公開日:
Innovation Sandboxから読み解くRSAC 2026 Conference 注目ベンダー


RSAC Conferenceとは
「RSAC Conference」という言葉をセキュリティ業界のニュースやベンダー資料の中で見かけたことはないでしょうか?
RSAC Conferenceは、世界で最も影響力のあるサイバーセキュリティカンファレンスのひとつであり、業界の“今”と“これから”が集約される場所として知られています。
今年で35回目の節目となり、セキュリティ業界における第一人者や各国政府要人によるKeynoteセッション、分野ごとに深掘りした専門セッション、スタートアップを含めた広大な展示会、そして名物となるRSAC Innovation Sandboxといったイベントが開催されます。
昨年度のRSAC Conferenceでは主に「AIとセキュリティをどのように嚙み合わせるか?」という内容が話題の中心でしたが、今年は次のステップとして運用や防御面を含めAgentic AI時代を見越した内容が盛んに協議されるものと想定されます。
(弊社CTCからも現地参加します)
RSAC Innovation Sandboxとは
会期中に様々なイベントが開催されますが、とりわけ熱狂的な視線を浴びるイベントが“RSAC Innovation Sandbox”となります。こちらはセキュリティスタートアップ企業の登竜門コンテストとして知られており、各社から語られる内容は単なる最新トレンドに留まらず次世代のサイバーセキュリティを予見させるものばかりです。
そのため日本でビジネスを展開する我々にとっても、新たなセキュリティトレンドのキャッチアップはもちろん、国内市場へ投入すべき新規商材や、攻めのセキュリティ戦略を練る上で重要な情報が散りばめられており、毎年注意深く観察しております。
RSAC Innovation Sandbox概要
選ばれし10社による争奪戦
数百社の応募の中から、厳格な審査を経て選出されたファイナリスト10社が、わずか3分間のピッチで競います。審査員はそれぞれの内容を吟味し最優秀1社がその年の“Most Innovative Startup”の座を手にします。(今年は3/23に開催)圧倒的な輩出実績
過去のファイナリストは累計100件以上の買収、総額180億ドル以上の投資を受けており、現在業界の巨人となった Wiz、SentinelOne、Axonius などが名を連ねています。業界のお墨付き
例年、審査員はトップ企業のCISO/CTO、有力ベンチャーキャピタリスト、セキュリティ専門家といった面々により構成されます。Winnerはもちろん、ファイナリストに選出されていることも「次世代のリーダー、将来のユニコーン企業」としての証左となります。
2026年のファイナリスト10社とその特徴
今年のファイナリスト10社の顔ぶれを見ると、昨年にも増してAI関連企業の存在感が際立つ年となっており、Token Security、Geordie AI、Realm Labsなど「AIの行動や権限制御」に向き合うスタートアップが名を連ねています。
また、今年のジャッジにはMorgan StanleyやVerizonの幹部らから構成されており、昨今おおいに議論されている「AI利用規制やガバナンス」という点にも焦点があてられるものと推測します。
企業名 | 企業概要 | ソリューション | 特徴・ポイント |
|---|---|---|---|
Charm Security | 2024年米国ニューヨークにて設立 | Agentic AIによる詐欺・ソーシャルエンジニアリング対策 | 行動心理学と不正対策を学習したAIエージェントが、人を狙う詐欺・なりすましをリアルタイムで予防・介入・解決まで実施 |
Seed:累計調達額 $13M | |||
イスラエル8200部隊出身Roy Zur氏が創業 | |||
Clearly AI | 2024年米国シアトルにて設立 | AIセキュリティエンジニア(AppSec自動化) | 脅威モデリング、設計レビュー、リスク評価をAIで自動化し、DevSecOpsを加速 |
Seed:累計調達額 $13.4M | |||
元AmazonのEmily Choi-Greene氏が創業 | |||
Crash Override | 2022年米国ニューヨークにて設立 | CI/CD組み込み型セキュリティ | AIコーディングツールの可視化、ビルド実行時の証跡を取得し、SLSA Level 2準拠のプロビナンス管理とデプロイ証明 |
Seed:累計調達額 $47M | |||
元McAfee、Capsule8のJohn Viega氏が創業 | |||
Fig Security | 2025年米国ニューヨークにて設立 | SecOpsレジリエンス管理 | SecOps検知・対応フローのドリフトを可視化・修復し、SOCの変更耐性を向上 |
シリーズA:累計調達額 $38M | |||
元Google Gal Shafir氏らが創業 | |||
Geordie AI | 2025年英国ロンドンにて設立 | AIエージェント向けセキュリティ/ガバナンス | AIエージェントの可視化、挙動監視、リスク低減をリアルタイムで提供 |
Seed:累計調達額 $6.5M | |||
元Darktraceの Henry Comfort氏らが創業 | |||
Glide Identity | 2024年米国サンフランシスコにて設立 | 次世代パスワードレス認証 | 暗号技術・通信キャリア情報・デバイス信頼性を活用し、SMS/パスワード不要の認証を実現 |
シリーズA:累計調達額 $25M | |||
Eran Haggiag氏らが創業 | |||
Humanix | 2025年 US・サンフランシスコにて設立 | 対話型AIによる対人攻撃(ソーシャルエンジニアリング)防御 | 認知心理学ベースの対話型AIが、人への操作・欺瞞・なりすまし攻撃を検知し判断を支援 |
シリーズA:累計調達額 $18M | |||
元Riverbed、vArmorのKeith Stewart氏が創業 | |||
Realm Labs | 2023年 米国 サニーベイルにて設立 | AI推論時の内部挙動監視 | 生成AI、LLMなどの「思考プロセス」を可視化し、誤回答や危険な振る舞いを推論中に検知 |
