ゴルフダイジェスト編集 心に勝つための実戦ゴルフ学
トーナメント中継を見て学ぶプレー上達のポイント
取材協力/チームセリザワゴルフアカデミー
プロツアーも、そろそろシーズンの中盤戦にかかるところですが、皆さんは、トーナメント中継をどのように見ているのでしょうか。
優勝争いや飛距離ばかりに目が行きがちだとは思います。
しかしトーナメントの中にはアマチュアにとっても多くの上達のヒントがあります。
今回は、そのポイントについてお話ししましょう。

芹澤 信雄
1959年生まれ 58歳
日本プロマッチプレー優勝(1996年)をはじめツアー通算5勝、シニア入りしてから1勝をマーク。現在、主宰として藤田寛之プロ、宮本勝昌プロらと共に「チームセリザワ」を結成。大箱根CCにゴルフアカデミーを開校。わかりやすいレッスンで多くのファンを持つ。
私がプロとして、ぜひアマチュアゴルファーに参考にして欲しいと思うのは、選手たちのプレーのリズムやルーティンです。トップで活躍する選手であればあるほど、1打ごとの手順やリズムは常に一定ですし、ショットが成功しても失敗しても、それに一喜一憂することなく、淡々とプレーをこなしていきます。実は、これこそが、スコアを安定させる最大の秘訣なのです。
ミスをしないことよりもミスを引きずらないことが大切

プロアマ戦などで、アマチュアの方と一緒にプレーすると、それまで調子が良かったのに、たった1回のOBなどでがっくりと落ち込んでしまい、そこからずっと調子が上がらなくなる人がいます。ゴルフにミスはつきもの。「ミスをしないこと」よりも、「ミスを引きずらないこと」のほうが大事です。トーナメント中継を見ているとわかりますが、プロは、直前にミスが出たとしても、次のショットを、普段と全く同じ手順で打ちます。ショットに入る前の一連の動作を、「プレショットルーティン」といいますが、プロは、この動作を常に一定にするように、普段から心掛けています。なぜかというと、毎回、決まった手順を踏むことで、気持ちが自動的に「目の前のショット」に集中して、普段の練習通りの実力を発揮しやすくなるからです。
ミスが出たら、「気持ちを切り替えて」と、よく言いますが、純粋に気持ちだけの操作で感情をコントロールできるほど、人間は器用ではありません。例えば、タイガー・ウッズは以前、ミスした後に、10秒間だけは感情を爆発させて、怒ってもいいという、「10秒ルール」を作って、実践していました。これは、失敗して悔しい感情を抑え込むのではなく、放出しつくしてしまうことで、ミスのことは「忘れて」、次のショットに臨むという心理テクニックです。私の場合は、怒りの感情を表に出すと、その後で、「何であんなことしちゃったんだろう」と、きっと後悔すると思うので、このやり方は使えません(笑)。それに比べて、いつも同じ「ルーティン」で打つというのは、手軽で、誰にでも効果がある方法ですので、ぜひ、意識して試してみてください。
女子プロは、筋力よりも柔軟性で飛距離を伸ばす
もう1つ、トーナメント中継で参考にして欲しいのは、プロの打球効率の良さです。最近では、最新の弾道計測器をティーグラウンドに設置して、ティーショットの弾道データをリアルタイムで画面に表示するような中継も増えています。あのデータからわかるのは、特に女子プロの場合、ヘッドスピードが男性アマチュアと同じか、それより遅いにも関わらず、キャリーが230~240ヤードも出るという「事実」です。これは、女子プロがいかに効率良く飛ばしているか、逆に言うと、男性アマチュアがいかにヘッドスピードを無駄にしているかということを表しています。女子プロのスイングを見ると、効率良くボールを飛ばすには、筋力よりも柔軟性のほうが大事だということがわかると思います。特に、肩甲骨周りと、股関節の柔軟性は、スイングアークの大きさとヘッドスピードの維持には必要ですから、中高年以上の男性ゴルファーは、その部分だけでも、毎日ストレッチするほうがいいでしょう。
自分に合うクラブが一番「易しい」クラブ
また、男子プロの弾道データからは、今はドロー系よりも、フェード系のほうが「飛ぶ」ことがわかります。現代のドライバーは、インパクトでフェースの向いた方向にボールが飛び出して行くという特徴があるので、無理にフェースを閉じて球をつかまえに行くよりも、フェース面の方向に真っすぐ力をかけてやるほうが、飛距離が出やすいからです。「飛ばしにはドローが有利」というのは、今となっては単なる思い込みで、飛距離を出すには、いかにクラブの性能を引き出すスイングをするかということが、プロにもアマチュアにも求められている時代ということなのです。
クラブに関して言うと、私がプロを目指していた頃といえば、練習場で打ってみて、「感触がいい」とか、「飛んでそう」ということでクラブを選ぶしかなく、それが本当に「飛んでいるかどうか」は、実際に試合で使ってみないとわからないというのが普通でした。プロになってからも、日本ではまだ弾道計測が一般的ではなく、アメリカのカールスバッド(カリフォルニア州)まで、フィッティングに行ったりしましたが、そうすると、それまでは、低くて転がる球筋が好きだったのに、弾道計測上はもっとロフトを増やして、高い球を打つほうが有利ということになりました。実際、キャリーが15ヤードも伸びたのですが、それまでと出球の高さがまるで違うので、「これは自分のゴルフじゃない」という感じで、その不安を取り除くまでには、かなり時間がかかりました。今でしたら、データが良くなるなら、迷わずいくらでもスペック変更しますけど(笑)。
最近のプロのクラブセッティングを見ると、プロでさえ「易しいクラブ」を使っていることがわかります。例えば、女子プロは、ロングアイアンの代わりに、ウッドやユーティリティをたくさんバッグに入れていますが、これは一般の男性アマチュアも真似すべき点だと思います。易しいクラブを使うほうが、上達も早いですから。
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