事例 全日本空輸株式会社 様

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“ストレスのないイレギュラー補償” に向けた国内初のシステムが稼働

課題と効果

課題
  • お客様は空港カウンターや郵送で手続きを行う必要があり、補償の受け取りは現金のみで最短でも1ヵ月程度かかっていた
  • 従業員が申請書類をお客様一人ひとりに手渡しするなど、空港における補償業務は対面による手作業で生産性の面で課題があった
効果
  • お客様は補償手続きをアプリやWebサイトで簡単にできるようになり、電子マネーなど多様な手段で迅速に受け取れるようになった
  • 補償提供におけるお客様満足度が向上するとともに、空港の補償業務は年間数千時間もの大幅削減に成功した

導入事例インタビューデータ

会社名
全日本空輸株式会社
本店
東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター
設立
1952年
従業員数
12,854名(2024年3月31日現在)
URL
https://www.ana.co.jp新しいウィンドウで開く
  • (写真左から)
    全日本空輸株式会社 サービスプラットフォーム部 デジタルチャネルチーム マネージャ 高見澤 翔貴氏
    ANAシステムズ株式会社 CXマネジメント部 CXエンゲージメント推進チーム 加賀崎 沙央里氏
    ANAシステムズ株式会社 CXマネジメント部 部長 中馬 俊比古氏

すべて手作業のイレギュラー補償業務をデジタル化してマイナスのお客様体験をプラスに

ANAグループは、空港や機内だけでなく旅前から利用後までのあらゆるシーンを1つのお客様体験として捉え、体験全体の価値を高めるための様々な取り組みを進めている。デジタル化もその中心的な位置を占める。2018年には「Customer Experience(CX)基盤」を構築し、各部門に分散していたお客様情報や運航情報などを全社横断で集約して各シーンに必要な情報をリアルタイムに利用できるようにした。また、2022年に新サービスモデル「ANA Smart Travel」を開始し、旅に必要な手続きをお客様のスマートフォン1台で完結できる環境を整えた。

お客様体験価値の向上に努める一方、完全には避けることができないのが、運航便の欠航や遅延といったイレギュラーである。もちろん、天候の影響や機材の不具合などによりイレギュラーが発生した場合は、立て替えた費用やお詫び金、その他の補償が受け取れる制度を用意している。しかし、その手続きは空港のカウンターに並んで申請用紙を受け取って後日郵送で送る必要があった。補償金の受け取りも空港での現金の受領もしくは口座振込に限られ、最短でも1ヵ月程度はかかっていたという。

全日本空輸株式会社 サービスプラットフォーム部 デジタルチャネルチーム マネージャの高見澤翔貴氏は、今回のイレギュラー補償のデジタル化の背景について次のように話す。「お客様にご迷惑をおかけしている状況にもかかわらず、空港で長時間お待ちいただくことや、補償提供の完了までに長いお時間を頂戴するなどの課題がありました。自宅で欠航を確認して空港にお越しにならないお客様もいらっしゃいます。欠航や遅延に加え、補償対応でのこうした課題によるマイナス体験で終わってしまうことを回避し、少しでも、プラスの体験につなげることで、次のチャンスをいただきたいという強い思いがあり、イレギュラー補償のデジタル化に踏み切りました」

BPMを中核にした変化に強く拡張しやすいイレギュラー補償システムを構築

こうした課題を解決するために実現されたイレギュラー補償手続きのサービスは、ANA Smart Travelのサービスの1つとして実装され、2024年7月から利用可能になった。イレギュラー情報の通知サービスは既に提供されていたが、これで補償手続きまで一気通貫にできるようになった。お客様は空港のカウンターに並んだり、郵送で手続きしたりする必要がなくなり、どこからでもスマートフォンなどで簡単に手続きを済ませられる。補償の受け取り手段も現金だけでなく電子マネーやANAマイルなどが選択可能になり、手続きの申請状況も照会できる。こうした取り組みは国内で初めてのことだ。

このサービスを可能にするプラットフォームとして開発されたのが、BPMを中核にしたイレギュラー補償システムである。イレギュラーの多様性や規定・約款の頻繁な変更に対応するためルールエンジンを組み込み、設定変更で対応できるアーキテクチャとし、プログラム改修を最小限にすることでアジリティの高さを実現した。個別の補償ケースをマニュアル登録できる機能を備えて、従業員の裁量を認める柔軟性も確保した。また、電子マネーなどでの支払いに外部サービスとの連携が必要になることから、マイクロサービスアーキテクチャを採用し、イレギュラーのピーク性を見据えて柔軟にリソースを割り当てられるクラウドネイティブなシステムとして構築した。

