事例

伊藤忠テクノソリューションズ(自社)

更新

再エネ主力電源化を目指すアグリゲーションビジネスに取り組むCTC
各種機能・サービスを提供するデジタル基盤にAWSクラウドを採用

  • CUVIC on AWS

伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は、伊藤忠商事と共同で再生可能エネルギーの主力電源化に向けたアグリゲーションビジネスの実証を行うために、発電量予測やインバランス実績管理などの機能を担う「ReRAS(Renewable Resource Aggregation System)」をアマゾン ウェブ サービス(AWS)のクラウド上に構築した。ビジネスの変化や拡張に伴って柔軟なサービス改善が可能となるデジタル基盤が完成し、本番環境でも継続運用されている。

課題と効果

課題
  • ビジネスの変化・拡張に伴い機動的に改良できるDevOps対応基盤が必要だった。
  • 実証から始めるために、機能・コスト面でスモールスタートできる必要があった。

CTC社内に技術力と知見が蓄積されたAWSを採用

効果
  • 実証をスモールスタートで開始し徐々に拡張、運用コストの予測も可能に。
  • AWSのカーボンフットプリント指標により、運用によるCO2排出量把握を実現。

導入事例インタビューデータ

会社名
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
所在地
〒105-6950 東京都港区虎ノ門4-1-1
設立
1972年
従業員数
4,718名(単体・2022年4月現在)
事業内容
ネットワークシステムの販売・保守、ソフトウェア受託開発、情報処理サービス、科学・工学系情報サービスほか
URL
https://www.ctc-g.co.jp/
  • 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 エンタープライズ事業グループ 科学システム本部 科学システム開発部 GXシステム課 課長 日高 政志

    伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

    エンタープライズ事業グループ 科学システム本部
    科学システム開発部 GXシステム課
    課長

    日高 政志

  • 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 エンタープライズ事業グループ 科学システム本部 エネルギービジネス推進部 GXビジネス推進課 主任 佐治 憲介

    伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

    エンタープライズ事業グループ 科学システム本部
    エネルギービジネス推進部 GXビジネス推進課
    主任

    佐治 憲介

課題

再生可能エネルギーの主力電源化に向け アグリゲーションビジネスの実証を開始

伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は過去20年以上にわたってエネルギー分野向けのビジネスを展開しており、2011年にはデータ分析によってエネルギー利用を統合的に管理するクラウド型IoTプラットフォーム「E-PLSM」の提供を開始するなど、エネルギー分野のデジタル化を推進してきた。現在も再生可能エネルギー事業開発の技術コンサルティングサービスの提供、風力・太陽光発電の出力予測に関する技術開発などを中心に幅広いビジネスを手掛けている。

そうしたなかCTCは2021年、伊藤忠商事と共同で再生可能エネルギーの主力電源化に向けたアグリゲーションビジネスの実証を開始した。これは太陽光発電や風力発電といった変動性の高い再生可能エネルギーを束ねて需要家や小売電気事業者へ安定的に電力を供給しようという取り組みだ。

「2050年のカーボンニュートラル、脱炭素社会を実現するには、再生可能エネルギーの主力電源化が大きな役割を担います。そのためにも再生可能エネルギーを電力市場へ統合していく必要があり、再生可能エネルギーの発電事業者は電力の需給状況や市場価格を意識した適切な需給管理を行うことが求められています。今回のアグリゲーションビジネスの実証は、そうした再生可能エネルギーの主力電源化を目指し、CTCがこれまでに培ってきた発電量予測・最適化などのデジタル技術の知見と、伊藤忠商事の電力需給管理に関する知見を融合させたものです。具体的には、①太陽光および風力の発電量予測技術の検証、②発電及び需要の計画と実績の差異であるインバランス回避手法の検討、③再生可能エネルギー需給運用最適化の手法の検討、④事業サービス化に向けた検討などを実施しました」(佐治)

概要図

経緯

DevOpsにより柔軟な改良が可能な パブリッククラウド利用を前提に

この実証を進めるにあたっては、再生可能エネルギー発電量の予測や日々のインバランス実績の管理などを行うデジタル基盤が欠かせない。そうしたデジタル基盤として、CTCが構築したのが「ReRAS(Renewable Resource Aggregation System)」である。

ReRASは、電力需給調整や取引の情報を蓄積・分析・利活用するというPDCAサイクルを回しながらリスクマネージメントを行うデジタル基盤であり、アグリゲーションビジネスの実証では中核的な役割を果たすものだ。

「ReRASは、CTCが継続的に開発してきた発電量予測アルゴリズムを今回のアグリゲーションビジネス向けに最適化したデジタル基盤です。ただし、最適化と言っても現時点においての最適化であるため、将来的なビジネスの変化・拡張に伴って機動的にアルゴリズムを改良・サービス化できるデジタル基盤を構築することが求められました」(佐治)

