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電力インフラを支える次世代ネットワークとは――CTCが挑むルーティング基盤の高度化

クラウドネイティブ

公開日:2026.10.15

電力インフラを支える次世代ネットワークとは――CTCが挑むルーティング基盤の高度化

    電力インフラを支える次世代ネットワークとは――CTCが挑むルーティング基盤の高度化

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    2026年8月、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)は、Ciscoのルーティング製品を担当する開発部門の担当者を名古屋オフィスに迎え、日本の電力業界が抱えるネットワーク課題と、今後の製品・機能に求められる要件について技術交流を行いました。

    今回の対話は、製品説明を受ける場にとどまりませんでした。国内の電力事業者と向き合ってきたCTCが、日本市場の実情や運用現場で見えている課題をCiscoの製品開発チームへ直接共有すると同時に、Ciscoが進める最新のルーティング技術についても深く学ぶ、双方向の技術交流となりました。

    CTCは、単に製品を導入・提供するだけでなく、電力事業者の要件をグローバルメーカーの製品開発へ現場の声をフィードバックすることにも取り組んでいます。今回は、Cisco 8000シリーズと、それを支えるCisco Silicon Oneアーキテクチャを中心に、電力インフラの現場で求められる信頼性、設置性、運用性、省電力性などの観点から、具体的な改善要望や将来ニーズをCiscoと共有しました。

    社会インフラを支えるお客様の課題を把握し、技術とサービスで解決へ導くことは、CTCの重要な取り組みです。Ciscoのグローバルな製品・技術力と、CTCが国内市場で培ってきた顧客理解・技術検証力を組み合わせることで、日本の重要インフラに適したネットワーク基盤の実現を目指します。

    本記事では、CTCとCiscoの技術交流で見えてきた電力インフラ向けネットワークに求められる技術要件と、CTCがどのように電力事業者と社会インフラの未来に貢献していくのかを紹介します。
    CTCとCiscoのメンバーによる技術交流会での集合写真

    1. CTCが電力ビジネスで目指すもの

    電力事業者・CTC・Ciscoにおける現場の声の集約と技術還流のサイクルを示した図

    電力は、人々の生活や経済活動を支える重要な社会インフラです。

    一方、電力業界では、発電所や変電所をはじめとする設備の老朽化、再生可能エネルギーの普及、AI利用拡大に伴うデータセンター需要の増加など、さまざまな変化が同時に起きています。

    これらの変化に対応するため、電力事業者のネットワークにも、より高い信頼性や柔軟性、セキュリティが求められています。

    CTCは、全国の電力事業者に対して、ネットワークをはじめとするITインフラの提案、設計、構築、保守を提供してきました。各地域のお客様と継続的に対話し、設備環境や運用方法、将来計画まで理解したうえで課題解決に伴走できることが、CTCの強みです。

    一方、Ciscoは、グローバル市場で培ったルーティング技術、自社開発のシリコン、光技術、ネットワーク運用の自動化など、世界規模の製品・技術力を持っています。

    両社が目指しているのは、それぞれの強みを単純に持ち寄るだけではありません。CTCが日本の電力市場で得た知見をCiscoの製品開発へ共有し、Ciscoの先進技術をCTCがお客様の環境に適した形で検証・提案する。こうしたサイクルを継続的に回すことで、CTCは日本の電力インフラに求められるネットワークの高度化に貢献していきます。

    すでに両社では、営業・技術双方での継続的な意見交換を通じて、電力事業者の要望を継続的に確認しています。今回のCisco開発部門の来訪も、こうした協業をさらに一段深める取り組みの一つです。

    2. 電力業界の変化がネットワークに求めるもの

    電力業界の環境変化とネットワークに求められる5要素を示した図

    近年、電力業界を取り巻く環境は大きく変化しています。再生可能エネルギーの導入拡大や電力需要構造の変化に加え、AIの利用拡大に伴うデータセンター需要の増加など、電力システムを取り巻く状況は急速に高度化しています。こうした環境変化の中で、電力インフラを支える通信ネットワークには、これまで以上の信頼性と柔軟性が求められています。

