iモードという革新的な携帯電話サービスを生みだし、モバイルマルチメディアの世界を進化・発展させ、新しいコミュニケーション文化を創り続けている(株)NTTドコモ。ケータイでは世界一のアクセス数を誇るiモードだが、メールの利用だけで、Webを使わないライトユーザーもまだ多いという。そこで、iモードのさらなる普及を図るために、マクロメディア社のFlashCastを世界で初めてケータイサービスに導入したプッシュ配信型の新サービス、iチャネルを開発した。
課題と効果
- 課題
-
- ライトユーザーにもっとiモードを利用してもらいたい
- 並行開発されるFlashCastとのリンクをうまく行いたい
- たび重なる機能追加に素早く対応したい
携帯電話にFlashCastを採用した新しいiチャネルシステムを構築
- 効果
-
- iチャネル契約者数が順調に増加
- グラフィカルかつスピーディーで、使いやすい操作性を実現
- 能動的な情報配信サービスでより多くのユーザ獲得へ
導入事例インタビューデータ
- 会社名
- 株式会社NTTドコモ
- 所在地
- 東京都千代田区永田町
- 資本金
- 9,496億7,950万円(2005年3月31日現在)
- 代表取締役社長
- 中村 維夫
- 従業員
- 5,856名(2005年3月31日現在)
- URL
- http://www.nttdocomo.co.jp/
-
株式会社NTTドコモ
プロダクト&サービス本部プラットフォーム部 部長
青山明彦 氏
-
株式会社NTTドコモ
プロダクト&サービス本部 プラットフォーム部
ビジュアルサービス開発担当部長平手徹 氏
導入背景
iモードユーザーに、もっと利用していただくために
ケータイサービスでは世界一のアクセス数を誇るiモードだが、まだ、月に数回程度しかWebにアクセスしないユーザーも多いという。こうしたライトユーザーに、いかに利用してもらうか、それが、(株)NTTドコモ(以下、ドコモ)の課題となっていた。しかし、日頃使っていない人にサービスを利用してもらうためには、最初に携帯端末上での設定が必要であったり、見たいホームページまでなかなかたどり着けなかったりといった点がネックとなり、使い慣れるまでには時間がかかる。そこで考えられたのが、プッシュ配信型の新しいサービス、iチャネルである。
「ケータイの待ち受け画面にテロップが流れ、その情報に興味をもったとき、ボタンを押すだけで、より詳細な情報が見られる。ユーザーが使いやすいインタフェースを提供することで、iモードサービス・Webアクセスへの誘導を図ろうと考えたのです」と、プラットフォーム部長の青山 明彦 氏は、iチャネル開発の背景を語る。
同時期、マクロメディア社もプッシュ配信型サービス用のFlashCastサーバの開発を進めていた。FlashCastとは、携帯電話に対してFlashコンテンツをプッシュ型で配信できる次世代型データサービス技術。Flashテクノロジーをベースとしているため、コンテンツを容易に作成でき、見やすいインタフェースと操作しやすいインタラクティブ性の両方を兼ね備えたコンテンツをすぐに配信することが可能となる。
そこで、ケータイに初めてFlash技術を適用するなど、かねてよりマクロメディア社とつながりの深かったドコモは、iチャネル実現に向けて、FlashCast導入を決定した。「マクロメディア社にとっても、自分たちのFlashCastという技術がケータイの世界でどう使われるか分からなかったわけですから、私たちの申し出はまさに渡りに船。ドコモの構想とマクロメディア社の構想が合致して、iチャネルという新しいサービスが誕生したのです」(青山氏)。
こうして、iチャネルの開発がスタートした。
導入経緯
新しいサービスの実現に向けて、いくつもの新機能を開発
プロジェクトの期限は、iチャネルサービス機能を実装した新しい携帯端末発売のタイミングに合わせて、2005年9月。その日に向けて、開発がスタートした。本プロジェクトでは、ドコモがiチャネルを開発すると同時に、マクロメディア社もFlashCastを開発する。そのため、同時並行で進められる二つの開発がうまくリンクしなければスムーズに進行しないという課題を抱えていた。
2005年1月、マクロメディア社からFlashCastのβ版が提供されたが、マクロメディア社では機能を優先して開発を進めていたため、パフォーマンスがドコモの要求に達していなかった。しかし、ドコモとしては、改善されるまで待ってはいられない。そのため、パフォーマンスを補うための大幅な見直し開発を実施。マクロメディア社と協議し、互いに修正を行いながらプロジェクトは進んでいった。
新しいサービスなだけに、開発が始まった後、ユーザーニーズを考えて新たな機能が追加されることもあった。さらに、マーケティング面からは、お客様にiチャネルの良さを実感していただくため、一週間、無料で試用できる「おためしサービス」の仕組みを作ってくれというリクエストなども入る。
「結局、3本の大きな開発が同時に動いているような状況でした。人的リソースを後からどんどん追加して、ギリギリまでかかりましたが、なんとか満足いくサービスが完成しました」と、ビジュアルサービス開発担当部長の平手 徹 氏は開発期間中の大変さを振り返る。
システム概要
iチャネルが始動し、順調に契約者を獲得
2005年9月9日、新ケータイ701iシリーズの発売とともに、iチャネルのサービスが開始した。iチャネルは、サーバで画像ファイルをFlash変換・送信し、携帯端末のFlashプレイヤーでFlashを再生する仕組み。ケータイで簡単に最新ニュースや情報が見られる新しいサービスだ。
ケータイの待ち受け画面に、最新情報がテロップで流れる。興味のあるテロップを見たとき、専用ボタンであるiチャネルボタンを押すと、チャネルコンテンツ一覧画面が表示され、そこで見たいチャネルを選択すれば、より詳細なコンテンツが表示されるようになっている。テロップもチャネルコンテンツも定期的に更新されるので、いつでも最新情報がユーザーの手元に届けられる。
チャネルコンテンツには、ドコモが提供する「お天気」「ニュース」「スポーツ・芸能」「占い」「おすすめサイト」の、あらかじめ利用できる5種類のチャネルと、コンテンツ・プロバイダーが提供するチャネルがあり、ユーザーが自分で好みのチャネルを設定することも可能だ。
契約者数も続々と増加し、iチャネルサービスは順調なスタートを切った。
今後の取り組み
サービスの充実をはかり、より多くのユーザー獲得を目指して
iチャネルは、サービス開始直後とあって、今はまだドコモが提供する5種類のチャネルと限られたおこのみチャネルにとどまっている。今後、多くのユーザーに楽しんでもらうためにも、「おこのみチャネルに提供できるコンテンツ・プロバイダーの開拓が、重要な課題になるでしょう」(青山氏)。
ドコモでは、コンテンツの充実及びユーザーインタフェースの改善を行っていくことで、サービスの拡充を進めていく予定だ。プッシュ配信型サービスにより、ライトユーザーの掘り起こしを狙ったiチャネルは、今後、能動的な情報配信サービスを積極的に展開する足がかりになることを期待されている。
用語解説
iチャネル
ニュース、天気、芸能・スポーツ、占い等の最新情報を特別な操作をすることなくケータイ画面に表示させるサービス。
- ※ 「iモード」「iチャネル」は、株式会社NTTドコモの商標または登録商標です。
FlashCast
マクロメディア社が開発した、携帯電話をクライアントとしてFlashコンテンツをプッシュ型で配信できる次世代型データサービス技術。
- ※ 「Flash」「FlashCast」はMacromedia, Inc.の米国およびその他の国における商標または登録商標です。