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キシダ化学株式会社 様

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キシダ化学株式会社  ロゴイメージ

法規制化合物チェックシステム「RegSys」を運用するキシダ化学
コスト最適化を目的に、CTCが提供するAWSクラウド環境へ移行

  • CUVIC on AWS

キシダ化学は、約10年にわたって利用を続ける伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の法規制化合物チェックシステム「RegSys」の稼働基盤を見直し、CTCが提供するアマゾン ウェブ サービス(AWS)のクラウドへ移行した。サーバインスタンスの稼働時間をビジネスタイムに限定して設定したり、内部ネットワークからAWSクラウドへ接続する「AWS Direct Connect」を統合したりといった変更を行った結果、AWSクラウドの運用コストがおよそ50%も削減できたという。

課題と効果

課題
  • 自社開発の法規制チェックシステムでは、新たな法規制に対応するメンテナンスが追いつかない。
  • AWSクラウドへ移行したものの、2つの環境が併存しコスト面で無駄が発生していた。

AWSアカウントをCTCが提供する「CUVIC on AWS」へ統合

効果
  • RegSysの導入により、法規制チェックの準備にかかる手間や判定結果の解析に要する時間を大幅に削減。
  • AWSクラウド環境を統合し、運用管理にかかるコストをおよそ50%も削減。

導入事例インタビューデータ

会社名
キシダ化学株式会社
所在地
〒540-0029 大阪市中央区本町橋3-1
設立
1941年(創業1924年)
従業員数
286名(2023年1月)
事業内容
研究用試薬・化成品、食品添加物、医薬品原料、電池材料などの製造・販売・輸出入ほか
URL
http://www.kishida.co.jp/新しいウィンドウで開く
  • キシダ化学株式会社 執行役員 化学品安全管理担当 化学品安全管理統括部 部長 東京支店長 森田 芳美氏

    キシダ化学株式会社

    執行役員 化学品安全管理担当
    化学品安全管理統括部 部長
    東京支店長

    森田 芳美氏

  • キシダ化学株式会社 化学品安全管理統括部 法令管理グループ グループリーダー 島村 晴美氏

    キシダ化学株式会社

    化学品安全管理統括部
    法令管理グループ
    グループリーダー

    島村 晴美氏

  • キシダ化学株式会社 デジタルイノベーション部 部長 三善 克彦氏

    キシダ化学株式会社

    デジタルイノベーション部
    部長

    三善 克彦氏

課題

RegSysを採用したキシダ化学 クラウド移行に伴い新たな課題が発生

キシダ化学は、1924年に創業した歴史ある試薬メーカー。製造メーカーと商社の2つの機能を有しており、近年は主力製品の試薬・化成品や電池材料のほかにライフサイエンスや創薬支援の領域へと事業を拡大させ、その製品は化学・生物・材料の研究・試験から病院・研究機関の臨床検査・環境分析など広範囲な分野で利用されている。

そんな製品の製造・販売を手掛けるキシダ化学にとって、多種多様な規制対象物質を適正管理することはコンプライアンスの観点から最重要課題の1つだ。

「当社では長年にわたり、自社開発の法規制チェックシステムを運用していました。しかし、年々化学物質の規制が厳しくなってくる中、2014年に薬機法-指定薬物の規制が厳格化され、年数回、規制対象物が追加されていく状況において、自社開発の法規制チェックシステムの辞書メンテナンスが追いつかないという課題を抱えていました。この課題を解決するために、市販のソフトウェアパッケージとして提供されている法規制化合物チェックシステムを導入することにしました」(森田氏)

複数のソリューションを候補に挙げ、実際に試用して比較検討した結果、キシダ化学が選定したのが、CTCの「RegSys」だった。

「それぞれのソリューションに大きな機能差はありませんでしたが、RegSysには化学メーカーや製薬メーカーに数多く採用されている実績があります。この信頼感が決め手となり、RegSysを導入しました。RegSysは化学構造式による法規制化合物の判定が可能であり、辞書として組み込まれている法規の種類が豊富で法改正時の更新スピードも速く、導入後は法規制チェックの準備にかかる手間や判定結果の解析に要する時間が削減され、業務効率が向上するという効果が得られました」(島村氏)

当初は社内のオンプレミス環境で運用していたRegSysだったが、2016年にAWSクラウドへ移行した。その結果、新たな課題が生じたという。

「オンプレミス環境の運用管理が負担になっていたため、長年にわたって当社と取引実績があるSIベンダーに委託してRegSysをAWSクラウドへ移行しました。社内にクラウドに詳しい人材がいなかったこともあり、クラウドサービスの選定から移行まですべてお任せでしたが、その結果AWSクラウドの環境が2つ存在するという課題を抱えるようになりました」(三善氏)

