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トヨタ自動車株式会社 様

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TOYOTA

仮想GPUによるCAD VDIで設計開発プロセスを加速「設計開発業務の働き方改革を実現」

  • NVIDIA vGPU

トヨタ自動車は、2016年にOfficeアプリケーションなどを使う通常業務の働き方改革を実現しており、CADを利用する設計開発業務においても働き方改革を実現したいと考えていた。
そこで同社のDX開発推進部が中心となり、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の支援のもと、2020年2月にNVIDIAの仮想GPU技術を本格導入し、CAD VDI環境を構築した。
中でも、トヨタZEVファクトリーのZEV B&D Labは、CAD VDIを全面的に導入し、多くのCADエンジニアが様々なロケーションでCADを利用できるようになった。

導入事例インタビューデータ

会社名
トヨタ自動車株式会社
所在地
愛知県豊田市トヨタ町1番地
資本金
6,354億円
代表者
豊田 章男
従業員数
74,132人/連結 359,542人2020年3月末現在)
URL
https://global.toyota/jp/新しいウィンドウで開く
  • 集合写真

    上段左から:DX開発推進部 グループ長 稲垣 知大氏、DX開発推進部 大石 剛氏、DX開発推進部 主任 井川 幸一氏、DX開発推進部 野々山 桃子氏、DX開発推進部 主査 孝久 正信氏
    下段左から:DX開発推進部 青山 由美子氏、ZEV B&D Lab主幹 山田 晃氏、ZEV B&D Lab 主任 清水 和貴氏

設計開発業務の働き方改革を実現するには通常のVDIでは力不足

DX開発推進部 主査 孝久 正信氏

DX開発推進部 主査 孝久 正信氏

トヨタ自動車は、1937年に設立された世界有数の自動車メーカーであり、2020年の自動車販売台数は世界1位を誇る。
まさに日本を代表する企業だ。

同社は2016年より、VDI環境を導入し、約1万3,000人の従業員を対象にリモートワークの制度を拡大、主にOfficeアプリケーションなどを使う通常業務の働き方改革を実現していたが、デジタルトランスフォーメーションによるさらなる働き方改革を推進するには、ハイエンドCADを利用する設計業務のVDI化が急務であった。

しかし、ハイエンドCADを通常のVDIで利用するには、パフォーマンスが足りないという問題があった。

その中でCAD VDIの導入に中心的な役割を果たした部署が、同社のデジタルトランスフォーメーションの推進を行うDX開発推進部である。

DX開発推進部 主査 孝久正信氏は、「設計開発部門ではハイエンドな3D CADを使っているため、自席に設置している物理ワークステーションの利用が不可欠でした。
リモートでのパフォーマンスの課題もあり、リモートワーク普及のネックになっていました。」と語る。

いち早くNVIDIAの仮想GPU技術に注目、2018年にCAD VDI環境の初期導入を開始

DX開発推進部 主任 井川 幸一氏

DX開発推進部 主任 井川 幸一氏

そこでDX開発推進部が目を付けた技術が、GPUを仮想化することでVDI環境でも高いパフォーマンスを実現できる仮想GPU技術である。
DX開発推進部は、2016年頃からNVIDIAの仮想GPU技術「NVIDIA vGPU」を利用した、CAD VDIの実現に向けて検討を開始した。

NVIDIAの仮想GPU技術に注目することになった経緯について、DX開発推進部 主任 井川幸一氏は、「NVIDIAさんとは、以前から働き方改革に関して相談をしていました。

当時の手段ではコスト的な面で、CAD VDIの実現はまだ難しいだろうと思っていました。
しかし、NVIDIAさんやVMwareさんからGPUを仮想化できる技術をご案内いただいて、その課題が突破できるかもしれないとの期待から、実現に向けた検討が加速しました。」と説明する。

