石油・天然ガス探査に欠かせない
技術文書をクラウドに移行し
業務効率化とデータ利活用を推進
課題と効果
課題
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- 様々な紙文書が外部倉庫に保管されており、情報検索性に改善の余地があった
- 倉庫保管料や輸送費などの高騰、紙の経年劣化による情報損失のリスクも問題視
- オフィスのリニューアルや移転に伴うキャビネット数の減少
効果
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- 紙文書の電子化とクラウド移行で、あらゆる環境下での迅速な情報アクセスが可能
- 情報の検索性が向上して手戻りも減少したことで業務効率を大幅に改善
- 保存費用のコスト低減およびオフィスのスリム化
導入事例インタビューデータ
- 会社名
- ENEOS Xplora株式会社 ※2025年1月1日付でJX石油開発株式会社から改称
- 所在地
- 東京都港区麻布台一丁目3番1号 麻布台ヒルズ森JPタワー9F
- 設立
- 1991年6月26日
- 事業内容
- 石油、天然ガスその他の鉱物・エネルギー資源の探鉱、探査および開発。石油、天然ガスその他の鉱物・エネルギー資源およびそれらの副産物の採取、加工、貯蔵、売買および輸送。二酸化炭素の回収、輸送、貯留および利用。
- URL
- https://www.eneos-xplora.com/
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ENEOS Xplora株式会社
デジタル推進部 デジタル推進グループ グループマネージャー
塚田 和洋氏
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ENEOS Xplora株式会社
デジタル推進部 デジタル推進グループ
中根 康貴氏
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ENEOS Xplora株式会社
デジタル推進部 デジタル推進グループ
山田 勝之氏
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ENEOS Xplora株式会社
法務部 コーポレート&コンプライアンスグループ
グループマネージャー黒葛原 麻衣子氏
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ENEOS Xplora株式会社
法務部 コーポレート&コンプライアンスグループ
宇賀耶 崇氏
ENEOS Xplora(旧JX石油開発)は、国内外で石油・天然ガスの開発・生産を行う日本を代表する資源開発企業だ。だが、そんな同社にとって長年の課題となっていたのが、重要な情報を記録した膨大な紙文書の取り扱いである。外部倉庫に保管されていることから、依頼してから届くまでに1週間程度のリードタイムを要していた。加えて紙の経年劣化による情報損失や保管によるコスト増加も懸案となっていた。この課題を解決すべく文書電子化サービス「FromDoc」を導入し、業務効率化とデータ活用に乗り出した。
大量に蓄積された文書を
新たな企業価値の源泉として活用
エネルギー・資源・素材分野において日本を代表するENEOSグループの主要事業会社として、国内外で石油および天然ガスの開発・生産事業を手がけているENEOS Xplora。近年ではこの基盤事業の強みを活かし、排出されたCO2を集めて地中に貯留するCCS(CO2回収・貯留)/CCUS(CO2回収・利用・貯留)技術を活用した「環境対応型事業」を、将来の成長を支える第二の軸として展開している。
そんな同社が今、注力しているのが、社内に蓄積された紙文書、紙媒体データの電子化である。エネルギー資源の開発・生産事業に長年携わってきた同社は、唯一無二とも言うべき貴重な技術文書、データを大量に所有している。「坑井(こうせい)ログ」と呼ばれるデータは、その最たるものだ。
資源探索において事前調査から有望な場所が見つかったならば、まずは試掘井を掘って実際に石油や天然ガスが存在するかどうかを調査する。そして埋蔵の可能性が高いと判断された場合、探掘井を掘って地層の特性(密度、抵抗率、放射能など)や坑井の形状(孔径、傾斜など)、油層の流れなどを調査する。要するにこれらの情報を深度ごとに記録したものが坑井ログであり、今後のエネルギー探査・開発に際しても重要な情報源となる。
同社 デジタル推進部 デジタル推進グループグループマネージャーの塚田 和洋氏は、「坑井ログをはじめとする技術データはインターネット上にもない独自の知的財産であり、弊社の競争力を支えています。また、最新の探査技術から得た知見と組み合わせることで、新たな企業価値を生み出していく源泉となります」と語る。
ただし、こうした技術情報も紙の文書のままでは十分に活用しきれない。そこで電子化に向けて本腰を入れた取り組みを開始したというわけだ。
紙文書を電子化するだけでなく
関連データとあわせてクラウド移行
ENEOS Xploraの社内において、膨大に蓄積された紙文書の電子化に向けた機運はどんな形で高まっていたのだろうか。同社 デジタル推進部 デジタル推進グループの中根 康貴氏は、このように語る。
「コロナ禍以降、当社でもテレワークが定着したのですが、そこで顕在化していたのが紙文書を利用する際の不便と非効率な業務です。大量の紙文書はENEOS Xploraが委託している情報資産管理会社が運営している倉庫で保管されており、必要な文書を指定して取り寄せるのですが、本社に届くまでに1週間程度のリードタイムを要します。さらにテレワーク中の社員は、必ず本社に赴かなければ届いた文書を閲覧することができません」
