コラム IT春夏秋冬
忖度(そんたく)
先日、社内の懇親会に参加した際、新入社員の皆さんのスピーチを聞く機会がありました。皆とてもフレッシュで堂々としたものでしたが、デジタル世代のはずなのに、昔からある古い言い回しをよく知っているのに驚きました。
「ただいま、ご紹介にあずかりました○○○○でございます」
「ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします」
これらは、ビジネスレターの冒頭に使われる「貴社、益々ご清栄の段、お慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます」と同じように、なんとなく座りがいいので、さほど意識せずに使ってしまうフレーズですが、もっと普通の言い方をしてもいいのにと、いつも思います。
今年流行っている言葉に「忖度(そんたく)」があります。日常会話ではほとんど使われない言葉ですから、漢字も知らなかったという人が多いようです。辞書によれば「他人の心中をおしはかること」。私自身は、だいぶ昔、法務の人と話をしていた時に意味を教えてもらって、日本社会のコミュニケーションを象徴するような言葉だなあと感じたものです。
この「忖度」。仕事のことを考えてみると、自分の組織の中でも、お客様との間でも、様々なことを「忖度」しながら行動していくのは、ある意味普通のことで、それと「議論」や「確認」がセットになって、ビジネスは進んでいくものだと思います。以前から、CTCの社内では「何でもものが言える環境」を作ろうと言ってきました。これは、視点を変えると、「議論もせずに忖度だけでことを進めないで欲しい」ということでもあります。ただ実際に、部下の人たちが言いたいことを言い始めると、上司としては「おいおい、もう少し上司のことを忖度してくれないかなあ」と思うこともあるわけですが、会社という組織は、そんなくらいがちょうどいい、という気がしています。
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
代表取締役社長
菊地 哲
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