経緯

2つのAWSクラウド環境が併存 現場がコスト面の無駄を指摘

実はキシダ化学では、化学研究領域に特化したデータ処理・解析・レポート作成のためのデータサイエンスプラットフォーム「BIOVIA Pipeline Pilot」をCTCから導入しており、その稼働基盤としてもAWSクラウドが採用されていた。

「2つのAWSクラウド環境が併存しているのは、コストを負担する私たち安全管理部門にとって無駄ではないかと考え、情報システム部門へ相談することにしました」(島村氏)

島村氏からの相談を受けた情報システム部門では、さっそく調査を実施する。

「調べてみたところ、社内ネットワークとそれぞれのAWSクラウド環境を接続するために別々の『AWS Direct Connect』を利用しているなど、明らかにコスト面で無駄が発生している状態でした」(三善氏)

選定

最適な形に構築された CTCのAWSクラウドへ移行を決断

この事態を重く見た情報システム部門では、どちらかのAWSクラウドへ寄せられないかと検討することにした。

「双方のAWSクラウド環境を比較してみると、CTCから提供されているPipeline PilotのAWSクラウド環境のほうが最適な形で構築されていることが分かりました。そもそもRegSysはCTCのソリューションですし、RegSysをAWSクラウドへ移行したSIベンダーはクラウド運用管理を得意としていたわけではないこともあり、RegSysのAWSクラウド環境を移行・統合するようにCTCへ依頼しました」(三善氏)

キシダ化学がAWSクラウド環境の統合を決めたのは2022年5月のこと。そこから仮想サーバサービス「Amazon Elastic Compute Cloud(EC2)」にインスタンスを立ててRegSysのアプリケーションとデータを移行すると同時に、Direct Connectも1つにまとめた。

構成図

効果

AWSクラウド環境をスムーズに移行 およそ50%ものコスト削減効果を得る

新しいAWSクラウド環境へRegSysの移行が完了し、稼働し始めたのは2022年10月のこと。そこから約半年が経過し、コスト面の課題が大きく解消されたという。

「新しいAWSクラウド環境のサーバインスタンスはCTCからの提案により、24時間稼働ではなく、8:00~19:00のビジネスタイムだけ稼働するように設定しました。Direct Connectを1つにまとめたことも相まって、AWSクラウドの運用管理にかかるコストはおよそ50%も削減されるという効果が得られました」(三善氏)

一方で安全管理部門をはじめ、RegSysを利用する各事業部門では、AWSクラウド環境が切り替わったことに気づかないほどスムーズに移行できたという。

「RegSysを初めて導入した時には、関連部署との業務フローの見直し、RegSysに取り込むデータ形式の調整、判定書の様式変更、関連部署へのレクチャーなどを実施する必要があり、移行に約3カ月程度もかかりました。しかし今回は、大きな変更点もなくそのまま使い続けられています。現在は輸出入・製造・研究開発・保管など多岐にわたる事業部門でRegSysを利用していますが、規制化合物の取り扱いが厳格化される中、各事業部で取り扱っている化学物質の規制状況が把握でき、それにより保管管理含めた取り扱い方が定まります。業務を通じて、化学物質の規制に関しては適切な状態であると実感しています」(島村氏)

RegSysの開発元であり、AWSクラウドの構築・運用を担当するCTCに対し、経営層の評価は高い。

「RegSysについては、判定に関して疑問が生じた際の問い合わせにも確実に対応していただけると共に、法改正時にはパブリックコメントの段階であっても辞書更新が行われるので、社内対応や必要な法令対応を計画的に実行できています。AWSクラウドについては、問題なく安定稼働が続いていることを高く評価しています」(森田氏)

今後の展望

RegSysの利用部門をさらに広げ AWSクラウドの積極的な活用を目指す

キシダ化学ではRegSysの利用部門をさらに増やしていく方針を掲げており、各部門で取り扱うすべての化学物質をRegSysで法規チェックできる体制を整えていく計画だという。CTCには規制化合物に迅速に対応した辞書を整備・拡大して欲しいという要望を挙げているが、同社に合わせてRegSysの辞書をカスタマイズすることも検討しているとのことだ。

AWSクラウドについては、これから社内で立ち上げるシステムの稼働基盤として、現在の環境を積極的に活用していくという。RegSysとAWSクラウドは、今後もキシダ化学が推進する化学物質のコンプライアンス活動を支え続けていくことだろう。

左から、森田 芳美氏、三善 克彦氏、島村 晴美氏

左から、森田 芳美氏、三善 克彦氏、島村 晴美氏

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