さらにコストも問題視されており、同社 法務部 コーポレート&コンプライアンスグループ グループマネージャーの黒葛原 麻衣子氏は、「法務部では文書管理も所掌業務の一つとして担っており、紙文書の整理や外部倉庫の管理、年に一度の文書整理期間の運営などを、デジタル推進部と連携して行っています。こうした紙文書全般の取りまとめだけでなく、毎月の倉庫保管料の高騰が負担となっていたのです。」と明かす。
一方で懸念されたのが、文書の経年劣化である。同社 デジタル推進部 デジタル推進グループの山田勝之氏は、「どれほど適切な温度や湿度に配慮した環境下で保管したとしても、紙である以上、破損や変色などの変化を完全に防ぐことはできません。技術文書の中には、当時の担当者が手書きでコメントを記したものもあり、劣化が進むと解読や復元が難しくなってしまう不安がありました」と語る。
これらの課題を解決すべく、同社は紙文書を単に電子化するだけでなく、関連データとあわせた形でクラウド移行を進めていくことを目指した。「これにより生成AIを含めた新技術と組み合わせたデータの高度な有効活用を図り、業務効率化ならびにDXを推進していきます」と塚田氏は、その目標を示している。
CTCの実践的なノウハウや
成果品質を評価しFromDocを導入
具体的にどういった手段で紙文書の電子化を進めていくのか。同社が最終的に採用を決めたのが、CTCの「FromDoc」だ。これは、富士フイルムRIPCORDが提供している文書電子化サービスをベースとし、ロボティクス技術とAIを活用することで大量文書を高速にデータ化するスキャンニングサービスである。文書管理のコンサルティングから電子化作業、BPOサービスまでをパッケージで提供することで、既存の紙文書を企業の情報資産として価値あるかたちで再構築するまでを、ワンストップで支援できる点が大きな特長である。
「もともと当社は坑井健全性ソフトウェアなど、技術系パッケージの導入に関してCTCと取引を行ってきた実績があります。また、CTC社内でも紙文書の電子化を推進していることを聞き、実践的なノウハウを有していることに期待しました」(塚田氏)
もっとも最初からCTCに決め打ちでFromDocを選定したわけではない。技術文書やデータは電子化する際に高い精度が求められることから、ベンダー数社の文書電子化ソリューションを比較検討した結果、FromDocによる成果物のクオリティが最も高いと判断されたのである。
「当社が保有する技術系の紙媒体データは坑井ログをはじめきわめて高い精度が求められるほか、A0サイズやロール紙といった大型図面が非常に多いのも特徴です。そういった文書やデータに対してホチキスの取り外しや付箋で貼られたコメントのスキャンなどにも柔軟に対応するとともに、品質も卓越していました」(中根氏)
それに続けて山田氏は「クラウドでデータを資産として活用する以上、デジタル化の品質が重要です。品質が低ければ活用の幅が狭まり、意味が薄れてしまいます。FromDocは高品質なデータ化が可能で、生成AIや情報の横断的活用にもつなげやすいと判断しました」と選定理由を語る。
こうして2023年4月にFromDocを導入した同社は、社内の文書管理を所管する法務部とデジタル推進部が緊密なタッグを組みながら、紙文書の電子化にあたっている。法務部 コーポレート&コンプライアンスグループの宇賀耶 崇氏は「今回の取り組みに先立ち、電子化を完了した紙文書については破棄しても構わないといった社内規程の改定も進めてきました」と話す。
もっとも、文書電子化の実作業では苦労することも多いのも事実だ。
「電子化の可否を判断するためには、外部倉庫からいったん文書を引き出し、その中身を1つずつ確認する必要があります。ある程度の期間を設けたうえで全社的にこの棚卸作業への協力を依頼しているのですが、どうしても消極的な部署も見受けられます。各部署にできるだけ負担をかけずに効率的に電子化を進める方法がないものか、今後もCTCのサポートを得ながらより良い解決策を検討していきたいと考えています」(中根氏)
紙文書の電子化で業務効率と検索性が大幅向上
歴史文書の継続的な電子化で有用情報の利活用へ
苦労を重ねながらも紙文書の電子化が徐々に進んだことで、同社の業務にも様々な成果があらわれはじめている。
「紙文書が電子化されてクラウドに移行したことにより、文書が届くまでに1週間程度を要していたリードタイムはほぼ0(ゼロ)に短縮されています。テレワーク中を含むあらゆる環境下で必要な技術情報にアクセスできるようになり、文書の検索性が高まったことから手戻りもなくなり、業務効率は大きく向上しています。さらに紙の経年劣化の心配はなくなり、紛失リスクも解消されています」(中根氏)
続けて山田氏は「社員の半分が技術者ということもあり、技術力の強化は競争力に直結します。過去の技術評価や試行錯誤の記録を掘り起こして活用できるようになったことで、技術情報が資産として機能し、付加価値の創出にもつながっています。こうした取り組みは、グローバル競争の中でも確かな強みになると感じています」と語る。
また、紙文書の管理を取りまとめる法務部の観点から「電子化とあわせた紙文書の破棄を進めたことで、キャビネットの収容量を半分以上削減した部署の例もあります。この成果は外部倉庫における保管コスト削減はもとより、オフィスのスリム化にもつながっていきます」と宇賀耶氏は成果を述べる。
ただし、同社の取り組みはまだ道半ばであり、今後も紙文書の電子化に継続的に取り組んでいく方針だ。
「社内全体にまだ大量の紙文書が存在しており、そのほとんどが外部倉庫に保管されています。そうした歴史的な資料の中には、私たちが気づいていない有用な情報が眠っている可能性があります」と黒葛原氏は語り、紙文書の電子化に継続的に取り組むとともに、その先で実現するより高度なナレッジ活用の在り方を展望している。