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DXを次の段階に進めるために|IPA「DX動向2026」から読み解く日本企業のDX・AI活用の現在地

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は2026年7月、「DX動向2026」を公表しました。DX動向2026は国内企業1,799社を対象に実施され、回答者は各社の経営層、情報システム部門、DX推進部門等です。同調査では、日本企業のDXの取り組みや成果に加え、AI・データの利活用状況についても明らかにしています。本稿では、このデータとCTCの独自調査を併せて参照しながら、日本企業のDX・AI活用はどこまで進んでいるのか、そして次の段階に進むためには何が必要かを読み解きます。
※なお、「DX動向2026」で取り上げられているDX推進のための組織・人材については、別稿「DX・AI活用の成果を引き出す組織と人材のつくり方」で考察しています。
1. 日本企業に定着するDX
IPAは2020年度から国内外の企業に対してDXの取り組みや関連技術、人材育成動向などについて調査・分析し、調査結果を2021年から毎年公表しています。この調査レポートの2026年版「DX動向2026(2026年7月公表)」では、DXの取り組み・成果などに加えて、AI活用の状況についても、様々な視点から調査しています。調査は2026年4月中旬から6月中旬にかけて実施され、「2025年度の状況」を企業に尋ねています。
同レポートによると、何らかの形でDXに取り組んでいる企業の割合は(2025年度時点で)75.7%に上っています。2023年度以降は75~78%程度で推移しており、DXの取り組みが相当数の企業に定着していることがわかります。とりわけ、従業員1,001人以上の企業においては、DXに何らかの形で取り組んでいる企業が98.7%に達しています(図1)。

図1:従業員1,001人以上の企業のDXへの取組状況(2025年度)
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
2. DXの主たる成果は社内業務の「効率化」
DXの成果を見ると、成果が出ている企業は60.8%、出ていない企業は12.3%、「わからない」と答えた企業は26.8%です。この状況について、同レポートでは「過去4年間で見ると大きな変化はない」「取り組んでいるものの成果を把握できていない企業が多い状況が続いている」と指摘しています。
一方、図2は、DXによる「成果の内容」を、DXの先進国である米国・ドイツと比較したものです。
そのデータを見ると、日本は「コスト(人件費・材料費等)削減」や「製品・サービス等提供日数削減」での成果が高い一方で、「売上高増加」「利益増加」「市場シェア率向上」「顧客満足度向上」では成果が低いことがわかります。つまり、日本企業ではDXの成果がコスト削減や業務効率化といった「内向き」の領域に偏っており、新規ビジネスの創出や顧客価値向上といった「外向き」の成果創出に至っているケースは、米国・ドイツの企業に比べて圧倒的に少ないことがわかります。

図2:DXによる経営面の成果内容
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
3. 一般化するAI導入
AI導入の進展度はどうなのでしょうか。
DX動向2026によれば、2025年度の時点でAIを「導入している」企業は42.3%で、前年度(22.6%)から約2倍の伸びを示しています。また、この数値に「現在、試験利用をしている」と答えた企業の割合を合わせると、58.0%に達しています。中でも従業員1,001人以上の企業では、「導入している」(78.3%)と「現在、試験利用をしている」(11.1%)の合計値が89.4%に達しています(図3)。つまり、一定以上の規模を有する企業にとって、AIの導入はDXの取り組みと同じように一般化しているようです。

図3:従業員1,001人以上の企業のAIの導入状況
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
4. 個人での業務利用がAI活用のメイン
AI導入はかなりの勢いで進展していますが、活用のスタイルは「個人での利用」に留まっているようです。DX動向2026によると、AIの活用方法について「個人で業務利用している」と答えた企業が63.3%と最も多く、それに「個人や部署で試験利用している」(44.8%)が続いています。それに対して、「(AIが)全社的なサービスに組み込まれている」と答えた企業は18.6%にとどまり、「部署の業務プロセスに組み込まれている」とする企業はさらに少なく11.9%という結果です。
AIの用途としては「文書・音声の要約・翻訳・校正」(82.5%)や「文書・レポートの作成(社内・社外)」(80.5%)、「情報検索・収集・分析・レポーティング」(77.0%)、「アイデア出し・壁打ち・ブレーンストーミング」(73.0%)が主たるもので、逆に「業務プロセス・ワークフローの自動化・最適化」(21.2%)などにAIを活用しているケースは少ないようです(図4)。

