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ゴルフダイジェスト編集 世界のゴルファーを魅了する名門コースの流儀

R&Aとオールドコースの関係に「倶楽部」の本質を見る
セントアンドリュース・オールドコース(スコットランド)

ゴルフを語るには外せない歴史と伝統を持つ「セントアンドリュースゴルフリンクス」。
世界のゴルファーが、ここを聖地として憧れる。そのゴルフリンクスの倶楽部の1つがR&A。
ロイヤルを冠した権威ある倶楽部は世界のゴルフを牽引する。

川田氏近影

川田 太三

日本ゴルフコース設計者協会 理事長
株式会社ティアンドケイ 代表取締役社長
1944年、東京都生まれ。米国オハイオ州立大学を経て1967年、立教大学法学部卒業。
ゴルフ場の設計23コース、改造29コースのキャリアを持ち、全英、全米などメジャートーナメントのレフェリーも歴任。

R&Aは「ロイヤル・アンド・エンシェント・ゴルフ・クラブ・オブ・セントアンドリュース」の略で、英国ゴルフ協会の役目も果たし、何より世界のゴルフルールを統括する総本山でもあります。本部は、セントアンドリュース・オールドコースの1番ティの後ろにクラブハウスも兼ねて建っています。だからといって、オールドコースがR&Aと一体化しているわけではありません。

R&Aはあくまで1つの倶楽部であって、オールドコースのスタート時間をセントアンドリュース市から優先的に購入しているだけなのです。オールドコースを保有しているのは市で、リンクス・トラスト(共同体)を構成し、同コースの他、ジュビリー、ニュー、イーデン、キャッスルなど7つのパブリックコースを運営。
またリンクス・トラストにはR&Aも含めて13の倶楽部(女性だけは3)も存在します。

セントアンドリュース・オールドコース(スコットランド)

世界最古の倶楽部から10年遅れでR&Aが誕生

倶楽部とコースは別の存在というのは、世界最古の倶楽部、「ジ・オノラブル・カンパニー・オブ・エジンバラ・ゴルファーズ」の歴史を見ると歴然とします。1744年、創設当時はパブリックのリースリンクスでプレーをし、会員が増え、手狭になるとマッセルバラに拠点を移し、そこから更に現在のミュアフィールドに移しています。

R&Aは最古の倶楽部より10年遅れて1754年に創設され、266年にわたってオールドコースをホームコースとしていますが、ここに来て自前のコースを所有するという話が持ち上がっています。
プラベートコースにというより、これからのゴルフの魅力、楽しみをどう提供できるのか、青写真を構想する実験の場としたいということのようです。

18番ティからグリーンを望む。左には1番ホールが並行し、波のようなアンジュレーションを持つフェアウェイを共有。

18番ティからグリーンを望む。左には1番ホールが並行し、波のようなアンジュレーションを持つフェアウェイを共有。正面は、数えきれないドラマの舞台となったR&Aの壮大なクラブハウス

クラブハウス内にもクラブ競技のトロフィーや記念品を展示

オータムミーティングでは、ゴルフ競技会やパーティーなど様々な催しが開催され、クラブハウス内にもクラブ競技のトロフィーや記念品を展示

規則ではなく慣習法により倶楽部を維持する

さて、私がR&Aの会員にならせていただいたのは1990年です。ボランティアで、世界アマなどのレフェリー(競技委員)をやらせてもらっていたのが評価されたと、後で聞きました。それ以前、偉大な先輩たちが何人かいたのですが、90年代には誰もおらず、日本人に入会して欲しいとR&Aは思っていたようです。会員になるには「ゴルフの発展・普及に貢献すること」の条件のみです。だから「会員はこうあるべき」などの会員規則、文言はありません。同じ価値観を持つ者が自然発生的に集い、その価値観を伝統としてつないでいくというのが、彼の国の倶楽部の在り方なのです。
いわば慣習法によって倶楽部は維持されていくわけです。

日本人会員は現在12名ほど R&Aはもっと増やしたい意向

現在、R&A会員は世界各地に約2,000名います。日本人会員は12名ほど。新たに会員になるには、会員の推薦が求められます。年会費は450ポンド(7~8万円)で、特に義務などはありませんが、9月に開催される20日間のオータムミーティングに参加する人は多いようです。セントアンドリュース5コースを使い、メダルプレーなどお祭り的競技会でゴルフ三昧の日々を送るのです。
昨年は私も、私が推薦した新会員と一緒に参加しましたが、渋野日向子プロの優勝で大盛り上がりでした。

ビジネスミーティング後のパーティーでは大画面に渋野プロの映像が映し出され、スマイリング・シンデレラは喝采の嵐でした。R&A最高責任者のイアン・パーティソンは、「待ちに待った日本人チャンプの誕生だ。私たちにとっては最上の喜びだ」とあいさつ。600人の拍手が渦巻いていました。R&Aは英米に次ぐゴルフ大国、日本について多大なシンパシーを抱いていて、日本人チャンピオンの誕生が本当に嬉しかったようです。そして、日本人の会員もあと20人ほど増やしたいと言っています。

人知を超えたところにオールドコースは位置する

神が創造したといわれるセントアンドリュースゴルフリンクス。18ホール中、単独のグリーンはわずか4ホール、自然の地形のままのフェアウェイは波打ち、小さく深いポットバンカーが点在し、プレーヤーを待ち受ける。このコースは戦略性の高さを求めるものではなく、設計の妙を論じることも必要ないでしょう。オールドコースでプレーすることで、自然とゴルフという原点を体感することができる唯一無二のコース、それがこのセントアンドリュース・オールドコースなのです。

出典:Best Engine Vol.10

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