このようにシステムを運用しながら柔軟に改良を加え、迅速にサービス化していくにはDevOpsの手法を取り入れたアジャイル開発が打ってつけだ。そこでCTCでは、DevOps環境の稼働インフラとして最適なクラウド上にReRASを構築することを前提に、パブリッククラウドを選定することにしたという。

選定

スモールスタートで迅速な構築を目指し 社内に技術力と知見が蓄積されたAWSを採用

CTCでは従来からさまざまなプロジェクトのデジタル基盤としてパブリッククラウドを利用している。今回のアグリゲーションビジネスの実証でも、これまでに導入実績のある複数のパブリッククラウドを候補に挙げて比較検討を行ったという。その結果、採用することに決めたのがアマゾン ウェブ サービス(AWS)だった。

「近年、科学システム本部ではAWSクラウドを利用することが多く、AWSクラウドを扱えるエンジニアも増えています。また、CTC社内にはAWSクラウドの導入実績・経験が豊富にあって技術力や知見が蓄積されており、サポートを受けやすい体制が整っています。また、今回は実証段階からの利用ということで、コストを抑えながらスモールスタートで価値あるデジタル基盤を迅速に構築する必要もあったので、それらを総合的に判断してAWSを採用することにしました」(日高)

ReRASの稼働インフラとしてAWSの採用が決定したのは、2021年5月のこと。6月から約3カ月をかけてReRASを設計・開発し、まずは10月の実証開始に合わせてステージング環境をリリースした。

効果

柔軟な拡張とコスト予測を実現 運用によるCO2排出量把握の効果も

ReRASは大きく分けてアプリケーション基盤、データ基盤、管理基盤、実証基盤の4つの領域で構成されており、サーバーレスコンピューティングサービス「AWS Lambda」、クラウドストレージ「Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)」、クラウドリレーショナルデータベース管理システム「Amazon Aurora」などのサービスを使って構築されている。ただし、現在の構成に落ち着くまでには苦労を重ねたという。

「AWSにはさまざまなサービスが存在するため、私たちが実現したいデジタル基盤を構築するにはどのサービスを採用することがベストプラクティスなのかを悩みながら開発を進めました。今後はサービスの改善によって仕様の変更も予想されるので、そこに追いついていくためにどうすればよいのか、いまも悩んでいます」(日高)

ReRASの稼働インフラにAWSクラウドを採用したことにより得られた効果もある。一つは想定通りに実証をスモールスタートで開始し、徐々に拡張していけたことだ。

「今回の実証には再生エネルギー発電事業者が参加しており、その数は実証を進めながら徐々に増えています。そうした規模の拡大に対応できるかどうかも非常に重要なポイントでしたが、インフラのキャパシティを柔軟に変更できるAWSクラウドを採用したことにより、デジタル基盤を効果的に拡張することができました」(佐治)

また、コスト面でも効果を感じている。

「当初は運用コストがどの程度かかるのかを予測するのが難しいという不安を抱えていました。しかし、CTCが提供するコスト可視化・分析用セルフマネージメントツール『Hyper Billing』をうまく活用できたことにより、ステージング環境を運用した1年半程度の実証期間のなかでコスト予測の知見をためることができました」(日高)

もう一つ、ReRASの運用による温室効果ガスの排出量を把握できるところも、AWSクラウドの採用により得られた大きな効果だという。

「CTCは2050年までに自社事業に伴うCO2排出量ゼロを目指す環境目標『2050 CTC環境宣言』を策定し、持続可能な未来の実現に向けた取り組みを進めていますが、ReRASの運用によるCO2排出量が計測できなければ元も子もありません。その点、AWSクラウドからはカーボンフットプリントの指標が出されているので、ReRASの運用によるCO2排出量をしっかりと把握することができます。これは、今後のアグリゲーションビジネスにとって大きな効果だと感じています」(佐治)

今後の展望

実証を受け本番環境も稼働 今後は追加機能の開発を予定

CTCでは今回のアグリゲーションビジネスの実証を受け、ReRASのステージング環境における問題点を解消した実ビジネス対応を図るために、本番環境となるデジタル基盤をもう一つ立ち上げた。こちらは2022年4月から設計・開発に取り組み、10月にリリース。現在はステージング環境と本番環境の両方が並立しているが、2023年度中に本番環境への統合、および追加機能の開発を予定しているという。

「今後はJEPX(日本卸電力取引所)の実績データや広域需給状況に関する各種公開データなどを取得する機能、インバランス低減(収益拡大)に向けた最適化機能などの実装を計画しています。また、JEPXやOCCTO(電力広域的運営推進機関)用のAPIをアグリゲーター(電力需給バランスを制御する中間事業者)向けに提供するなど、インターフェイスの改良にも取り組む予定です」(佐治)

このようにCTCでは、ReRASを中核に据えたアグリゲーションビジネスを積極的に展開していく方針だ。

(写真左から)日高 政志、佐治 憲介

(写真左から)日高 政志、佐治 憲介

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