図4:AIの用途のトップ10
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
5. AI導入の主たる効果は社内業務の効率化
AI導入による具体的な効果では、「業務が効率化したり迅速化した」が91.6%と突出し、「企画提案等の品質や速さが向上した」が48.9%と続きます。その一方で「顧客満足度が向上した」(4.5%)、「売上や利益が向上した」(3.9%)、「対象となる顧客が拡大した」(2.7%)などのビジネス効果はほとんど上がっていません(図5)。

図5:AI導入による具体的効果
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
ただし、大手企業に限っていえば、上記のような傾向に改善の兆しが見られています。
例えば、年商1,000億円以上の企業を対象としたCTCの独自調査「AI市場動向レポート2026年8月版」を見ると、AI導入企業の8割以上が「業務標準化・自動化」に効果を実感する一方で、「顧客体験・サービス品質向上」や「新規ビジネス創出」など、「外向き」のビジネスやサービスについても、AI導入の効果を実感する企業が増えています(図6)。

図6:生成AI導入企業が実感する効果と課題
出典:伊藤忠テクノソリューションズ「生成AI・エージェンティックAIの現在地 AI市場レポート2026年8月版」から引用
6. AI導入・有効活用の壁
DX動向2026では、企業におけるAI導入・運用上の課題についても調べています。
この調査結果として上位に挙がった課題は図7に示すとおりです。同図を見ると、人材不足やセキュリティへの不安、ガバナンス上の難度の高さを課題として挙げる声が多くあります。

図7:AI導入・運用上の課題のトップ10
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
この結果からわかるのは、AIの有効活用を図る上では、単に技術・ツールを導入するだけではなく、セキュリティ上の問題や人材・ガバナンスといった組織・体制面でのハードルを乗り越えることが欠かせないということです。
7. AI時代に問われるデータ基盤の整備状況
DXの推進やAIの有効活用を図る上では、データ基盤の整備も欠かせません。
DX動向2026を見ると、データについて「全社で利活用している」、あるいは「事業部門・部署ごとに利活用している」と答えた企業の割合合計は59.9%と、それほど高くありません。ただ、従業員1,001人以上の企業では「全社で利活用している」「事業部門・部署ごとに利活用している」の回答率合計が75.3%に達しています(図8)。

図8:従業員1,001人以上の企業のデータ利活用の状況
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
では、データの有効活用、あるいは基盤整備に向けて、企業はどこに難しさを感じているのでしょうか。
DX動向2026を見ると、データの整備・管理・流通の課題として「人材の確保が難しい」(51.2%)、「データの標準化が難しい」(36.8%)、「管理システムが整備されていない」(32.6%)、「全社的な方針や文化がない」(28.9%)が上位に挙がっています(図9)。

図9:データ整備・管理・流通における課題トップ10
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
また、データの企業間連携に関しては、どのような連携形態についても「実施・検討していない」が過半数を占めており、外部とのデータ連携が進んでいない状況にあります(図10)。

図10:データの企業間連携の状況
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
データ基盤については、大手企業に限ってみても、基盤の整備が完全には進んでいないようです。年商1,000億円以上の企業を対象としたCTCの独自調査「デジタル活用実態調査2026」の結果を見ても、デジタル活用の阻害要因として、「レガシーシステムの維持・連携が足かせ」が41.7%で最も高く、「データが各所に散在し、一元化・活用が困難」が39.9%と続いています(図11)。