    従来のネットワーク設計では「高性能化」が主要なテーマでした。しかし現在は、次世代転送方式(SR-MPLS/SRv6)への対応、消費電力の削減、長期運用を見据えた保守性、セキュリティ強化、運用自動化といった要素も同時に満たす必要があります。

    今回の技術交流では、これらの高度な要求を実現する製品として、Ciscoが進めるCisco Silicon Oneアーキテクチャを採用した「Cisco 8000シリーズ」ルーターを中心に意見交換を行いました。

    3. CTCが伝えた、電力インフラ向け製品への要件

    電力インフラ向けネットワーク製品に求められる3つの要件を示した図

    3.1 消費電力と発熱を可能な限り抑えたい

    消費電力と発熱をめぐる要望は、今回の技術交流でCTCが最も強く伝えたテーマの一つです。

    発電所や変電所には、建設から20年、30年が経過している施設も少なくありません。もともと大容量のネットワーク機器の設置を想定していない建物も多く、利用できる電源容量や空調能力には限りがあります。電力を供給する施設だからといって、ネットワーク機器が自由に電力を使えるわけではない、という現場ならではの制約です。

    CTCはこうした背景を踏まえ、性能や機能の向上だけでなく、消費電力と発熱を可能な限り抑えた製品設計をCiscoに求めました。低消費電力化は、設備制約への対応にとどまらず、運用コストや環境負荷の低減、さらには製品選定における重要な評価要素です。Ciscoからも、消費電力を製品設計上の重要項目と位置づけ、使用するシリコンやシステム構成を含めて最適化を進めているとの説明があり、両社の問題意識が一致していることを確認できました。

    3.2 限られたスペースに設置できるサイズが必要

    電力事業者のネットワーク機器は、必ずしも整備されたデータセンターやサーバールームだけに置かれるわけではありません。発電所や変電所、地域拠点など、設置スペースやラックの奥行きに制約がある場所で使用されることも多くあります。

    小型プラットフォームの活用が議論の中心になったのも、こうした事情からです。装置の高さだけでなく、奥行き、ケーブルの取り回し、保守作業のしやすさまで含めて考慮した設計が必要だという、国内の設置環境に即した具体的な視点がCTCから共有されました。

    3.3 小型製品でも電源冗長化と用途拡大に対応したい

    電力インフラを支えるネットワークでは、装置の一部が故障してもサービスを継続できる構成が求められます。しかし小型のエッジルータの多くは電源ユニットが一つしかなく、電源の二重化が必要な現場では、要求される冗長性を満たすため、より上位のモデルを選択するケースがあります。一方で、冗長化によって価格や装置サイズが大幅に上がってしまうと、今度は小規模拠点への導入が難しくなります。

    CTCは、この信頼性と導入コストのトレードオフを解消できる製品設計の必要性を伝えるとともに、小型プラットフォームの用途そのものを広げる可能性についても意見を交わしました。基本的なルーティング機能に加え、国内案件で想定される次のような付加機能についても議論しています。

    • 高精度な時刻同期に使用するPTP

    • インターネット接続サービスに使用するNAT

    • 監視カメラやセンサーなどへ給電するPoE

    • Copperと光を含む柔軟なインターフェース構成

    これらの機能がすべての電力事業者のネットワークで必要になるわけではありません。しかし、電力事業者のグループ会社や、電力会社の設備を活用して通信サービスを提供する事業者まで視野を広げると、製品の用途やビジネス機会も広がります。搭載するシリコンとの適合性を踏まえながら、フィードバックを行いました。

    4. なぜルーターの消費電力が重要なのか

    ルーターの消費電力構造と機能追加に伴う電力変化を示した図

    技術交流の中で特に印象的だったテーマの一つが、Cisco Silicon Oneで実現されている「シリコン設計と消費電力」の関係です。

    一般にネットワーク機器の消費電力というと、筐体全体の電力をイメージしがちですが、実際には内部で動作するシリコン(ASIC/NPU)が大きな割合を占めています。Cisco製品開発チームからは、ルーター全体の消費電力を下げるためには、シリコンレベルでの最適化が不可欠であるとの考え方が紹介されました。

