

グループの共通基盤構築とシステム統合
企業価値を向上させる「攻めのIT経営」とは

更新

230社超のグループ・シナジーを強化するIT戦略

  • ERP
  • 流通/運輸
開催日
主催
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
講演
アサヒプロマネジメント株式会社
アサヒプロマネジメント株式会社 業務システム部 副部長 齋藤 宏樹氏

アサヒプロマネジメント株式会社
業務システム部 副部長
齋藤 宏樹氏

アサヒグループホールディングスにとっての「攻めのIT経営」とは、ITによってグループ経営のシナジー効果を最大化させることに他なりません。しかし、アサヒグループは連結子会社が106社あり、その他を含めると合計で230社を超えます。これらのグループ企業はそれぞれが独自のシステムを持ち、グループ入りをすると各社の基幹システムをホストコンピュータに複写構築して運用していました。この状態では、マスタ、データ、アプリが重複散在する形となり、とても効率的な運用はできません。

そこでアサヒグループでは、2012年に散在したシステムを機能単位で集約するグループ共通基盤を構築しました。事業単位でマスタとデータを統合集約し、アプリや帳票も機能単位で集約したのです。こうしてIT共通基盤は構築できたのですが、それだけではグループ・シナジーを最大化する仕組みにはなりません。そのためIT部門が中心となって、海外を含めたグループ各社の業務プロセスを見直すことで収益向上に貢献していくことにしました。さらに共通基盤を活用したアプリケーションの統合や集約化を進めていきました。それにより、ITコストをさらに削減することを目標としたのです。

グループのITガバナンスを簡単に説明すると、ホールディングス会社はグループ全体のIT戦略、投資・費用の予算管理を行うのはもちろんのこと、グループ各社のIT資産についてもすべて集中管理します。予算管理、契約、調達などはアサヒプロマネジメントが代行します。グループ各社へは最適なITサービスをシステム利用料方式で提供するわけです。アサヒプロマネジメントには各事業会社の業務に精通した人材が集められ、さまざまなIT関連の企画策定や実行を通して、ITと業務の両方のプロを育成していきます。

こうした体制のもと、2013年から2015年にかけて新たな取り組みが開始されました。2012年の段階でグループ各社のシステムは共通基盤上で運用されていましたが、生産調達、原価計算、販売物流、財務会計の基幹系システムは、パッケージを含め、それぞれ独自のものを利用している状態が続いていました。これらを共通化させることでITコストを削減できます。また、できるだけスピーディに作業を進めるため、BPRを各社と検討しながら、業務ごとに「アサヒグループ標準テンプレート」を構築し、個別企業特有の業務への対応領域も考慮しながら導入を進めていきました。例えば生産系システムの統合では、すでにアサヒビールやニッカウヰスキーに展開されているシステムをテンプレートとして各社に展開していきました。こうしたプロジェクトでは既存業務とテンプレートのFIT&GAP作業は行っていません。アドオンやカスタマイズが大量に発生することを防ぐため、テンプレートに適合しない業務は改善または調整することで、できるだけ標準に近づけていくというアプローチで進めました。

こうしてグループ各社の業務改善努力やハードウェア刷新などで、年間約5億円のITコスト削減を実現することができました。また各基幹系システムで業務の高度化、運用保守の負荷軽減などが効果として現れ、グループを横断した統括的な経営管理体制が構築されました。

ただし、これで「攻めのIT経営」が完成したわけではありません。IoT、ハイブリッドクラウドなど最新技術への対応、モバイルやソーシャルメディア、ビッグデータの利用もさらに進めていかなければなりません。また、より利便性の高い経営情報の分析基盤も必要となるでしょう。今回の共通基盤構築とシステム統合をベースに、グループ経営に直接貢献できるIT戦略を進めていきます。

経営課題にスピーディに対応し、ITコストの最適化を図る。そのために必要だったグループ共通基盤へのITリソース統合

経営課題にスピーディに対応し、ITコストの最適化を図る。そのために必要だったグループ共通基盤へのITリソース統合

他講演レポート

2015年10月16日開催「CTC Forum 2015 Tokyo」の他講演レポートは、下記のリンクからご覧ください。

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