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DX・AI活用の成果を引き出す組織と人材のつくり方|IPA「DX動向2026」に見る、成果を左右する5つのポイント

2026年7月に公表された独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「DX動向2026」から、DX・AI活用を支える組織・人材の状況について明らかにします。また、CTCの独自調査も併せて参照しながら、AI時代において企業の組織・人材はどう変わるべきかを読み解きます。
※なお、「DX動向2026」で示された日本企業のDX・AI活用の動向については、別稿「DXを次の段階に進めるために」で考察しています。
1. DXは経営課題として捉えられているか
DXをIT部門の取り組みとして捉えるのか、それとも経営そのものの課題として捉えるのか。この違いは、DXの成果に影響を及ぼしているようです。
IPAの2026年版「DX動向2026(2026年7月公表)」によると、経営者がデジタル分野についての見識を「十分に持っている」「まあまあ持っている」と回答した企業の割合は、2024年度の40.2%から約10ポイント上昇し、2025年度は49.9%でした。DXに対する経営者の理解は着実に進んでいるといえるでしょう。
さらに、DXの成果別に見ると違いが明確になります。この回答割合は、DXの「成果が出ている」企業では69.2%に達する一方、「成果が出ていない」企業では44.9%にとどまります。経営者自身がデジタルを理解していることと、DXの成果には一定の関係があることが分かります(図1)。

図1:デジタル分野についての経営者の見識の有無とDXの成果
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
2. 経営・IT・業務部門の連携が成果を生む
成果との関係性という意味では、「経営」「IT部門」「業務部門」の連携も重要なようです。この3者の協調について「十分にできている」「まあまあできている」と回答した企業は全体で48.9%でしたが、DXの成果別に見ると、「成果が出ている」企業では72.9%に達するのに対し、「成果が出ていない」企業では37.1%で、35.8ポイントの差があります(図2)。

図2:DXの成果別、経営者・IT部門・業務部門の協調
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
DXを成功させるには、経営が方針を示し、IT部門がシステムをつくり、業務部門が利用するというだけでは限界があります。経営が目指す事業の方向性を起点に、IT部門と業務部門が一緒になって変革を進めることが重要だといえるでしょう。
さらに業務プロセスの最適化を見ると、「成果が出ている」企業では、全社レベルで業務プロセスの最適化に「取り組んでいる」「完了している」と回答した割合が53.8%。これに対して「成果が出ていない」企業では29.5%でした(図3)。

図3:DXの成果別、業務プロセス最適化への取組
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
DXは新しいシステムを導入することではありません。既存の業務をどう変えるのか、部門間の壁をどう越えるのかまで含めて、経営課題として捉えられているかが重要だといえそうです。
3. 挑戦を避ける文化がDXの阻害要因に
DXを推進する上では、これまでの仕事のやり方を変え、新しい技術や業務プロセスを試す必要があります。そのため、失敗を避ける文化が強く、既存の仕事を守ることが評価される組織では、現場からの変革が起こりにくくなります。
実際、年商1,000億円以上の企業を対象としたCTCの独自調査「デジタル活用実態調査2026」では、DXの成果を実感できていない層において、デジタル活用の阻害要因として「現場の現状維持バイアスが強い」を挙げる割合が全体より3.9ポイント高い37.5%という結果が出ています。
一方、DX動向2026のデータを見ると「リスクを取り、チャレンジすることが尊重される」が「できている」と回答している企業は35.1%と3分の1程度となっています(図4)。この結果を見る限り、日本企業は全体として、現場主導のDXが起こりにくい状況にあるといえます。

図4:企業文化・風土の状況
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
4. DX推進の体制づくりに見える課題
DX動向2026のデータを見ると、日本企業は、DX推進の体制づくりも十分とはいえない状況にあるようです。
例えば、「事業創造や改革を担う部署へ十分な予算配分・人員配置をしている」が「できている」と回答している企業は14.6%にとどまり、「事業創造や改革を担う部署へ大幅な権限移譲をしている」は18.7%にすぎません(図5)。

図5:DX推進の体制づくりの状況 その①
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
さらに、人材育成の面では「新しいスキル等を習得することが奨励されている」が「できている」と回答しているのは54.0%ある一方で、「高いスキルを持っていることが報酬に反映される」は32.3%、「学習を支援する制度やプログラムが充実している」は35.1%と、スキルの習得を報酬や制度で支えている企業は3割台となっています(図6)。

図6:DX推進の体制づくりの状況 その②
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
5. 人材不足の深刻度に緩和の兆し
日本企業のDXを巡っては「人材不足」が大きな課題であり続けてきました。DX動向2026のデータを見ても、この状況にドラスティックな変化はありません。
例えば、DXを推進する人材(以下、DX人材)の「量」について、従業員数1,001人以上の企業では(2025年度時点で)「大幅に不足している」が48.0%で、「やや不足している」が43.4%と、91.4%に達しています。ただし、前年度のDX動向2025(2024年度時点)では「大幅に不足している」が57.4%であり、DX動向2026においては、この数値が9.4ポイント低下しています。人材不足の完全な解消には至っていませんが、不足の深刻度は「大幅な不足」から「やや不足」へと若干緩和されつつあるようです(図7)。

図7:DXを推進する人材の「量」の不足(1,001人以上の企業)
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
同様の傾向は、DXを推進する人材の「質」の面でも見られます。中でも、従業員数1,001人以上の企業では、2025年度時点で「大幅に不足している」と回答した企業が48.5%で、2024年度の57.6%から9.1ポイント低下し、「やや不足している」(45.8%)は2024年度の36.7%から9.1ポイント上昇しています(図8)。

