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Technical Report

建設現場でのICT活用
計画、設計、施工、維持管理で3次元モデルを共有し生産性を向上

国内では、老朽化や災害の激甚化などへの対策としてインフラ整備が急務とされています。
ここでは、少子高齢化社会による建設分野での労働力の不足を補う施策として注目される、3次元モデルを使用した建設生産プロセスの管理手法CIM(Construction Information Modeling/Management)を紹介します。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 科学システム本部 社会基盤営業部 椎葉 航

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
科学システム本部
社会基盤営業部

椎葉 航

建設現場での生産性向上を目指すi-Construction

東日本大震災の復興事業や2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたインフラ整備のための建設ラッシュが始まり、国内の建設投資は増加している一方、建設業界の労働者不足や現場での労働災害等の対策を含めて、建設現場の業務効率化や労働環境の改善等が早急に求められています。

そのような中、国土交通省は建設現場での生産性を向上させる施策としてi-Constructionを2016年に策定しました。i-Constructionには、ICTを活用した生産性の向上に加え、安全性や賃金を含めた労働環境の改善が盛り込まれています。ICT活用では、ドローンの導入や重機の自動化などが提唱されています。これらのICTと3次元モデルを建設生産プロセス全体において活用する取り組みがCIMであり、CIMはi-Constructionの中核として位置づけられています。

建設分野でのICT活用の必要性

建築(architecture)分野では、建物の3次元の形状情報に材料やコスト等の属性情報を加えてコンピュータ上で作成したモデルを、建物の設計から施工、維持管理にわたる建築ライフサイクルの全ての段階で共有するBIM(Building Information Modeling/Management)という手法が浸透しています。

建設分野では、自然を切り開いて構造物を施工するケースが多いため、建物に加えて地形や地質及び周辺環境の情報を考慮する必要があります。事前に調査はするものの自然環境には施工してみないとわからないことが多く、条件が変わっていく中で日々最適な工法を選択する必要があります。工事も広範で長期にわたり、建築分野に比べて共有すべき情報量も多いです。

また、公共事業の公平性に配慮して工程ごとに分離発注されたり、国、自治体、鉄道会社、地権者、周辺住民など影響範囲が多岐にわたったりするため、様々な関係者が存在しています。情報の共有が必須ではあるものの、関係者ごとの管理手法にも違いがあり、建築分野におけるBIMのような全てのプロセスに一貫したICT活用がなかなか進まない状況でした。

従来、建設分野では2次元の図面を用いて、関係者個々人が現場の様子をイメージしながら工事を進めており、そのイメージが必ずしも一致しているわけではなかったため、時折認識の齟齬も発生していました。

CIMとは

建築業務の効率化を実現するBIMの手法を橋梁や道路などの建設(construction)分野に適用したものがCIMです。国土交通省の主導のもと2012年度から設計段階での試行が始まり、毎年段階的に試行範囲を拡大してi-Constructionの中心的な施策になりました。

CIMで使用される3次元モデルの効果は、梁や柱を含めた構造物、山や川などの地形をコンピュータグラフィックスとして立体的に描き出すことによって、2次元では把握しにくい形状を視覚的に描き出すだけではありません。コンクリートや鋼といった物性情報、経過年やコストなどの構造物に関する情報、地層や岩相など地形に関する情報を部分ごとに3次元モデルの中に埋め込むことで、関係者が共通のイメージと情報を持って施工することが可能になります。更に、作成したモデルをVRやARに活用することで、関係者の共通イメージを向上させることが可能です。また、表示する情報のレベルを調整し、発注者や住民も含めて様々な立場の人が適切な情報を共有することで、工事の品質や安全性が高まると期待されています。

また、施工時には、地中から想定外のものが出てきたり、悪天候が続いたりして手順を変更することがよくあります。このような施工手順の変更理由なども、施工情報としてモデルに埋め込めば、維持管理のプロセスで点検や修繕を実施する判断材料にもなります。

CIMは「Construction Information Modeling/Management」の略称です。当初、Modelingだけに着目し、3次元モデルをどのように活用するかの議論が多かったのですが、最近では、Management、すなわちライフサイクル全体を見通した情報マネジメントを行うための取り組みとして注目されています。

CTCの建設・建築3D属性管理ソフトウェアNavis+の画面 提供:株式会社大林組

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