イレギュラー補償システムの開発プロジェクトをリードしたANAシステムズ株式会社 CXマネジメント部 部長の中馬俊比古氏は次のように話す。「お客様の情報は予約便の変更など刻々と変化します。補償対象のお客様を正確に判断するためにも、イレギュラーが発生した時点でご予約されているお客様の情報を抽出することがシステム要件として不可欠でした。こうしたリアルタイム性の確保は2020年にCTCと共同開発したストリーミングエンジンや、既存のCX基盤システムをはじめとしたデジタルプラットフォームを活用することで実現しています。また、イレギュラー補償の業務が変化することを想定し、BPMの機能を独立させ、拡張しやすいアーキテクチャ構成にしたのも大きな特徴です。お客様にとっても従業員にとっても『ストレスのないイレギュラー補償』を目指して開発しました」

このシステムを提案したCTCは、リアルタイムの状態変化を抽出するストリーミングエンジンの構築などの実績やOSSを自社で使いこなしてから提供する取り組みなどが評価され、プロジェクトのパートナーに採用された。開発の現場で中心的な役割を担ったANAシステムズ株式会社 CXマネジメント部 CXエンゲージメント推進チームの加賀崎沙央里氏は、CTCの支援について次のように述べている。「補償業務の現場をヒアリングした膨大なシステム要件を、難易度の高いエアラインシステムの研究をしながら設計に落とし込む姿勢にはとても感銘を受けました。導入後の運用サポートも開発時からの技術者が引き続き担当する体制が組まれ、問い合わせや問題解決にスピーディに対応してくれています」

補償提供におけるお客様体験が大きく変化、従業員の業務時間は年間数千時間も大幅に削減

ANA Smart Travelで利用可能になったイレギュラー補償手続きは、お客様アンケートの結果などでの評判も良好だ。イレギュラー補償システムの稼働前と比較すると、補償提供全体の満足度は約3%向上しており、中でも補償提供の迅速性については約7%と最も改善した。実際に「手続きがわかりやすく、スムーズに補償が受けられた。次回からもANAを利用したいし、人にもすすめたい」といった声も届けられているという。高見澤氏は、「イレギュラーでご迷惑をおかけしたお客様にご満足いただけるのはもちろん大切ですが、そのお客様が家族や友人にANAをすすめてくれることが弊社の最も目指すところです」と手ごたえを感じている。

空港における補償業務にも大きな成果が出ている。すべて手作業だった補償業務がシステム化され、空港カウンターでの対応からバックオフィスの様々な業務、補償提供の準備から後処理までをトータルすると、年間で数千時間の業務時間が削減され、従業員の生産性と働きやすさが改善した。「イレギュラー対応はお客様にご迷惑をかけてしまうという点で従業員にとってもストレスがかかる場面です。特に補償業務は精神的にも体力的にも大きな負担になっていました。今回削減できた時間を人だから発揮できるお客様ケアに振り向けて、新たなお客様体験の創出とさらなるサービス改善を図っていきます」(高見澤氏)

ANAグループのDX戦略を支え、新たなお客様体験価値の創造に貢献

ANAグループは、訪日外国人の増加や国内の移動需要の回復でますます多様化するお客様ニーズに対応するため、業務やサービスのデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速している。DXを経営戦略の中心に据え、生産性向上とお客様や従業員体験価値の向上に取り組み、最新テクノロジーを活用することで、人が人でしかできない仕事に集中できる「人とデジタルのベストミックス」な環境づくりを目指す。今回のイレギュラー補償業務のデジタル化もこうした取り組みの一環で、お客様体験が変わり、従業員の働き方も変わる重要な契機となった。今後もその役割に大きな期待が寄せられている。

今後の展望について、高見澤氏は次のように話している。「イレギュラー補償のデジタル化で得られるようになった新たなお客様データを蓄積・分析して、お客様の体験価値に活かし、ANAグループとしての価値創造サイクルに乗せていきたいと考えています。また、AIなどの最新テクノロジーとの組み合わせによる機能拡張も検討します。生成AIが人のパートナーとして重要な存在になることは明らかで、人でしかできない価値創造に注力できる環境づくりに活用していければと思います」

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