    さらに、ルーティング機器には単純な転送機能だけでなく、次のような様々な機能が求められます。

    • QoS制御

    • 暗号化処理

    • PQC(耐量子暗号)対応

    • トラフィック可視化

    • 統計収集

    一方で、一つの物理チップで全てのユースケースをカバーすると特定の用途では機能が過剰になり、不要な回路が電力を消費して電力効率が悪化するようなトレードオフも生じます。Ciscoはこの問題を解決するためにアーキテクチャ開発環境は単一に統合しつつも、ハードウェアの構成をユースケースにより最適化した豊富なバリエーションも市場に投入しています。これにより適材適所で最も電力効率の良いチップを選択できるようになります。用途ごとに必要な機能を整理し、最適なアーキテクチャを選択することが省電力化の鍵になるという考え方が共有されました。これは、CTCが電力会社のお客様から一貫して求められている「長期間安定して運用できる低消費電力ネットワーク」という要望とも一致する考え方です。

    5. 共通シリコンアーキテクチャがもたらす価値

    個別設計から共通アーキテクチャへの変化を示した図

    もう一つ、技術交流の中で価値のあるテーマとなったのが、共通アーキテクチャの考え方です。

    これまでネットワーク機器は、用途ごとに異なるハードウェア設計が採用されることが一般的でした。しかしCiscoでは、Cisco Silicon Oneのアーキテクチャを複数製品で共通的に利用する動きが進んでいます。

    共通アーキテクチャのメリットは、単なる部品の共通化にとどまりません。例えば新しいネットワーク機能やセキュリティ機能が必要になった場合でも、共通アーキテクチャにより、製品間での技術の一貫性や機能展開の効率化が期待できます。

    運用者にとっても、機器ごとの学習コストの低減や、運用手順の共通化、といった価値が期待できます。社会インフラ分野では10年以上利用される設備も少なくないため、このような継続的な技術進化への追従性は重要なポイントになります。

    6. ネットワークセキュリティは暗号化だけではない

    通信の保護と機器自体の信頼性確保の両立を示した図

    セキュリティに関する議論も、技術交流の中で大きなテーマの一つでした。

    ネットワーク機器のセキュリティというとIPsecやMACsecなどの通信暗号化技術が注目されますが、それだけでは十分ではありません。重要なのは、稼働しているソフトウェアそのものを信頼できるかという点です。

    万が一、不正に改ざんされたソフトウェアがネットワーク機器上で動作した場合、インフラ全体へ重大な影響を与える可能性があります。そのため現在のネットワーク機器には、起動時にソフトウェアの正当性を確認するセキュアブートなどの仕組みが組み込まれています。

    社会インフラ分野ではサイバーセキュリティへの要求が年々高まっており、「通信の保護」と「機器そのものの信頼性確保」の両方が欠かせない時代になっています。CTCは、こうした最新のセキュリティ機能についても、電力事業者のお客様への提案に反映していきます。

    7. 次世代製品への移行を支える

    次世代プラットフォームへ安全に移行する4ステップを示した図

    今回の意見交換では、新製品への要望だけでなく、既存のルーティングプラットフォームから次世代プラットフォームへの移行についても議論しました。

    長期間使用されてきたルーターには、多数のネットワーク機能が実装されています。その中には広く使われている標準的な機能だけでなく、特定のお客様やネットワーク構成でのみ必要となる機能もあり、処理性能やポート数が十分でも、使用している機能が一つ不足しているだけで移行できないことがあります。既存製品で長年にわたり実装してきた機能を次世代プラットフォームへ引き継ぐには、お客様が実際にどの機能を使用しているかを正確に把握することが欠かせません。

    CTCはお客様のネットワークを理解し、Ciscoは製品・技術に関して理解しています。両社が持つ情報を組み合わせることで、仕様書の比較だけでは見つけにくい移行上の課題も早い段階で把握できます。次世代プラットフォームの対応機能や今後の計画をCiscoとCTCが共有し、連携して移行準備を進めていくことも確認しました。

    CTCは、次世代製品への切り替えを単なるハードウェア更新とは考えていません。お客様が長年運用してきたネットワークを止めることなく、新しい基盤へ安全に引き継ぐための移行プロジェクトとして捉えています。その実現に向けて、CTCはお客様の現行環境を丁寧に把握し、Ciscoと連携しながら機能差分の確認、検証、移行方式の検討を進めることで、重要インフラを支えるネットワークの安定的な刷新を支援していきます。

