1956年の創立以来、アニメや映像コンテンツの製作・販売、そこから派生する版権事業を主力事業としてきた東映アニメーション株式会社(以下、東映アニメーション)。国内外で劇場作品269本、テレビ作品238本を展開している世界でも有数のアニメプロダクションであり、事業全体では売上の半分以上を海外市場が占めるなど、グローバルなビジネス展開も実施している。
課題と効果
課題
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- 社外とシステムを介したコミュニケーションを実現するインフラ構成
- 社外へ公開するシステムに対するセキュリティリスクへの対応
- 海外などのシステム部門が弱い組織に対するシステム展開の難しさ
- アプリケーション担当主体でのインフラ運用
効果
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- AWSマネージドサービス活用によるクライドネイティブなインフラ構成によりセキュリティ強化ができたほか、運用ストレスが低減
- アプリ開発エンジニアがインフラ環境を保守・運用できる体制の実現
- CDK、CI/CDパイプラインによるインフラ品質向上と運用負荷軽減、開発効率向上
導入事例インタビューデータ
- 会社名
- 東映アニメーション株式会社
- 所在地
- 東京都中野区中野四丁目10番1号 中野セントラルパーク イースト5階
- 創立
- 1956年
- 事業内容
- アニメーション製作および販売、版権事業、関連事業
- URL
- https://www.toei-anim.co.jp/
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東映アニメーション株式会社
経営管理本部 情報システム部 システム室
チーフマネージャー榊原 健司氏
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東映アニメーション株式会社
経営管理本部 情報システム部 システム室
兼 営業企画本部 映像事業部 映像営業室
アシスタントマネージャー友次 拳太郎氏
国内外で発生したシステム化要望に対する課題
東映アニメーションが直面した課題は大きく2つ。
1つは国内の版権事業における商品化権の企画申請・管理業務の煩雑化と情報分散に対するシステム化要望、もう1つは海外拠点からの業務システム化の要望である。
版権事業における商品化権では、取引先から新商品企画が申請され、それが世に出た際に発生するライセンス料を収益とするビジネスモデルである。システム導入前は、各営業担当が取引先からの企画申請に対して個別対応を実施しており、情報が分散し案件全体の可視化や引き継ぎが困難になっていた。「各営業担当がそれぞれお客様とコミュニケーションを取っていたため膨大な数の案件の状況が見えず、その後の著作権使用申請においても企画申請との整合の確認が非常に困難な状況となっており、業務負荷が高まっておりました」と榊原氏は振り返る。ユーザーからは取引先の申請からシステム化できないかという要望を受けていたが、従来の境界型ネットワーク構成では外部からのアクセスを許可するシステム構成の実現が難しく、取引先とのやり取りを含めたシステム化に対しては慎重に検討する必要があった。
一方、海外拠点では、欧州圏の販売会社から「Excelで管理している契約管理業務をシステム化したい」という要望が寄せられた。しかし、業務に見合うパッケージ製品は限られており現地製品ではマッチするものがなかったほか、現行業務フローをあまり変えずにシステム化したいという要望もあったことから、内製でアプリ開発を行うこととした。一方、現地にはIT部門がないため、システム化のためのリソースやシステムの運用ノウハウが不足していたことから、本システムのインフラをどこに配置し誰が運用していくかという課題があった。
CTCと描いたAWSを用いた課題解決を行えるインフラ構成
課題を解決するには要件を満たす構成でインフラの刷新を図る必要がある。「様々な要望を出させていただきましたが、特に重要視したのがセキュリティ要件と、インフラ運用を自社のアプリ開発メンバーで行えることでした」(榊原氏)
こうした背景から、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)はAWSのマネージドサービスとコンテナ技術を活用したクラウドネイティブ構成で、セキュリティ強化と業務効率化を両立するシステムを提案。これらのシステム化を実現すると共に、社内エンジニアが開発するアプリケーションを柔軟かつ効率的に実装できる基盤を整備し、AWSのマネージドサービスを組み合わせることで、運用負担の軽減を目指した。「CTCには、我々の要件を丁寧にヒアリングしていただき、どのサービスをどう組み合わせれば効率化できるかを設計してもらいました。我々はアプリケーション出身であったことからAWSサービスには詳しくありませんでしたが、インフラ設計書をレビューすることで我々が求めた内容が実現できていると納得して進められました」(榊原氏) 国内の版権事業におけるシステムでは、インターネット上から取引先がアクセスするルートと社内ネットワークから営業メンバーがアクセスするルートがあるが、それぞれを別で管理し、重要なリソースは外部には出さず秘匿されたネットワーク下に配置した。「国内の版権事業においては、不特定多数の取引先がアクセスすることから、アクセス元IPアドレスの制限を掛けることが難しく、セキュリティ面での不安がありましたが、それを払しょくできる構成になり、実現したかったシステムを介した社内外でのコミュニケーションを達成できました」(榊原氏)