DX開発推進部 大石 剛氏

DX開発推進部 大石 剛氏

また、DX開発推進部でCAD VDIのシステム側の導入を担当した大石剛氏は、具体的な検討の進め方について、「検討初期からユーザーと一緒に試行を進めて、画質、レスポンス、ネットワーク環境など、現地現物でテストとチューニングを繰り返しました。
その結果、CADの主な使い方ではOKということになり、CAD VDIの導入が現実の物となりました。」と語る。CAD VDIの導入プロジェクトは、トヨタ自動車のCAD利用者すべてを対象とする一大プロジェクトである。

DX開発推進部 グループ長 稲垣 知大氏

DX開発推進部 グループ長 稲垣 知大氏

CAD VDI導入プロジェクトのとりまとめを行ったDX開発推進部 グループ長 稲垣知大氏は、「CAD VDI導入プロジェクトは、社内にあるCAD標準機の物理的なワークステーションを仮想化したCAD VDIに置き換え、オフィスのノートPCから利用可能にし、設計者がどこでも働くことができるようにする取り組みです。
設計部門、生産技術部門、各工場などでCADを利用しているすべての部署が対象となります。」と語る。
同社は、2018年にCAD VDIの初期導入を開始し、ユーザーからのフィードバックやシステム運用の改善などを繰り返し、その結果を踏まえて2020年2月から本格的にCAD VDIの導入を開始した。

CAD VDIの導入により、働き方改革を実現

ZEV B&D Lab 主幹 山田 晃氏

ZEV B&D Lab 主幹 山田 晃氏

CAD VDIの導入は全社的なプロジェクトであるが、その中でも、CAD VDIの導入に積極的であり、社内におけるモデルケース的な役割を果たした部門が、トヨタZEVファクトリーの新しい部署である「ZEV B&D Lab」である。ZEVとは、Zero Emission Vehicleの略で、環境に優しい車両を意味する。
具体的には、電気自動車や燃料電池車が該当する。ZEV B&D Labは、トヨタ自動車の中でも比較的新しい部署で、働き方改革を率先して行っている。
これまでのオフィスでは、物理ワークステーションが机に設置されていたが、この事が作業スペースを狭くし、さらに端末からの発熱がオフィス全体の温度を上げることに繋がるなど作業環境の悪化に拍車をかけていた。

また、フロア内改装やロケーション変更などで、端末の移設が必要になると、設置場所設計、移設準備・作業、設営など手間やコストがかかり、機器破損や紛失のリスクも伴うといった課題を抱えていた。

現在のZEV B&D Labのオフィスは、2021年1月に完成したが、このオフィスは最初からCAD VDIの利用を前提として設計されており、席はフリーアドレスを採用したことで、CAD VDIの機動性を生かした構成になっている。

ZEV B&D Labの特徴について、CAD管理を担当しているZEV B&D Lab 主幹 山田晃氏は、「ZEV B&D Lab は、事業や車両の企画から、設計、生産まで一貫して1つの部の中にあることが特徴です。

すなわち、様々な働き方が存在することになります。これに対応できる『いつ、どこで、どうやって働く』を自在に選べる働く場として、このオフィスを作りました。

CAD VDIは、DX開発推進部から紹介があり、活用を進めてきましたが、まさにこの『いつでも、どこでも』を実現するために、重要な役割を果たし、ZEV B&D Labでは不可欠なアイテムとして活用されています。」と説明する。

ZEV B&D Lab 主任 清水 和貴氏

ZEV B&D Lab 主任 清水 和貴氏

NVIDIAの仮想GPU技術を使ったCAD VDIのパフォーマンスは十分満足できるものであり、これまで働き方改革からは遅れていた設計開発業務に携わる従業員にとって、待ち望んでいたものとなった。
実際にCAD VDIを利用して車両の設計を行っている、ZEV B&D Lab主任の清水 和貴氏は、「ストレスなく作業できていますし、なによりCADを持ち運べる点にメリットがあります。様々な部署とすり合わせ業務を行う際、これまでは会議設定や説明資料が必要でしたが、CAD VDIなら相手先に出向いてCADを見せながら会話ができます。

