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Global Report

持続可能な未来のために
データセンターに革命を起こす「液浸冷却」

Peh Swee Hong

Peh Swee Hong

CTO, CTC Global Pte. Ltd.(シンガポール)

2013年にCTC Global シンガポールに入社。IT業界で20年以上の経験を持ち、現在はCTOとしてテクノロジー&イノベーション部門を率いる。CTC Global シンガポールの技術ロードマップを担い、お客様のDX支援に注力する。

課題解決が急がれるデータセンター

急速なビジネス変革が進む今日のデジタル世界において、データセンターは増大し続けるコンピューティングパワーとストレージの需要を支える極めて重要な役割を担っています。人工知能、機械学習、ビッグデータ分析など、データ集約型アプリケーションの急激な増加に伴い、従来の空冷式データセンターは、エネルギー効率、冷却能力、スペース活用の面で大きな課題に直面しています。

その結果、世界中のデータセンター業界は、これらの課題に対処するための革新的なソリューションを継続的に模索しており、「液浸冷却(Immersion Cooling または、Liquid Submersion Cooling)」は、効率やパフォーマンス、持続可能性においても、次世代のデータセンターに革命をもたらす有望な技術として浮上。ここシンガポールでも、液浸冷却に視線が注がれています。

エネルギー効率に優れ、コストと故障リスクを低減

液浸冷却の主な利点の一つは、その優れたエネルギー効率です。サーバやストレージ・デバイスなどのITハードウェアを、優れた熱特性を持つ誘電体液(電気を通さない性質を持つ液体)に浸します。誘電性流体がハードウェアから発生する熱を効率的に吸収・放散し、最適な動作温度を維持するため、一般的に使用されているエネルギー集約型の空調システムや冷凍機が不要になり、エネルギー消費量と運用コストを大幅に削減、温室効果ガス排出量を目に見える形で減らすことができます。

また、安定した均一な動作温度を維持することで、ハードウェアの故障リスクを最小限に抑え、重要なコンポーネントの寿命を延ばし、ハードウェアの交換頻度とそれに伴う電子廃棄物処理の環境負荷を低減します。これも循環型経済と持続可能な資源管理の原則に沿うもので、データセンター運営の持続可能なアプローチに貢献します。

さらに、液浸冷却で使用される誘電体液は無毒性で不燃性であるため、データセンター運営の安全性と環境持続可能性が向上します。地球温暖化のリスクになりうる従来の冷却方法とは異なり、より環境に優しい代替手段として、データセンター・インフラストラクチャーの生態系への影響を最小限に抑えます。

持続可能なデジタルインフラに貢献

企業が事業戦略において持続可能性を優先する傾向が強まる中、液浸冷却の採用はデータセンターの運用と環境管理及び持続可能な開発目標の整合に向けた一歩を意味し、よりサステナブルなデジタルインフラに貢献するというコミットメントを具体的に示すことができます。

液浸冷却が次世代のデータセンターにもたらす持続可能性への影響は非常に大きく、データセンター運用の状況を一変させ、環境責任、エネルギー効率、耐障害性を高めることができる変革的なアプローチとなります。液浸冷却はイノベーションの最前線に立ち、データドリブンという新しいデジタル時代の進化するニーズに応える、魅力あるソリューションとなります。

デバイスを液体で冷却する「液浸冷却」

デバイスを液体で冷却する「液浸冷却」

出典:Best Engine Vol.15

記載内容は掲載当時の情報です。最新情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

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