探査用波動の反射を計測
通常、地面の下を実際に見るためには、膨大な費用をかけて掘削して調べています。石油や鉱物などの資源探査でも、ボーリングという掘削作業を行って、地下にどのような地層が形成されているかを調査しますが、1次元(線情報)として把握するにとどまります。しかし、最近ではIT(情報技術)によって地下を3次元的に可視化(把握)する技術の導入が進んでいます。
例えば、資源エネルギー庁が導入した3次元物理探査船の「資源」は、3次元海上音波探査装置を使って、海底の地層を探査しています。それは、CTスキャンで人の体の中を映像化してみせる仕組みに似ています。音波などを中心とした数種類の探査用波動を地面に当てて、その反射を計測し地下の構造を3次元のデータとして収集します。
しかし、単純に探査装置で収集したデータだけでは、実際の地層構造を見えるようにまではできません。膨大な地層構造のデータを私たちでも見えるようにするためには、バーチャルリアリティー(VR)技術が必要です。VRというITは、私たちが実際に行ったり見たりすることができない事象や景観などをコンピューターの画像処理によって見えるようにしてくれる技術です。
本物の道路やサーキットを走っているような感覚になるゲームや、太古の建造物や町並みを再現したコンピューターグラフィックなども、VRです。VRのような見えないものを視覚化するITによって、海底の地層をコンピューターの画面で確かめられるようになるのです。
かつての地質調査では、その土地に行って地面や山の斜面などに現れている地層をハンマーなどでたたいて確かめていました。しかし、最新のITによって、人が行けない海底下のような場所の地下や地層も、わかるようになってきました。今後は、こうした技術を活用して、日本の海底下にある地下資源を発見したり、安全な地層を調べるといった成果が期待されています。
(科学システム事業部 高市和義)
- ※ このコンテンツは2008年9月23日にフジサンケイビジネスアイ紙に掲載しました。