また欧州の海外拠点のシステム化においては、海外拠点内のNW環境下に本システムを配置せず、インターネット上のサービスのような形で現地メンバーが利用できる仕組みとし、インフラ環境は日本のメンバーが運用保守できるような環境を整えられた。「インフラ環境はほぼPaasの仕組みで構築していることから、我々はインフラ環境をあまり意識せずサービスとして利用することができ、アプリケーション開発に集中することができました」(榊原氏)
様々なメリットを生むマルチリージョン構成
今回のAWS導入では、国内と欧州圏の2拠点にほぼ同一構成のインフラを構築した。これは東映アニメーションにとって外部と共有するシステムのインフラ、海外へ提供するシステムのインフラとして標準的なインフラ構成が出来上がったことを示している。
この構成では、多くのAWSのマネージドサービスを活用しているためインフラ環境はAWSの定義するSLAに準拠しており、インフラ運用によるストレスから脱却することができている。さらに、管理コンソールから双方の環境を簡単に切り替えて確認することができ、サービス正常性やリソース状況の確認のしやすさなど、インフラ環境の管理運用においても効果が出ている。また、本環境はIaC(インフラのコード管理)で構成されているため一貫性のあるインフラ環境設定であり、多くのインフラサービスを交えた構成をCDKにてコード管理している。これらのソースコードはGitHubと連携しており、バージョン管理と同時にインフラ構成のバックアップにもなっている。デプロイ時はこれらのコードを利用すればよいので災害対策としても強固なつくりである。同様の環境を別環境で構築する際にもこれらのコードを利用すればよいので、システムの横展開においても低工数で対応可能である。
CI/CDによる開発効率向上
AWS上の2つのインフラ環境については、IaC(インフラのコード管理)が適用され、CI/CDにより、AWSのCodePipelineを実行するだけで簡単にインフラ環境をデプロイできる仕組みになったことから、非常に管理運用がしやすくなったと東映アニメーションの2名は語る。さらにインフラコードはGitHubにてバージョン管理されている。「この構成は当社のアプリケーション開発でも利用できるはずと考え、自分たちの開発手法へ取り入れました」と友次氏は語る。従来の東映アニメーションのWebアプリのシステム開発では、ソースコードはクラウドストレージ上で管理していたものの属人管理になっており、さらにブランチの考え方がないために複数人で同時開発できない課題があった。東映アニメのアプリ開発においてもGitHubを活用し、更にAWSのCodePipelineを用いてプログラムのデプロイも行えるように設定したことで、管理運用、開発の効率化において多大な効果が表れた。「従来、環境への修正ソースコードデプロイ時にはサーバへアクセスし、サーバ上でプログラムを配置しなければならず、作業負荷だけでなく細心の注意を払う必要がありました。今回、修正したソースコードをストレスなく環境へビルドできる仕組みが整い、アプリ開発おいてもDevOpsの考え方が浸透したと感じます」(友次氏)
新システム導入による業務の変化と期待
新システムの運用開始後、東映アニメーションの現場からはポジティブな評価が寄せられている。版権事業では、企画申請及び著作権使用申請管理の業務が大幅に効率化され、情報の一元管理が実現したことで、担当者の引き継ぎや業務分担もスムーズになった。「導入したシステムを主軸に業務を行えるようになり、自身のタスク管理、取引先や社内とのコミュニケーション、各種会議での報告などが以前に比べて改善されたと聞いております」(榊原氏) また、「誰が、いつ、どれくらいの案件をという情報が可視化されたことでメンバーの評価基準としても利用できるようになりました」といった現場管理層の声も上がっている。
海外販売会社向けのアプリでは、社内稟議、契約管理、契約情報管理、請求・ロイヤリティ計算、承認ワークフロー、レポート・分析など、現場の業務に即した機能を実装。現地スタッフも直感的に操作できるUIを実現し、業務効率の大きな向上を目指した。
マネージドサービスによって安定したインフラ環境を得られただけでなく、インフラ運用の負担が最小限にとどまったことで、アプリ開発エンジニアがシステム開発に集中しながらも並行してインフラを保守・運用できる体制が整い、CTCによる最小限の運用フォローで内製化が進んでいる。
さらなる進化とグローバル展開の展望
要望のあった欧州圏のシステムリリースは近々予定されており、今後もCTCと協力しながら業務効率化とグローバル展開の加速を目指していく方針だ。今回のプロジェクトによって、アプリやインフラを含めた環境全体を他拠点へ展開できる体制が整い、更なるグローバル展開も計画されている。
これからもCTCとのパートナーシップを活かし、東映アニメーションのグローバルビジネスを支えるIT基盤の進化を追求していく。「今回のインフラ構築のプロジェクトを経て、当社が内製開発するアプリケーションの利用の幅が広がりました。まだ改善点はありますので、これからもCTCと協力してより良い環境にしていきたいと考えています」(友次氏)