図11:デジタル活用の阻害要因
出典:伊藤忠テクノソリューションズ「デジタル活用実態調査2026(2026年4月発行)」から引用
このように、データの連携や統合が進んでいないと、データの有効活用を図るのが困難になる上に、AIに必要なデータを学習・参照させるのも難しくなります。結果として、生成AIに、例えば、自社の業績を精度高く分析させたり、予想させたりするのが難しくなります。また、エージェンティックAI(AIエージェント)を導入して、特定の業務を自動化する上でも、AIに複数のシステムやデータを横断的に使わせる必要が出てきます。その要件を満たすためにも、データやシステムが、業務ごと、あるいは組織ごとに分断されている状況は、何らかの形で打開する必要があります。
8. AI投資は拡大傾向 ~課題は成果を生めるか否か
大手企業を中心にAIへの投資意欲はきわめて旺盛であり、DX動向2026を見ても、(2025年度における)AI投資が過去に比べて「大幅に増加している」とする企業が18.0%に上り、「やや増加している」とする企業も33.3%に達し、企業の過半数が何らかの形でAI投資を増加させていることが明らかにされています(図12)。

図12:AI投資の増減状況
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026(2026年7月30日公開)」をもとに作成
CTCのAI市場動向レポート2026年8月版でも、30.2%の企業が直近1年間で1億円以上をAIに投じ、55.1%の企業が今後3年間の投資増を予定しています(図13)。

図13:AI関連投資の動向
出典:伊藤忠テクノソリューションズ「生成AI・エージェンティックAIの現在地 AI市場レポート2026年8月版」から引用
また、CTCのデジタル活用実態調査では、DX(デジタル活用)に成果を感じている「成果実感層」と、成果を感じていない「未実感層」の間で、デジタル投資に対する姿勢が異なっていることも示唆されています。
新規投資に5割以上を振り向ける企業は、成果実感層31.8%に対し未実感層20.8%です。また、今後の投資増加を見込む企業も、成果実感層63.5%に対し未実感層49.3%です。一方、維持・保守に8割以上を使う企業は、成果実感層18.0%に対し未実感層36.8%という結果になっています。DXの成果には、こうした投資構造の違いも影響していると考えられます(図14)。

図14:投資実績と増額計画
出典:伊藤忠テクノソリューションズ「デジタル活用実態調査2026(2026年4月発行)」から引用
9. 「導入」から「変革」へ ~DX・AIの現在地~
以上のとおり、DX動向2026の調査においても、DXへの取り組みは企業全体の75.7%にまで広がり、AIについても導入・試験利用が58.0%に達しています。これは、DXに取り組むこと、AIを導入することは、企業にとって当たり前の施策であり、それ自体は、企業の差異化、あるいは市場競争力強化にはつながらないことを意味しています。つまり、DXに取り組むか否か、AIを導入するか否かで悩む段階は既に過去のものとなり、現在は、DX、AIによっていかに多くの成果を上げられるか、あるいは、ビジネスメリットを手にできるかが問われているということです。
ところが、AIによる効果を見ると、社内業務の効率化・迅速化などへの偏りが見られ、「売上や利益の向上」を実現している企業はわずか3.9%です。
そうした傾向に対して、DX動向2026では、そのレポート冒頭でこう指摘しています。
「DXの成果は業務効率化などに関する項目で高く、またAIは導入が広がっているものの、その活用は業務効率化・迅速化が中心となっており、DX、AIともに企業価値創出への展開は限定的な状況にある」
DXの取り組みとAIの導入を通じて、自社のビジネスをどう変え、新たな価値創出につなげていくかのロードマップを明確に描くことが、「DXの次」を考える際の出発点になりそうです。
関連記事:DX・AI活用の成果を引き出す組織と人材のつくり方|IPA「DX動向2026」に見る、成果を左右する5つのポイント
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