Seed :累計調達額 $5M | |||
元RSAC Committee MemberのSaurabh Shintre氏が創業 | |||
Token Security | 2023年 イスラエルにて設立 | AI/Non-Human Identity管理 | AIエージェントや非人間IDを発見・管理・統制し、Agentic AIにおける許認可リスクを解消 |
シリーズA:累計調達額 $32M | |||
イスラエル8200部隊出身Itamar Apelblat氏が創業 | |||
ZeroPath | 2024年 米国サンフランシスコにて設立 | AIネイティブコードセキュリティ | SAST/SCA/Secrets/IaCを統合し、複合的・業務ロジック脆弱性を高精度検出 |
Seed :累計調達額 $10.5M | |||
元GoogleのRaphael Karger氏らが創業 |
RSACイノベーションサンドボックスコンテスト2026のファイナリスト発表 |RSACカンファレンス
注目のファイリスト
各社それぞれ先鋭的なソリューションを展開していますが、大きな注目を集めるであろうファイナリストを筆者の目線でご紹介します。
Token Security
Token Securityは、AIエージェントの可視化や管理といったガバナンス面を強化すると同時に、NHI(Non-Human Identity)の権限管理を通じて、想定外のA2A(Agent-to-Agent)通信や越権的な振る舞いを未然に防止する機能を備えています。
これにより、「管理されていないエージェントの乱立」や「エージェントの統制や権限が追いつかない」といった現在進行形の大きな課題を解消しつつ、ガバナンス・利便性・セキュリティという本来トレードオフになりがちな要素を高い次元で共存することが出来ます。
その結果として、企業や組織はAIのポテンシャルを最大限に引き出せ、さらなる業務効率化を実現することが可能となるでしょう。昨今のAIエージェントの急速な普及やAgentic AIの本格的な導入を踏まえるとMost Innovative Startupに選出されることも大いにあり得るでしょう。
Glide Identity
Glide Identityは、生成AIやディープフェイクの登場によって限界を迎えつつある従来型認証(本人識別)を根本から見直すソリューションを提供します。同社は「AIは究極のハッキングツールになった」という前提のもと、人間の判断や記憶に依存する識別・認証そのものが綻びつつあるという点を大きな脅威として提言しています。
同社の技術的な特徴として、世界中に既に普及しているSIM / eSIM を暗号学的な本人確認基盤として活用する点です。これにより、SIM 内に格納された秘密鍵と通信キャリアのネットワーク情報を組み合わせ、パスワードレスなシンプルさを維持しつつも、裏側ではSIMスワップやなりすましといった不正利用を防ぐ仕組みとなっており、従来のSMS/メールを用いた本人認証のOTPに代わるものとして注目を集めています。
既に、米国においてはT-MobileやVerizon と連携した展開も進んでおりAI時代の認証基盤をどう再構築するかというテーマを真正面から提示する存在と言えるでしょう。
Charm Security
今回のファイナリストの中で異色とも言えるのがこのCharm Securityです。
人間を狙う金融詐欺にフォーカスしたソリューションとなり、は主に銀行などのオぺレーターをアシストするというものです。具体的なユースケースとしては、顧客との通話内容やシステム操作から「この顧客は詐欺に遭っている可能性が高い」といった兆候をAIが示し、オペレーターに対してリアルタイムに介入(助言・ガイダンスを提示)し、顧客の詐欺被害(※金銭的な被害)を未遂に終わらせるというものです。
日本では依然として振り込め詐欺が社会問題化していますが、米国でも同様に投資詐欺やロマンス詐欺といった、最終的に自分の意志で正規操作として送金してしまう行為(App Fraud)が社会問題となっており、このソリューションはピッチイベントで非常に大きなインパクトを与えるものと予想します。
Humanix
Charm Security と同様、「人」を狙った攻撃に着目しているのが、Humanixです。ただし Humanix がフォーカスするのは金融詐欺ではなく、組織の従業員やヘルプデスクを狙ったソーシャルエンジニアリング攻撃となります。
心理学や行動科学をベースとしたAIが、電話やチャット、サポートチケットといった一見正当なコミュニケーションに紛れる「なりすまし」や「手続き回避の誘導」といった兆候をリアルタイムに解析・検知し警告や提言を行うことで人間による判断をアシストします。
具体的なユースケースとしては、経営層やIT担当者を装ったパスワードリセット要求や、緊急事態を理由にポリシー逸脱を迫る要求などが挙げられるでしょう。
近年、ランサムウェアや大規模侵害の侵入口としてヘルプデスクが悪用されるケースも増えており、「人を狙う攻撃」が大きな課題となっています。Humanix はこれまでありそうでなかった人を防御対象とする点で、大きな注目を集める存在と言えるでしょう。
まとめ
いかがでしょうか?
今年のRSACでもAIをはじめとした最先端のセキュリティセッションが数多く講演されるものと推測されます。現地でその熱気を体感しながら参加するのが最も魅力的ではありますが、多くの方にとって米国まで足を運ぶのは容易ではないかと思います。そのような中、例年通りであればRSACのセッションは一部が無料で公開されますので、この機会にぜひ腰を据えてご視聴されてみてはいかがでしょうか。
もちろん、Innovation Sandboxに登場する各社のピッチも見逃せない注目ポイントです。

当サイトに掲載されている情報(記事、資料、動画、テンプレート等)については、その正確性および妥当性の確保に努めておりますが、ご利用に際しては、利用者ご自身の責任においてご判断ください。なお、個別の事情に応じては、専門家へのご相談を含め、適切な対応をご検討いただくことを推奨いたします。






