図8:DXを推進する人材の「質」の不足(従業員1,001人以上の企業)
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
6. 人材育成の予算は不十分
以上のとおり、DX人材不足の問題には改善の兆しがありますが、質・量ともに依然として不足しています。にもかかわらず、DX人材の育成予算はあまり増えていないようです。DX動向2026によれば、2025年度で育成予算を「大幅に増やした」とする企業は2.9%と極めて少なく、「やや増やした」が22.7%、「変わらない」が51.5%となっています。
さらに、DX動向2026では、「DX推進に必要なスキルを把握しているか」についても調べており、DXの成果が出ている企業でも「必要なスキルを把握できていない」と回答した企業が半数近くの42.7%に上り、成果が出ていない企業になると、その比率が68.9%に達しています(図9)。人材の採用・育成に関しては、まず自社がDXを推進する上でどのような人材が必要なのか、必要なスキルを可視化することが出発点なのかもしれません。

図9:DX推進に必要なスキルの把握状況
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
7. AI活用のリーダーシップは誰が握るのか
DX動向2026は、AI活用のリーダーシップ体制についても調べています。その結果は図10に示すとおりです。ご覧のとおり、AI導入・利活用を牽引する人として最も一般的なのは「IT部門の長」(46.0%)であり、それに「経営層」(32.1%)、「導入や利活用する現場の長」(27.5%)と続きます。一方、「CAIO(最高AI責任者)」は2.9%、「CAIO以外の専任者」は9.8%にとどまっており、AIを専門的に統括する体制を整えている企業がまだ少ない状況だと考えられます。

※ AIの導入状況の設問で「導入している」「現在、試験利用をしている」「利用に向けて検討を進めている」を選択した企業が対象
図10:AI導入・利活用のリーダーシップ体制
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
ただし、AIの活用範囲が広がれば、IT部門だけでAIを管理することは難しくなるでしょう。AIを業務プロセスに組み込んだり、エージェンティックAIによって複数の業務を自律的に処理したりする段階では、前述のように業務部門との連携や経営判断が不可欠になります。
この点で、年商1,000億円以上の企業を対象にしたCTCの独自調査「AI市場レポート2026年8月版」で、興味深い結果が示されています。
AI導入推進・活用促進の体制として最も多いのは、「自社内部人材+外部人材の支援を得て対応する」という併用型で61.5%(図11)。AIの活用は「外部に丸ごと任せるもの」ではなく、「自社に主導権を置きつつ外部の力を借りるもの」として捉えられているようです。

図11:AI導入推進・活用促進体制
出典:伊藤忠テクノソリューションズ「生成AI・エージェンティックAIの現在地 AI市場レポート2026年8月版」から引用
ただし、内製化といっても、全て自社で行うわけではありません。同調査によると、外部パートナーに求める支援として「エンジニア育成・スキル移転」が31.6%と最も多く、パートナーへのニーズが「(AIの使い方や、システムの開発方法を)教えてほしい」から「自走できるようにしてほしい」へと変化しています。
8. AI時代のあるべき人材戦略
AIの普及によって、人材戦略そのものも変わろうとしています。これまでのDX人材の議論では、「デジタルに詳しい人をどう確保するか」が大きなテーマでした。しかし生成AIやエージェンティックAIが業務に入ってくると、AIを開発する専門人材だけではなく、AIを使って自分たちの仕事を変えられる人材が必要になります。
DX動向2026では、DX人材と同様にAI関連人材についても不足感が高い状態にあり、多くの人材種別で「不足している」が過半数を占めています(図12)。

図12:AI関連人材の充足状況
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
また、「AIの影響を踏まえた人材育成・確保への対応状況」でも、遅れが見られます。「効率化・自動化が見込まれる既存業務の把握」で「着手している」と回答した企業は19.0%で、その他の項目では「着手している」が1割未満となっています。
ただし、AIによる効果が高いと感じている企業ほど、人材への対応も進んでいます。例えば「効率化・自動化が見込まれる既存業務の把握」では、「着手している」がAI導入効果の高い企業で37.6%、低い企業で23.8%でした。「内容が変更になる業務の把握」では22.4%と10.6%、「人材に必要なスキルの把握」では21.5%と12.0%となっています(図13)。
AIの効果を実感している企業ほど、AIを導入してから人材のことを考えるのではなく、AIによって業務がどう変わるのか、その結果どんなスキルが必要になるのかを先回りして考えているようです。

図13:AIの影響を踏まえた人材育成・確保への対応状況、AI導入の効果を感じている企業と感じていない企業の比較
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
AIによって定型的な業務が効率化されれば、人はより高度な判断や顧客対応、企画、創造的な仕事に時間を振り向けられます。それに備えて、業務そのものを見直し、新たに必要となるスキルを定義し、育成や配置を行う必要があるでしょう。AI時代は、単に「AI人材を採用する」だけではなく、既存の社員の仕事とスキルをどう変えていくかまで含めて考える必要があるといえます。
9. まとめ:組織と人材がDXの成果を左右する
ここまで「DX動向2026」とCTCの調査を重ねて見ると、DX・AIの成果を左右する組織と人材の姿が見えてきます。
1つ目は、経営のコミットメント。2つ目は、変化を受け入れる組織風土。3つ目は、必要なスキルを可視化する仕組み。4つ目は、AIを推進する組織と人材の在り方。そして最後は、AIによって仕事が変わることを前提とした人材戦略です。
これらの結果から、DXの次の段階では、「人材不足」という現象だけではなく、経営、組織、スキル、人材を1つの仕組みとして捉える必要があることが分かります。
DXは、IT部門だけでは進められません。AIも、AIツールを導入するだけでは企業の変革にはつながりません。変化を生み出す組織と人材こそが、DXの成果を左右します。「DX動向2026」のデータは、AI時代の企業変革において、技術導入と同様に取り組むべき課題が組織と人材にあることを物語っています。
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