    8.  製品を「提供する側」と「使う側」の距離を縮める

    CTCがCiscoに共有した4つの情報項目を示した図

    今回、Ciscoの開発部門とCTCのメンバーが直接対話したことで、製品を開発する側と、日本の電力事業者に提案・導入する側の距離を縮める機会となりました。製品を開発するCiscoと、お客様を支えてきた経験と知見を持つCTCが直接議論できたことは、双方にとって大きな価値がありました。

    今回の対話では、CTCが具体的な案件を通じて把握してきた次のような情報をCiscoと共有しました。

    • お客様の設備・運用環境

    • 製品選定で重視される条件

    • 導入・移行時の課題

    • 将来的な市場ニーズ

    こうした情報を共有し意見交換をすることで、市場要件に対する相互理解を深めました。また、「なぜこの仕様になっているのか」「どのような市場を想定しているのか」を掘り下げて確認できたことで、国内の電力事業者への説明や提案の精度を高める機会にもなりました。

    9. まとめ:お客様の声を技術の進化へつなぐCTCの取り組み

    今回の技術交流は、一方的な製品説明や要望共有にとどまらず、日本の電力インフラに求められるネットワークのあり方をCTCとCiscoが議論する機会となりました。

    国内の電力事業者に向き合うCTCは、今回の対話を通じて、現場の課題や具体的な要望をCiscoの製品開発チームへ直接共有しました。主なポイントは次の3点です。

    • CTCが日本の電力市場で得た具体的な要件をCiscoへフィードバックする

    • Cisco 8000シリーズ/Cisco Silicon Oneをはじめとする製品・機能について検討に必要な技術情報を共有し、日本市場における要件への理解を深める

    • 既存製品から次世代プラットフォームへの移行を両社一体で支援する

    日本の電力インフラが抱える課題は、一つの製品や技術だけで解決できるものではありません。設備の老朽化、データセンター需要の増加に伴う通信量の増加、セキュリティ対策、運用自動化の必要性、消費電力の削減など、複数の要素を考慮しながら、長期的に利用できるネットワークを設計する必要があります。

    CTCは、全国の電力事業者に伴走し、現場の課題を把握できる強みを持っています。さらに、メーカーの製品開発部門と直接対話し、現場の声を技術要件として届けられることも、CTCが重視する取り組みの一つです。

    Ciscoは、Cisco Silicon Oneをはじめとするルーティング技術と、グローバル規模の製品開発力を持っています。CTCは、Ciscoの先進的なルーティング技術を日本の電力市場に適した形で活用するため、お客様環境に即した検証と提案を行います。

    今後もCTCはCiscoと、次の取り組みを通じて、社会インフラを支えるネットワークの高度化に貢献していきます。

    ・電力事業者の課題や将来要件の整理、製品・技術の方向性について意見交換

    ・次世代製品への移行に向けた機能差の確認、実機を使用した技術検証

    ・日本市場からの継続的なフィードバック

    製品を導入するだけでは、お客様の課題を十分に解決できないことがあります。CTCは、Ciscoの製品を取り扱うパートナーという立場にとどまらず、Ciscoとお客様の現場をつなぐ役割を担います。現場で得た知見をもとに要件を整理し、メーカーとともに解決策を検討できることは、CTCが提供する大きな価値です。

    CTCはこれからも、Ciscoとの強固なパートナーシップを通じて、お客様の現場で生まれる課題を技術の進化へつなげ、日本の重要な電力インフラを支えるネットワークの実現に取り組んでいきます。

    電力事業者をはじめとする社会インフラ分野のお客様で、ネットワーク基盤の刷新・次世代化についてご相談がある方は、CTCの担当窓口までお気軽にお問い合わせください。

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    執筆者情報

    Key Technology(Keys)編集部

    Key Technology (Keys)編集部は、CTCが注力する「高度AI」「データ&アナリティクス」「クラウドネイティブ」「セキュリティ」を中心とした最先端テクノロジーの情報発信を担う編集チームです。技術動向や活用事例、サービス情報をわかりやすく届け、ビジネス変革に挑む企業の意思決定や実行をサポートします。

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