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Global Report

台湾と日本の経験を活かした社会課題の解決
CTC台湾代表者事務所の取り組み

米澤 政洋

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
台湾代表者事務所長

米澤 政洋

2019年にサービスを開始した、台湾のベンチャー企業でAIを提供する「Intumit社」との協業を推進。地方行政のDXアドバイザー、EBPM※1プロジェクトの伴走支援、組織変革ワークショップの講師などを経て、2024年4月から現職。

連携の加速を視野に台湾代表者事務所を開設

台湾には半導体、センサーといったデジタル部品メーカーが多数あり、これらの技術や機器は世界の大手IT企業で採用されています。CTCと台湾とのつながりには歴史があり、1990年代からCTCは台湾ベンダーのネットワーク製品も取り扱ってきました。またFacebook(現Meta)が提唱して、CTCがソリューションプロバイダの認定を受けているオープンソース形式のハードウェア仕様である「OCP(オープン・コンピュート・プロジェクト)」でも、台湾製のパーツを活用しています。

2019年に入ってからは、AI/ロボット事業を手掛ける台湾のベンチャー企業Intumit社との協業を進め、日本国内の自治体向けにAIチャットボットサービスを提供しています。

このような流れの中、台湾での先進技術の調査やパートナー連携を加速するため、2023年9月に台湾台北市に「台湾代表者事務所(以下、台湾事務所)」を開設しました。

スタートアップ企業への強力な支援

台湾政府は政府直轄の組織、工業技術研究院(ITRI※2)や資訊工業策進会(III※3)の台日センターを通してスタートアップ企業へも成長戦略を積極的、かつ強力に支援しています。台日センターはイベント開催や日本企業とのビジネスマッチングを提供するだけでなく、スタートアップが日本で成功を遂げることをミッションとしています。CTCも台日センターからの紹介で多くのスタートアップと会い、議論を重ねてきた中、日本市場での協業を目指し、さらなる技術検証や具体的な取り組みを検討するフェーズに移行していく企業も出てきています。

台南市スマートシティプロジェクトへの参画

台湾伊藤忠がプロジェクトオーナーとして推進している、台湾台南市のスマートシティプロジェクトの実証実験に、CTCは「スマート交通」のMaaS領域で参画しています。

台南市のスマートシティプロジェクトの概要

スマートエネルギー、スマート環境、スマート交通をコンセプトとし、エネルギーの可視化、人流の分析、スマート物流などの、IoTやAIなど最先端のITを活用し、都市機能の活性化や環境に配慮した都市づくりを目指していくプロジェクトです。

スマートエネルギー エネルギー管理プラットフォームの構築
グリーンエネルギーの需給予測
特定地域の消費電力分析
スマート環境 人流分析、交通ルール監視システムの開発
スマート交通 AI技術を活用した信号機のアルゴリズム構築
MaaS技術の導入

CTCは日本国内の地方自治体で抱える公共交通の課題解決に向け、MaaS領域での実証実験に携わってきました。AIを活用した運行経路の設定やオンデマンド交通の提供で、限られた車両台数で効率的な運行を可能にするものです。台湾と日本は少子高齢化という共通の社会課題を抱えていますが、台湾では官民が一体となりITを駆使して課題解決していくスタンスが確立されており、都市開発の分野では日本を先行しています。CTCは日本国内で得たノウハウを台南市でのプロジェクトに活かしつつ、台湾でのプロジェクトを通して得た新たな知見や学びを、日本でのMaaS開発にも活用していきたい思いもあります。

お互いの文化や知識の交流、事例や課題の共有、ソリューションの販路は現時点では台湾と日本の2ヵ国間で完結しています。今後は、2ヵ国を起点にCTCのグローバル拠点(米国やASEAN)を含め、さらなる販路の拡充を視野に、両国間でのプロジェクトやビジネスを活性化していきます。

  1. EBPM:エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング(証拠に基づく政策立案)
  2. ITRI:Industrial Technology Research Institute
  3. III:Institute for Information Industry
出典:Best Engine Vol.16

記載内容は掲載当時の情報です。最新情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

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