ITOCHU Techno-Solutions America, Inc. シリコンバレー現地レポート
AI Everywhere

International Business Development
ITOCHU Techno-Solutions America, Inc.
金田 順花
AI、ビッグデータを中心に北米の先端技術や動向を調査し、最新の技術を扱うベンダーを日本へ紹介している。
著名な投資家であるMarc Andreessen氏のウォール・ストリートジャーナル紙への寄稿文から“Software is eating the world”という名言が生まれたのは、2011年でした。あらゆる産業がデジタル化し、書店やホテル、タクシーなどの一見、ITとは無縁そうに見える伝統的な産業をも変革していく状況を表現したものです。そして2017年、NVIDIA社主催のGPU Technology Conferenceにおける講演にて“Software is eating the world, but AI is going to eat software ”と言ったのは、同社CEOのJensen Huang氏です。彼は、ソフトウェアが世界を変革していくのであれば、その原動力はAIであり、つまりAIはどこにでも存在すると説明しています。そして、その状況を端的に“AI Everywhere”と表現していますが、MicrosoftやSalesforceのような大手ベンダーも“Everyday AI”,“ AI for Everyone”と同様のことを言っています。こうしたベンダーは自社製品にAIを組み込んでユーザー側が意識しなくとも、AIを活用した機能を使えるようにしています。いつでも、どこでも、誰でも、とこのようにAIが身近になれば、AIが何かということよりもAIを使って何を実現するか、というアプリケーションの議論がより重要度を増します。
米国におけるAI投資

【出典】 PwC|CB Insights MoneyTree™ Report Q4 2017
高まるAIアプリケーションへの投資
この傾向は、大手ベンダーの取り組み動向からだけでなく、ベンチャーへの投資動向からもわかります。米国におけるAI投資は、2017年には50億ドルを超えました。日本のベンチャー投資全体の2倍以上の金額が米国ではAIだけに投資されている計算になりますが、その内訳について、インフラ(AIを生み出すためのアルゴリズム、ライブラリやハードウェア)とAI機能を持つアプリケーションを比較すると、アプリケーションの投資総額は、直近2年では、インフラの3.8倍となっています。また、リサーチ会社CB Insightsが最も有望なAIベンダー100社をまとめていますが、そのカテゴリーは、FinTech、サイバーセキュリティ、教育、ヘルスケア、農業、ニュース&メディアなど特定の業界、もしくはアプリケーションが中心です。
技術力以上に求められるビジネス理解
このようなアプリケーションに重点が置かれた投資、ベンダー活動が活況を示す一方で、実はエンタープライズにおいて、AIを積極的に活用できているのはほんの一部という調査結果があります。AIをうまく活用できない原因として、データサイエンスのスキルや予算、データ整備の課題など、様々な理由が挙げられていますが、最も多いのは、ユースケースを特定できない、というものです。AIの適用には、データサイエンスとビジネスプロセスのギャップを埋めることが必要であり、そのためにはテクノロジーの理解と同等以上にビジネスの理解が必要であるという議論を、最近よく聞きます。それができてこそ、最適なユースケースやKPIの策定、必要なデータの検討やコンプライアンスの遵守を実現できるという訳です。
今回はAI Everywhereというワードをご紹介しましたが、最近注目を集めているBlockchainも、Blockchain Everywhereと言われ始めています。これもAI同様にテクノロジーだけでなく、ビジネス理解が必須となるでしょう。
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