コミュニケーションが気軽に多頻度に行われるようになり、正味の設計時間が増えリードタイムが短縮しました。」と語る。
また、CAD VDIによって在宅勤務が可能になったことで、ワークライフバランスやモチベーションの面でもメリットがあったと、清水氏は喜ぶ。
「弊社では在宅勤務等の制度は整っていましたが、CAD作業は出社しないとできず設計者はあまり活用できていませんでした。
CAD VDI導入によって出社の制約がなくなり、1日のスケジュールをより自由に組めるようになりました。
例えば、静かで集中できる早朝にCAD作業を終わらせて、家族とゆっくり朝ごはんを食べ、その後必要に応じて出社といった働き方をしています。
そのほか、平日夜に大学院講義を受けたり、家族の体調に合わせたりといった理由で、柔軟に勤務場所を変えることができています。
在社中も作業場所を自分で選べるので気分転換できますし、CAD VDIによって公私が一層充実したと感じています。」(清水氏)

DX開発推進部 青山 由美子氏

DX開発推進部 青山 由美子氏

トヨタ自動車のCAD VDI導入プロジェクトにおいて、DX開発推進部とタッグを組んで、インフラ環境やCAD VDI仮想環境の設計、構築を支援したのがCTCである。
稲垣氏はCTCについて、「CAD VDI導入当初の環境から、改善に改善を重ね、継続してCTCさんに対策をやっていただいてとても助かりました。」と評価する。
CAD VDI導入がスムーズに進んだのもCTCの支援があったからだと、孝久氏は語る。

「CTCさんは、CAD VDI検討段階から、ご支援いただいているベンダーさんです。
どうやって実現させましょうかと、各主要メーカーと調整いただき、国内や海外での情報収集の機会など多岐に渡りご支援いただきました。
専任のエンジニアを付けていただき、常駐で対応してもらい、本当に安定するまではかなりご苦労をおかけしました。」(孝久氏)

ZEV B&D LabへのCAD VDIの導入はスムーズに進み、利用者も増えている。

CAD VDIを浸透させるためのポイントについて、DX開発推進部の青山由美子氏は、「弊社には多くの部署があり、それぞれに特色がありますので、すべて同じやり方でできるわけではありません。
各部署のCAD管理者と話をさせていただいて、その部署の業務内容に合わせた方法を相談し、展開しています。」と語る。

DX開発推進部 野々山 桃子氏

DX開発推進部 野々山 桃子氏

CAD VDI導入プロジェクト全体の進捗状況について、DX開発推進部 野々山桃子氏は、「CAD VDIは、管理、設計、モデリング、実験・解析、生産準備といった様々な業務で利用しており、CAD VDIの導入だけで見れば、現在は目標の約5割を達成したところですが、業務によっては従来のワークステーションでなければ性能が満たされないものもあるため、一気に全展開とまではいかない状況です。」と説明する。

ZEV B&D Labの山田氏とDX開発推進部の孝久氏は、現状のCAD VDIのパフォーマンスは技術的な観点では満足いくレベルだが、今後はさらなる性能向上に期待したいと声を揃えた。「物理ワークステーションと比べるとまだ若干動作が緩慢だと感じることはあります。ですから、物理ワークステーションを超えるような性能を期待したいです。そうなった時に、全てをCAD VDIに置き換えたいと思います。」(山田氏)

「今後もCAD VDIへの置き換えを推進し、さらに他のトヨタグループ企業にも同様の仕組みを紹介していく予定です。さらなる性能アップで、CADのハイスペック化、処理負荷が高いデザインやCAEなどもVDI上に構築し、他部門のさらなる働き方改革の促進、業務のDXを目指していきます。」(孝久氏)

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